The 2024 Year in Beerからみるクラフトビールの"今"
アメリカのBrewers Associationから毎年発表される「クラフトビールの年間まとめ」が昨年末に発表されました。良くない景気、終わりの見えない物価高が続く中で2024はどんな年だったんでしょうか?
The 2024 Year in Beer / Brewers Association
https://www.brewersassociation.org/association-news/the-2024-year-in-beer/
📉需要は伸び悩む
2024年は、全体の生産量が減少に転じた2023年から推定予測で更に-2%の減少。これは小売や卸業者がクラフトビール以外のアルコール飲料を拡大したことや、よりラインナップを縮小したことに影響しているよう。
📉閉業が開業を上回る
2024年時点で操業しているアメリカのクラフトビール醸造所は9,736箇所。同年に開業した醸造所は335箇所で、閉業は399箇所。閉業が開業を上回った。
📈経済効果
とはいえアメリカのクラフトビール業界は依然として771億ドルという経済効果を生み、46万人の雇用があるなどアルコール飲料市場でも重要な役割を果たしている。
📈ノンアルコール市場の拡大
お酒を飲まないという選択肢も広がっており、 2024年1~10月までの売上は前年比で+30%となった。
🌍️展望
物価高のみならず、世界的な状況に影響される関税とそれに関わるコストの上昇、アルコール飲料との向き合い方を見直すといった世論もあり、2025年も厳しい年になりそう。
「ビールメーカーは、高コスト環境と成長鈍化の岐路に立たされ、重大な課題に直面しています。2025年に成長するためには、ビールメーカーは自分たちが得意とすること、すなわち適応しなければならない。また、自分たちのストーリーを伝え、競合に対してブランドを差別化する方法を見つけるためのハードワークを続ける必要があります」。
この言葉の通り、好きなようにクラフトビールを作っていれば上手くいく!という時代は既に終りを迎えています。
なんだか悲しくなる報告ばかりですが、悲観してばかりはいられないのでここからは個人的な考察です。
個人的に思うこと
🔚”来年には終わる”と言われ続けてきたクラフトビールブーム
アメリカでは2010年頃1,500箇所だった醸造所が今では9,700の500%増と、これまでが異常な状況だっただけで、"やっとノーマルな状況に落ち着いた"とも言えるんじゃないかと思います。
”来年には終わる"と言われ続けてきたクラフトビールブーム
10年以上前から言われ続けているこの言葉がついに現実味を帯びてきましたが、これはブームに便乗した人々の熱が冷めただけで、熱意と技術をもってものづくりに望む醸造所はそこまで気にする言葉ではないかと思います。熱くなったものは冷めやすいので。
とはいえ供給過多の状況で、世の中の流れに合わせた合理性も問われています。美味しいものを作れば売れる、というのはとうの昔。大きな市場で戦うには販売はもちろん、マーケティング、人材確保、コスト上昇など多くの課題と向き合わなければいけません。
また、これだけ選択肢が増えた中で、消費者としても”自分にとって何が必要で、何を飲むのか?”を今一度自分に問い直すタイミングなのかもしれません。
🇯🇵日本のクラフトビール市場は?
日本のクラフトビール醸造所も2023年末で800箇所程と爆発的な増加を見せており、これはクラフトビールブームの影響もあるが、ここ数年で開業した醸造所の多くはコロナ禍による補助金支援による影響が強いとも言えます。
醸造所が増えれば当然棚の奪い合いが発生するので、これまでのように小規模事業者で手を取り合ってビールを盛り上げていこう!という時代ではなくなってしまったような気がします。少しさみしいですね。
醸造所の爆発的な増加を危惧する声もチラホラ聞こえてきますが、個人的にはあまり危惧していません。例えばラーメン屋は日本中で毎日のようにオープンしているのに「ラーメン屋おおすぎ!」って言う人いないですよね。結局のところ生き残るところは残るし、そうでないところもある、美味しいものを作る以上に”時代に適応する能力”が求められている状況なのかと思います。
ただ淘汰の時代はすぐそこに来ていると思います。醸造所の廃業も増えるでしょう。景気の悪いウワサも多く流れるでしょう。
だからといってクラフトビールという文化が終わるわけではないのです。
オチが思いつかないのでここまで。
おわり