2023年7月17日 神さまは鴨川の西側へ
■まえがき
京都の夏を彩る(らしい)祇園祭。
昨年の思い出といえば、バイト終わりの深夜に御旅所を再々訪ねたことばかり。寝ずの番をする八坂神社の神主さんとお喋りさせていただき、祭りの歴史や時世下での形式変更など色々伺った夜も懐かしい。
ある晩は、数年前に宮本組で御輿を曳いたのだと聞かせてくれたおじいさんから「八坂神社 宮本組」「蘇民将来之子孫也」と刻印が入った限定らしい当時の木札をもらった。木札は今も玄関に飾っている。
深夜1時のひっそりと輝く御旅所は、鴨川の西側へ神様が滞在する七日間の意味を静かに教えてくれた。
昨年は巡行前日に行われる宵山の露店にも、当日の巡行にも行けず。唯一垣間見たのが後祭の還幸祭だった。今年は初の山鉾巡行見物。前祭の宵々々山から宵々山、宵山、山鉾巡行、神幸祭で最後の御神輿が御旅所に入る瞬間まで。刮目の気持ちでみてきました。
■日記
8時半に起きる。雲一つない晴天。きょうは10時到着が目標。急いで準備。寺町通りを下り、市役所横まで向かう。着いたころにはすでに結構混んでいたけれど、まったく直に見られないほどの人出ではなく安心した。辻回しが行われる河原町御池交差点は人人人。周囲のビルやホテルから見下ろす人々が涼しげで羨ましい。水分を摂ったり扇子で申し訳程度に自分を仰いだりしながら見物に入る。
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途中、涼しさを求めて市役所やゼスト御池へ逃げ込んだり。薄々勘づいていたけれどノースリーブの腕がすっかり焼け焦げた。炎天下、日焼け止めは大切。
「山鉾巡行は涼しい部屋のテレビで見るのが一番」と言う人もいるけれど、やっぱりともに暑さを浴びながら生で見る気迫に勝るものはないとも思う。
見る側はいつでも水が飲め涼しい地下へ避難できるけれど、曳き手さんや囃子方さんはもちろんそうはいかない。四条烏丸からぐるっと新町御池まで、なかには10トン以上もあるような山鉾を曳きながら、炎天下のなかを計2時間半以上もかけて練り歩く。頭が下がるのみではおさまらない。
相撲のような国技にせよこうした神事にせよ、伝統的な方法でもって維持されるそれらに大手を振ってすべてを肯定できるわけではないけれど、それらが現代まで受け継がれてきた事実は尊重したいなとふと思った。
神幸祭は21時ごろから。見に行くか迷いつつ、賑やかな市街地を散歩して祝日の午後をやり過ごす。
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そうこうしていると夜も深くなり神幸祭間近に。新京極商店街を抜け御旅所前へ。
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山鉾巡行で清められた道を、八坂神社からお越しになる三基の御神輿が通り、四条河原町の御旅所へいらっしゃるまでを差す神幸祭。神幸祭がこれほどまでの人出だとは知らず驚いた。せめてもと様子が見られそうな場所を選び、中御座、東若御座、東御座の渡御まで見る。
東御座が入るころは、前の人が去りそのまた前の人が去りと、最前列でその瞬間を見ることができてありがたかった。隣に立つ女性と「暑いですね」「次の御輿が来ましたね」など会話を交わす。京都で生まれ育ったという、ご婦人だった。神幸祭のことを色々と聞かせていただきながら観覧する。
東御座の渡御を見届け、一旦、駐輪場の閉門に間に合うよう退散。また別の駐輪場へ移動させて、再び御旅所へ戻る。ちょうど西御座が入ろうかという頃だった。寺町京極の入り口あたりから、少し離れて様子を見る。「ほいっと!ほいっと!」とやまぬ掛け声。距離を取るからこそわかる熱気もあるのだなと。
無事三基の御神輿が入ると、自然に沸き起こる拍手。交通規制解除の令が出ると、車通りとともにいつもの四条通が戻ってくる。日常のなかに、御旅所で輝く御神輿がいる。
■あとがき
初めて生で見る宵山の山鉾、お昼間の巡行、神幸祭。京都の町々を清めて御神輿の通る道をつくり疫病退散を願うという本義があり、一大観光資源としての意義もあり。京都で生まれ育った人々にとっての祇園祭と、京都を訪れる人々にとっての祇園祭。歴史と価値の共有には色々な手立てが求められるんだなとぼんやり思ったりしながらの前祭でした。お次は後祭。巡行までに御旅所へお参りしたい。当日はあの鷹山を一目見られたら大満足。日焼け止めは忘れず塗ります。以上。
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