CG背景がいまいちパッとしないときのチェックリスト
新人の頃から今に至るまでにいろいろな方にアドバイスを頂いた。
同じことを聞かない、言われないためにその都度書き足してきたメモ。
なんかいまいちだなと思った時に、このメモをみて他にできることがないか自己チェックしてきた。
そしてもう、ほとんど見る機会がなくなったのは、自分の中で昇華できたと思っていいのかな。
誰かに見せる用ではなかったので、これだけ読んでもさっぱり分からんかもしれないけど、公開(供養?)しちゃう。
【空気感が出ているか】
✅空の色、光源の色が全体に影響しているか
我々の身の回りにあるものは、空は青、木の葉は緑、土は茶色というように、モノと色のイメージが頭の中で結びついているものが少なくない。
しかしそれらは固定観念であって、実際にはオブジェクト自身が色を放っているわけではない。
特定の色の光を吸収し、特定の色の光を跳ね返すだけなので、そのシーン内に存在しない色の光は跳ね返しようがない。
真っ赤な郵便ポストも青い光の下では赤くは見えない。
✅空気遠近法
デプス素材を利用して奥ほど空、もしくは環境の色が入るように。
宇宙のように真空でない限り、空気、大気が存在する。空気中には水分(水蒸気)、ほこり、チリなどが含まれていてそれらにも光が当たり、跳ね返っていく。
よって、カメラから対象物までの間にどのくらい空気の厚みがあるか、空気がどのくらい汚れているか(光が当たる物質が含まれている密度)を考える。
そして 奥ほど彩度は落ちる。
【影の色、陰の色】
✅単純な黒ではなく、少しライトの色が入る
影・陰とは、光源からの光が直接当たらないだけであって、別の場所に当たってから跳ね返ってくる光(間接光)は当たる。
最近はCGソフトも良くなってPCスペックも上がったため、環境光もデフォルトでいくつか用意されていたりするので、意識しなくても”なんかいい感じ”になりやすくなった。
CGを始めたばかりの時に起こる問題でもっとも多いのが、影が暗い、というか『黒い』 そして汚い色が出てしまうこと。
影・陰だからといって単純な黒にしない。
✅影・陰が暗すぎないか
シンプルに影が暗すぎないかどうか。メイン光源と環境光の差が大きいほど影はくっきり黒く濃く、その逆は薄くなる。
※影はモノからモノへ落ちる影。Shadow
※陰は光が直接当たらない面。Shade
【画の統一感】
✅基本となる色相がちゃんとあるか
ライブステージのようにさまざまな色の光がどれも同じような強さで存在しているような場合でもない限り、シーンは主光源の色がベースとなる。
✅テクスチャの彩度が強すぎないか
CGだとそのオブジェクト自身に色を設定できてしまうが、あくまで光に照らされた分だけその色味が表れるということを忘れずに。
✅ベースの色相を保ちつつ、さまざまな色相を入れる
よっぽど実写っぽくする場合には当てはまらないが、絵としてリッチな感じにするには、多少ウソでも色数は多いほうが見栄えが良くなることがある。
【グラデーション】
✅単色で広範囲が占められていないか。
現実世界において、光は常に減衰している。
ほぼすべてのオブジェクトが凹凸を持っている。
そして、観察している眼から対象物までの距離も一定ではない。
汚れているものも多い。
よって、よっぽどの偶然が重ならない限りは、広範囲にわたって単一の色(同一のRGB値)が占めることはなどありえない。
物理現象に基づいたグラデーションが生まれているか
奥行きのグラデーション
高さのグラデーション
物体の丸みのグラデーション
光源からの距離によるグラデーション
【コントラスト】
✅明るさ(コントラスト)の幅が存分に使われているか
画像を白黒にしたときにも、黒から白まで幅広く明度を使えているか。
彩度が無くてもちゃんと絵として成立しているか
✅コントラストの強さ = 直接光量(主光源の強さ) - 間接光量(環境光の強さ)
主光源の強さと環境光の強さの差が大きいほどコントラストは強くなる。
✅カメラから対象物までの距離を考慮したうえで、コントラストが整っているか
光は拡散反射すればするほど環境光(間接光)へと変わっていく。チリやホコリは拡散反射するため、空気遠近法の原理で遠くのものほどコントラストが弱くなる。
