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泣きたいときは、ビールを飲みながら「NHKのど自慢」を観るのだ。

私は事あるごとに「日曜の昼からビール飲んで『NHKのど自慢』観ると、めちゃ泣けるよ!」と熱弁している。

いきなり飲酒&素人参加型の公共放送を視聴しろと言われた相手は「そうなんや、観てみよう」とコメントはしてはくれるものの、「観たよ!めちゃ良かった(涙)」などという返事をくれたことは、ない。

みんなおそらく、NHKのど自慢に対して

・ご当地紹介の素人参加歌番組(間違ってはいない)
・公共放送のご長寿番組(間違ってはいない)
・演歌や民謡ばかり歌われている(そんなことは無い)
・そもそも日曜の昼、家にいない(これが一番かも)

などのイメージや理由もあり、あえてチャンネルを合わせていなかったのだろう。

確かに説明が足りなかった……と反省(というほどでもない)し、ここからは、「ビール飲みながら『NHKのど自慢』を観るとなぜ泣けるのか」について紹介しようと思う。※もちろんビール以外も可

「NHKのど自慢」について

1946(昭和21)年にスタートし、毎週日曜12時15分から生放送される素人参加型の歌番組「NHKのど自慢(以下、のど自慢)」。残念ながら2020年5月現在は、COVIT-19の影響で放送休止中である。

のど自慢の出場資格を得るには、

1. 番組HPをチェック
2. 希望地域の放送日2か月ほど前に、往復はがき(一部はweb)でエントリー。約250組が予選会へ参加可能に
3. 前日の予選会へ出場
4. 歌唱力+出演者のエピソードを加味して、本大会の出場者20組に選ばれる

ことが必要なようだ。

「のど自慢」は歌唱力を自慢する場ではない

のど自慢は “のど” を自慢する番組であって、 “うた” だけを自慢する場ではない。あえて言うなら “うたを披露する” 番組である。

Wikipediaによると選考基準は「エピソード重視」とあることから、歌が上手いだけでは出場できないのが、歌唱力で点数を競う他の “歌うま” 番組と異なるポイントだ。

生放送の本番では、司会の小田切アナウンサーが出演者の「お世話になった方へ歌でお礼がしたい、メッセージを伝えたい!」という想いを丁寧に拾って、歌唱直後にインタビュー。(おそらく練りに練って何度も練習したであろう)メッセージをしっかり言えるよう、優しくフォローしてくれる。

自分の夢、家族への感謝、頑張る人へのエールなど、歌い終わった後に一人ひとりが語るパーソナルなエピソードたち

ここに私は(アルコールの効果もあって)感情を揺さぶられ、「ああ、みんな一生懸命に日常を生きているんだよね、尊いよ……」と、歌詞の意味も噛み締めつつ、胸を熱くしているのだろう。

「のど自慢」はドキュメンタリー番組である

現在のど自慢の司会を務める小田切アナウンサーのインタビューには、こう記されている。

みなさんそれぞれにテレビで歌う理由があって、その思いを伝えることができる。そういった番組でもあると思っています。(中略)
さらにもう1つ言うと、その土地の人々がどんな暮らしをしているのか、どんな思いで生きているのかを、“20組分のショートドキュメンタリー”として見られる番組でもあると思っています。

そうだ、私は45分の間に20本のショートドキュメンタリーを見ていたのだ。

歌手になりたい制服姿の女子高生、教え子へ熱いメッセージを贈る新米教師、ちょっとくたびれた(でも清潔に洗濯されている)仕事着で熱唱するお父さん、入院中のおばあちゃんを励ましたい一心で歌うお孫さん。

「テレビで歌いたい理由がある」さまざまな方が登場し、日常のスキマで練習した歌や踊りを披露、最後は電波を通して相手へメッセージを届ける。

しかも、NHK全国放送という華やかな場で生演奏をバックに歌うなんて、私たち一市民にとってめちゃくちゃ晴れの舞台。ドキュメンタリー番組で言えば中島みゆきやスガシカオが流れてもおかしくないシーンを20本観ていたら、そりゃ涙腺も刺激される(アルコールの効果もあって)訳だ。

明るく、楽しく、元気よく!

このnoteを書いている2020年5月時点では、COVIT-19の影響で公開収録が出来ず放送も休止中。応援席はご高齢の方が多いだろうし、県を越えた移動や飛沫という観点でも開催は難しいのだろう。

番組公式サイトには「明るく 楽しく 元気よく!」という、番組にぴったりなコピーが添えられている。必ずしも歌が上手くなくても良い番組のスタンスが、ここにもきっちり表されていた。

「テレビで歌いたい理由がある」方が明るく楽しく元気よく歌えて、このnoteを読んでくださった方が、日曜の昼にビールを飲みながらのど自慢が観られる(そしてちょっと泣く)世界が早く訪れるよう、私は手を洗って過ごそうと思う。


【おまけ】テンション上げたい方は「#三井ビルのど自慢大会」を!

NHKのど自慢の放送が無い今、新宿三井ビルディングで毎年夏に開催される「新宿三井ビル会社対抗のど自慢大会」の動画を見ている。一切泣けないですが、別の意味でめっちゃ感動。

ステージに立っているのは、新宿三井ビルに入っている各テナントで働く方たち。応援するのはその同僚や、通りすがりのビジネスパーソンだ。

ものすごい予選を勝ち残って舞台に立った一般の方の歌唱力と、プロ並みの表現力が面白い。「普段はスーツを着て働いているんだろうな……」など妄想し、そのギャップにニヤニヤする。

大会が始まると、毎年Twitterのタイムラインは「#三井ビルのど自慢」で大盛り上がり。全国ののど自慢ファンが、この奇祭を楽しみにしているのだろう。

紙吹雪の代わりに舞い上がるのは、各テナント企業から出たシュレッダーとのこと。ペーパーレス社会が進み、近い将来この積雪量を確保できなくなる時が来るかもしれないが、いつか現地で応援したい。

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