IPA醸造が変化した2つの理由
最近いろんなIPAを飲むんですが、本当に色んな種類・色・ABV・味・香りがあって今でも新たな気づきをたくさん貰えます。近年のビール文化を牽引し続け(今でもアメリカのクラフトビール市場の80%overはIPAが売れてる)、ひとつのスタイルとして分類するには収まりきらないほど多様になったIPAですが、種類だけでなく醸造の面で大きく変わった部分もあります。
1つめは「ホップの使用量が格段に増えた」こと。
15年前くらいに使われてたIPAのホップ量が今では倍以上になってます(2倍どころではない…)。そりゃ原価も上がるしブルワリーも増えて争奪戦が起こるわけですね。
2つめは「クリスタル(デキストリン)モルトの使用が明らかに減った」ことです。今回はこっちのほうを考えたいと思います。
そもそもクリスタルモルトってなんぞやという方はこちらをどうぞ
要はベースモルトを高温で焙煎/乾燥して糖を結晶化(クリスタライズ)したモルトで、甘さや色味・風味をつけられるモルトです。
West Coast IPA全盛期のレシピを見るとデキストリンモルトやC10~40くらいのモルトが約10~20%くらい使われてたこともザラなんですが、今のIPA醸造の傾向ではほぼ使われない(もしくは数%程度)まで減っています。
なんでこの変化が起こったのでしょうか?理由を2つ考えました。
余計な味がするから
飲み手の志向の変化か、クラフトビールが広まった(大衆化した)結果かはなんとも言えませんが、クリーンでクリスプ、色味の薄い〜ゴールデンに近いIPAが求められている世の中で、クリスタルモルトの甘さが余計な味と捉えられているのではないかと思います。
またIPAは製造から経年変化に伴いホップのキャラクターが低下していく中で、デキストリンモルトはじめクリスタルモルトのキャラクターが際立ち、これが酸化のフレーバーに近しいと感じる人も多く、ホップを輝かせたいIPAというスタイルでは雑味として扱われ、結果としてクリスタルモルトの使用量が減ったのではないでしょうか。
ホップクリープの助長
IPA醸造におけるクリスタルモルトの使用がホップクリープを助長する、ことも挙げられます。
ホップクリープでは大量のホップを投入したビールにデキストリンを含む残糖が残っていると、ホップ中の酵素がそれらを分解し続け再発酵が起こるためダイアセチルを主としたオフフレーバー化合物を再発生させます。それら化合物の浄化に伴い製品化までの時間が伸び醸造スケジュールや売上を圧迫するというリスクもあります。
これらのリスクを避けるためにも、不要なクリスタルモルトの使用が減っていったとも考えられます。
結論
IPA醸造においてクリスタルモルトが使われなくなってる理由を考えてみました。
IPAがスッキ!といっても昔と今のIPAは全く違う造りになってるのでちゃんとアップデートしつづけたものづくりをしたいですね。
個人的にIPAにはあんまり使いませんが、クリスタルモルトは他で活きてくるスタイルもあるのでそっちでたくさん使おうと思います!
おわり