新しいカードタイプ「バトル」が追加されて楽しそうなのでウィザーズを褒めそやしつつ考察@リミテッド
はじめに
1993年にリリースされた、マジックというゲームの歴史は今年で30年を迎えた。その長い歴史の中ではいろんなカードタイプが生まれては消えていった。プレインズウォーカー、部族、オオアゴザウルス……。
特にプレインズウォーカーが追加された2007年のローウィンブロックから、マジックというゲームは全く様変わりしたといっていい。
それから15年。奇しくもプレインズウォーカーが作られた年がMTGの折り返し地点となった。そんな折に新しいカードタイプが追加される。
この滅多にないお祭りを前に、このカードタイプがいかに優れているか。夢があるかを褒めたたえて、その後考えられるコンバットへの具体的な影響を述べ連ねる記事になります! すごいぞウィザーズ! よくやった!
簡単なルールの確認
バトルはパーマネントカードの一種。
サブタイプごとにルールが決まっているようだけどもとりあえず包囲戦の場合は出るに際し守る対戦相手を選ぶことになる。
このとき、オーナーはプレイしたプレイヤーのまま。
各バトルは右下に書いてある守備値を持って場に出る。まるでPWのように、殴り先として選んでアタックすることができる。ダメージを与えて、カウンターをすべて取り除くと、裏として唱えられる。裏にする際打ち消すことができる稀有なカード。
たいていのバトルは場に出た時に能力を持っていて、ソーサリー1枚分の仕事をするようデザインされている。裏面は生物だったりエンチャントだったり、1枚分の仕事をするカードがデザインされている。
ここで注意したいルールが、「それが倒されたときに」の解釈。
リリースノートに書いてあったので引っ張ると、「このパーマネントの上から最後の守備カウンターが取り除かれたとき、これを追放し、変身させた状態でマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。」ということ。
つまり、カウンターを取り除かないと変身しない。
たまにバトルを破壊しても変身したり、生贄にささげても変身すると勘違いしている人が居るので注意。
また、変身は誘発型能力なので、もみ消すと変身されないまま墓地に置かれる。英雄譚最終章と同じ状況起因処理がルールとして追加されるとのこと。
何がすごいって、この特徴は包囲戦というサブタイプ専用の特徴である可能性がある。今後もいろんなサブタイプがでてなんでもできる。ヤバイ。引き出しの塊。すごいぞウィザーズ!
PWとの違い
ただ、バトルというものがどういう性質か、というのは具体的に想像できていないので、似た性質を持つPWと比較してみながら掘り下げてみよう。
・プレインズウォーカーの攻防の立ち位置とアドバンテージ
PWは基本的に
・相手に対してアクションを要求し
・放置するとアドバンテージを稼ぎ続ける
という特徴がある。
結果
⇒実質ライフの増加
⇒睨み合いをしているだけで受け側が勝つ
⇒攻め手側にストレスを加える
ことに繋がった。攻め手に選択肢を与えつつ、ゲームのスピードを遅くする力があった。結果構築は深みが出たように思うし、フレンズという形のデッキも良く出るようになった。いい影響だったと思う。
ただ、リミテッド的には非常に困った存在だった。単にカードとして強すぎるのである。基本的に構築と違い、リミテッドではアタッカーとブロッカーによる睨み合いというのが頻繁に発生するゲームでは、睨み合いをしているだけで勝ちに近づく、という性質が非常に良くなかった。
リミテッドは、だいたいがアドバンテージを稼ぐ手段が限られている。そのため、クリーチャーを並べあっていかに殴っていくか。その手段を問うゲームになりやすい。その時に、無限のアドバンテージを持ちつつボードにアクセスできるプレインズウォーカーは強すぎたのだ。
マジックというゲームは、カードパワーが高くなりすぎてゲームスピードが速くなりすぎた。ライフ20では足らないとよく言われてきた。その状況を改善するために、PWというゲームを遅らせるためのカードタイプができた。その目論見は上手くいった。ただ、リミテッドにおいては、劇薬すぎて、ゲームがつまらなくなりがちだった。すごくないぞウィザーズ!
