きみは、ぼくの東京だった
2017年12月31日
東京でのはじめての大晦日。
10ヶ月働いた初めての就職先での僕は、もう社内で干されてる程度には、終わってた。
給料日が来たら、前月からの払えなかったノルマを一気にライブハウスに振り込めばギリギリ家賃が払えるかどうか、毎月四苦八苦の暮らし。
コロナ禍の高円寺も大概騒々しいけれど、その5倍くらい人々が歩いて、絡まれて、失望して、お酒を飲んで。
毎日路上をして、毎日生きて、毎日恋をして、毎日夢見てた。
僕の家は、電気とガスと水道が全て止まって、廃屋みたいになっていたから、その時期は看護師をしているアマチュアキックボクサーくんの家にしばらく泊まっていた。
初めての年末年始のお休み。
実家なんて帰りたくなくて、それでも街は否応がなくみんな居なくなってしまって、夢のあと。
誰もいない高円寺で大晦日に歌った。
おやすみのMVを撮ってくれた人が、撮影しに来てくれて、「高円寺はいつか卒業しなきゃいけない街」そんなキャッチフレーズの夢見る若者が映るプロモーション映像を、夕方まで撮ってくれた。
19時くらいになって、さすがに寂しくなって。
そしたら高円寺で知り合った映画監督のかんた(まだ作品化されていない「男、帰郷する」の人)がお家で飲んでるから、来てくださいって言ってくれて、野方の家まで行った。
家には初めて会うかんたの同級生や、前述の居候していた家主や、何人かいて、楽しそうに飲んでいた。
テレビがついていて、おそらく初めて生で「笑ってはいけない」を見た。
なんか東京にきて初めて、こういう素直に楽しむ夜があったもんだから、少し緊張した。
僕が年上だから一番。少し余裕振りながら、お酒を飲んでいたけれど、内心ビクビクしてた。
何時ごろだろう、なんとなく浮かんだフレーズがあった。頭の中で浮かんだ言葉をそのままスマホのメモ帳に書いた。
「きみは、ぼくの東京だったし、
きみは、ぼくの大体だったよ」
その数日前に、女の子に盛大にフラれた直後だったし、少しセンチメンタルになってたのかもしれない。
すぐ部屋を出て、なぜかその人に電話したのも覚えてる。
その夜は、きっと朝まで続いて
ぱたりぱたりとみんなが眠りだして、僕は最後まで眠れなかった。
なんとなく、何かを掴んだ、そしてもう掴めないような、とても柔らかくて優しくて暖かくあってほしい(あるいは、あるべきだと思い込んで)気持ちを忘れないように、注意深く眠った。
2018年になる。
その数週間後に突然かんたが一週間、誰にも連絡をせずに現実逃避で失踪するという珍事件が起きて大騒ぎになったりした。
居候してた家には「部屋が汚い。マジで汚い。もう無理」と言われて追い出されたりした。
不思議と、そのタイミングで一度フラれたあの子が、彼女となって、突然居をその子の家にしたため、難を逃れたりした。
そして、そのタイミングで会社も辞めて、名実ともにフリーターとなっていく。
明確には覚えてないけど、あの忘れないようにどうにか抱いていった気持ちは、少しずつそんな日々のそれぞれが重なって、曲として完成した。
それから永く、永くこの曲を歌った。
初めて知多良監督に出会って、あのMVができた時に身震いを感じた。
たくさんのスタッフの方々が参加してくれて、それはMVの撮影というより、映画撮影のそれだった。
作り上げていくことはこういうことで、チームで一つのものを目指していく本当の生の気持ちはこういうことなんだ。
現場から経験させてもらえたのがとても新鮮だった。
知多さんは、お酒が好きで調子がいいところもありながら、とても義理深くて、いまでも路上やライブにも来てくれる、とても人間らしくて素朴で、映画監督なの!?と思うほどに人間味が溢れて優しい人。
サトウヒロキくんは、なぜか僕が参加してた若手俳優の人たちの飲み会のところで出会って、それ以前にも、僕が上京する直前にも札幌のISSOというバーで会っていて。とてもリスペクトを持ってくれて、本当にクールでそして熱くてとても漢気がある人。
小畑みなみさんは、初めて会った時に「なんて綺麗な人なの」と度肝抜かれるような美人なのに、演技は物凄い迫力でいろんな顔を見せてくれて、でも話したらとても人懐こくてドキドキしちゃうくらい、素直で素敵な方。
あの時にできた曲が、僕の気持ちを飛び越えて
それぞれのいろんな思い出や記憶や感触を経て、未だに愛されてるような映像作品になってくれたこと。
そして、それが今度、映画になるということ。
不思議な気持ちと、大いなる感謝と、僕の小さな守ってきた誇りが、みんなの熱情と共に、とても楽しみな未来を提示してくれるかもしれかいこと、本当に楽しみにしています。
「きみは、ぼくの東京だった」MVからできた物語、映画「ゴールド」
クラウドファンディングが始まりました。
12月迄みんなで駆け抜けていきます。
どうぞみなさま、ご協力よろしくお願いします。