2019年度グッドデザイン賞審査報告会レポート[Unit 7 - 情報機器]
グッドデザイン賞では、毎年10月ころに、その年の審査について、各審査ユニットごとに担当審査委員からお話する「2019年度グッドデザイン賞 審査報告会」を開催しています。本記事では、ユニット7 - 情報機器の審査報告会をレポートします。
グッドデザイン賞ではカテゴリーごとに、今年は全部で18の審査ユニットに分かれて審査を行いました。審査報告会では、ユニットごとに担当の審査委員が出席し、その審査ユニットにおける受賞デザインの背景やストーリーを読み解きながら、各ユニットの「評価のポイント」についてお話しいただきます。
2019年度グッドデザイン賞審査報告会[Unit7 - 情報機器]
日 時: 2019年11月2日(土) 16:00〜17:00
ゲスト: 片岡 哲委員(ユニット7リーダー)
はじめに:その製品で、どのような美しい出来事を起こそうとしているのか?
ユニット7では、審査のテーマである「美しさ」について、造形的な美しさは備えているということを前提に、ベスト100以上の審査においては、どのような美しい出来事を起こそうとしているのかということを基準にしていました。結果的に、122件が本ユニットから受賞しています。
受賞対象には、ものが引き起こす出来事、体験のデザインが目立ってきています。
超短焦点プロジェクター [フジフイルム プロジェクター Z5000](グッドデザイン金賞)
例えば、このプロジェクタはこれまでのプロジェクターと違って首が回ることで、設置してある空間のあらゆる方向にある、ほぼ全ての壁に向かって映像を投影できます。このことによって、今までできなかった新しいプレゼンテーションを可能とすることが高く評価されました。モノとしても良くできていますが、体験ができることが強調されていて、そこはベスト100に選出された他のプロダクト全体に共通している部分だったと思います。
OLED TV [LG SIGNATURE OLED TV R9] (グッドデザイン金賞)
これは、何十年も前から夢物語のように語られていた製品が初めて現実化されたもの。OLEDディスプレイの開発が始まり20年近く経ちますが、“巻取りテレビ”というものの可能性は当初より語られてきていました。そして遂にそれを、しかも大型ディスプレイでやってのけた製品です。それは驚くほどの完成度の高さで、金賞受賞につながりました。
レンズ交換式ミラーレスカメラ [SIGMA fp](グッドデザイン金賞)
また今年度の大きな特徴として、デジタルカメラ業界において、ミラーレスフルサイズ化の大きな節目の年となりました。
こちらのカメラは、みんなが一度は商品化したいと思っていた商品です。カメラとして撮影できる最小単位の塊だけにし、あとは使いたい人が使いたいものを付け足して使うという新しいコンセプトです。
マウントアダプター [マウントアダプター EF-EOS R シリーズ](グッドデザイン・ベスト100)
こちらは、今までの一眼レフのレンズをミラーレスのボディで使えるようにするアダプターです。それだけにとどまらず新しい機能も追加されていて、その機能の為に敢えてミラーレスのボディが欲しくなるようなアイデアが高く評価され、ベスト100に選ばれました。
デジタルシネマカメラ用単焦点レンズ [Sumire Prime](グッドデザイン・ベスト100)
この単焦点レンズは、放っておけばなくなってしまうオールドレンズのような表現を新しい技術で作り出した点が非常に印象的な商品でした。こちらもベスト100に選ばれています。
まとめ:世の中が良くなる・変わるという社会性があると伝わりやすい
ベスト100には選ばれなかったが、いずれもグッドデザイン賞を受賞したミラーレスカメラ [EOS R]、デジタルカメラ [Panasonic デジタルカメラ Lumix Sシリーズ]、ミラーレスカメラシステム [Z マウントシステム]など、どれも完成度が高いプロダクトでした。
ベスト100を決める審査は、その分野の専門家だけで審査するわけではないので、世の中が良くなる・変わるという社会性のある部分を持っていた方が伝わりやすい側面はあると感じました。
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