そこで、今回のバトルができた。すごいぞウィザーズ!!!!
・バトルの攻防の立ち位置とアドバンテージ
バトルは基本的に
・攻め手側が出す
・受け手はこれを放置しても特に問題はない
⇒と見せかけて急に相手のアドバンテージになるプレッシャーがある
・出したターンに守備値を減らすことができる
といった要素がある。特に、出したターンに守備値を減らすことができるというのがちょっとヤバイ。
結果
⇒アタック先が増えることで、攻め手は実質的にキルターンが伸びてしまうことがある
⇒受け手は、バトルをケアするためには通常より多くのブロッカーを立てる必要が出てしまい、アタッカーを減らさざるを得なくなる時がある
⇒決着がつくまでのターンが長くなり、コンバットは複雑になり、ゲームに深みが増す!
僕はゲームスピードが速すぎるリミテッドがあまり好きでない。なぜなら、それだけ判断の機会がなく、プレイが固定化されがちに見えるからだ。タイトなゲームの中でどういうプレイングをするか、それを突き詰めるのも面白いけど、どうやったってゲームの複雑性という意味ではターンが長い方が大きいのだ。疲れるけど、そっちの方がいろいろできて好き。(個人の感想です)
そんななか、このバトルというタイプはすごいバランスを作ってきた。適当に出してもすぐには落とせない。どのタイミングで出すかの攻防や、出してからの攻防(殴るか、ライフを削るか)のバランスがあったりと急に複雑性が増したのだ。
今までも殴るか殴らないか、プレイヤーでないものを殴るか、という選択肢はあった。
ただ、PWはほとんどの場合”絶対に殴らないといけない”というクソな状況を作ったので、ゲーム的選択肢はほぼなかった。ライフを削り切るか、PWを殴るか。そんなものしかなかった。
バトルはその点大発明だ。
”殴らなくても特に問題ない”のだ。それなのに、バトルを殴るという選択肢がただ増えた。ゲームが複雑になったのだ。楽しい。
その上で、守備を破られてもアドバンテージが1枚しかとられないことも大きい。殴る側に選択肢が増えても、受ける側が”絶対に守らなければならない”となっても駄目だなのだ。選択肢が減っている。なので1枚。アドバンテージは1枚とすることで、受ける側も”守らなくても特に問題ない”という状況にできるのだ。
プレイヤーがどうアタックするか、ブロックするかという選択肢を持つ。これはマジックを楽しくしている要因の一つだ。絶対に殴らないといけないコンバットしかないならまぁだいたいのゲームはつまらない。その上で、誰を殴るか決められる統率者戦は大人気だ。バトルも、素直に面白いゲームを作るだろう!
すごいぞウィザーズ!!!!
デザイン空間の広さ
PWのデザイン空間はあまり広くない。
前述のとおり、その性質からして強すぎるのだ。
+の無いPWを量産すると、アンコモンに入れることができるカードパワーに落ち着くが、これは逆に殴るという選択肢が無くなる場合が多かった。そのため常在型能力を付けることで殴る理由を作ったのが灯争大戦だった。これ自体はいいプランだったけども、常在型と起動型である程度セットで意味があるようにデザインしなくてはならなかっため、デザイン空間はやはり狭かった。
リミテッドを面白くするレベルでデザインできる空間は、本当に皆無に等しいのだ。
そこでバトルだよ。
バトルは現在のところ、ほとんど弱いソーサリーになっている。弱いソーサリーいくらでも作れる。デザイン空間は膨大だ。
その上で、裏面の縛りが全くない! これはすごいことで、例えば両面バトル包囲戦とかいうとんでもないことができる。ダメージを通すたびにアドバンテージを稼げるみたいなことができる。これやっててたぶん楽しい。いつか来る。今ですらエンチャントやクリーチャーやアーティファクトやPW。プレイを経由するのでインスタントやソーサリーにだってなれる。なれないのは土地ぐらい。実に自由なデザインだ。何が起きてもおかしくない。
その上、新しいサブタイプを想定する。包囲戦というデザインを聞いてなお、ほかのサブタイプの扱いは想像すらできない。どうしたんだウィザーズ頭がおかしくなっちまうよ! すごいぞウィザーズ!