【空間感・距離感】
✅平面的でないか。3次元空間が生まれているか
カメラから対象物までの距離だけでなく、オブジェクトからオブジェクトまでの距離も考慮して画を調整することで、距離感、空間感が生まれる。
手前のものと奥のものの色味の差
被写界深度によるボケ
ディーテールの差
オクルージョン素材は適切か
✅存在するものが互いに影響、干渉しているか
オブジェクト同士が近くにあれば、間接光が当たる量は減る。
影が落ちる。カラーブリーディングする。
ちょっとした電球、液晶画面など、光を放つものがちゃんと周囲に影響を与えているか。
【リアリティ】
✅光源の位置が統一されているか
同じくらいの量の光が当たる場所にあるものは、当然同じくらいの明るさになる。もちろん、物質そのものの質感は考慮するが。
✅光の強さ、影の濃さ、ボケ具合の整合性が取れているか。
必ずしも現実的に正しいことが一番良い絵になるとは限らない。
見てほしい部分を目立つようにしたり、重要でない部分のディテールを削ったりすることは必要。
ただしそれらは、対部分が物理現象に則って作られた上でのちょっとした味付けであることを忘れてはならない。
✅その物体がその物体らしい質感になっているか。
同じ量の光が当たったとしても、金属・ゴム・ガラスなど物質によって見え方は異なる。
しかし、あたった光の量が同じであれば、そこから派生していく光の総量も同じであることに変わりはない。
ただ、当たった光がどのくらいの割合で直接反射・拡散反射・透過・吸収・散乱するのかを考慮して質感をつけなければ、その物質がその物質らしくならない。
✅ノイズが均一すぎないか
ものによっては均一なノイズが入るものもあるが、自動処理などで作ったノイズは均一すぎる場合がある。
それによって不自然に見えてしまう場合もあるため、ある程度は意図的に変化、偏りを持たせることも必要。
【まとまり感】
✅大きなピースとしてのまとまり感が出ているか
色味を統一していけば、絵としての落ち着きを出すのは難しいことではない。
しかし、色味を統一させすぎると遊びがなくなってしまう。
そうするとキャラクターやエフェクトなど別の要素を乗せたときになじみにくくなる。
また、少し離れてみたときには平坦な絵に見えてしまう。
絵の細部ばかりにこだわりすぎず、空、手前のもの、奥のもの、というように、絵をいくつかのブロック(3~5くらい?)として見てみることも必要。
そしてそのブロックごとに、少し色味を変えてやるとそれぞれの距離感、存在感が出て、見栄えもする。
【視点の誘導】
✅見せたい場所に目が行く絵になっているか
一見するとディテールがあってキレイな画でも、逆に情報量が多すぎてどこを見てよいかわからない、どこを見て欲しいかが伝わらない場合がある。
見せたい部分に視点を誘導できると、より良いモノになる。
コントラストを強めにする。
見せたい箇所は色相を広めに使用にし、それ以外の部分は逆に抑える。
パラがけする。
【汚い色をなくす】
✅色と色が混ざる中間が汚い色になっていないか
ある色相から別の色相へ変化するときに、中間色が汚い色になっていないか。 グレー、黄土色系など。
特に、補色・反対色( 赤⇒緑 /青⇒黄 )の場合には汚くなりやすい。
補色とは色相環において最も遠い色同士のなので、その間の色相を入れることでキレイなグラデーションを作ることができる。
光のエフェクトをBGにのせるときなどに有効。
また、暗い印象を作るときに単純に明度を落としがちだが、黒(グレー)で落とすのではなく青系、紫系などで落とすと汚くなりにくい。
【面の強調】
✅異なる向きの面が、異なる明るさになっているか
光源方向を意識して、光が多く当たる面・カメラ方向を向いている面・光源とは逆を向いている面など、角度のついた面と面の境界にしっかりコントラストを出すとより立体感が生まれ、光源方向の説明にもなる。
【光の強さの序列】
✅光の強さを整理する
光が周囲に影響することを意識するようになると、逆にそれを意識しすぎて絵がガチャガチャしてしまうことがある。
特に夜などの暗いシーン内で複数光源がある場合は、光の強さの序列を整理する。
弱い光の影響まで誇張しすぎないように。
例)
車のヘッドライト > 街灯 > スマホの画面