強いバトル弱いバトル
では、強いバトルと弱いバトル。これは具体的にどんなものがあるか。
・表がただ強い
・裏になりやすい(アドバンテージを簡単に取れる)
・裏が強すぎて表をひっくり返すと実質勝ちに
の3種類が考えられる
表がただ強い
リミテで6マナ選択的リムーブラス。皆さん告別が記憶に残っているだろうか。あれほどではないにしても十分スペックがある。単に表が強くて、ソーサリーと遜色ないカードだと、バトルの良さもクソもなくただアドバンテージの種を得ることになる。
これは一例ながらも、単に表を強くすれば簡単に強いバトルは作れてしまう。これはたいてい面白くないが、このゲームをやる上でこういう存在がないかは考えておくべきかと思う。
裏になりやすい
裏になるとアドバンテージ。うらになりやすければアドが取りやすい。よって強い。
ではどんなのが裏になりやすい?
表が除去を含んだり、タップやバウンス、+修正や回避能力といったライフを削る能力を持っていると裏にしやすい。
他には単に守備値が低いというパターンもある。主にこの2パターン。
ただ、これらの変身しやすいバトルは、両面とものカードパワーを低く設定してあることが現状では多い。
なので、変身しやすいというのはあくまでも強さの指標の一つにすぎない。ただ、除去とセットになっているとほかのバトルを削ることができるようになるため、バトル複数採用時の安定度が一気に増す。
また、裏面の実質マナコストは注意してみておくといいかと思う。
バトルによって即変身できるなら、一時的なマナ加速といっても過言でない能力を得るからだ。
裏が強い
たぶんこのパターンはあんまりない。
ひっくり返せば勝つパターンが一番強いけど、
マナレシオが良すぎてひっくり返した後にマウント取れる、も近い動きになる。
そういう意味では、裏面のカードがどれぐらいのマナのカードと一緒の強さを持っているか、が重要な要素になりそう。
想定されるコンバット
バトルをみて守備値が5とか6とか書いてあって、そんなに削るぐらいなら顔を削った方が良くない?と思った人も多いと思う。これはだいたいの場面でその通りなのだけど、だからバトルが弱いというのは全然違うと思った方がいい。
バトルの守備値を削るのはだいたい下記5パターン
①ある程度削れる盤面でバトルを出すパターン
◎今あるバトルを殴るパターン
⇒②ライフレース中にちょっかいだす
⇒③バトル強いやつだけで殴る
⇒④回避で殴る
◎例外
⑤殴らない。現実は非情である。
⑥殴らずとも火力や能力で削れる!
書いてて思ったけどたぶん①が強い。
バトルを殴るという行為自体はライフレースにおいて損なので、殴った分以上のリターンが必要。
たとえばあなたがプレイヤー1だとして、下記のような状況を考えてみよう。
プレイヤー1(ハンド1 ライフ20)
11,22,55
プレイヤー2(ハンド2 ライフ20)
43威迫 バトルにパワー2倍
といった盤面では、普通プレイヤー1が有利。
プレイヤー1のターンならさくっと55で殴りそうな盤面だ。
もし22が除去されても、ライフレース有利だし。とくに違和感なく今までは殴ってた。
ただ、バトルがあるとどうなるだろうか。
状況が変わって見える。55が殴った後、プレイヤー2が22除去しつつバトルを出して来たらその瞬間ゲームが変わるからだ。バトル用のコンバット生物を用意している相手だ、バトルが入っているのは想定できる。どんなバトルでもだいたい変身する。変身したのがジローサだったりすると急にゲームが成り立たなくなる。
どこまでケアするか、という択が生まれ、バトルがない状況でもゲームスピードに影響するようになるのだ。これはかなりの影響があると思う。
今見えないバトルすら影響する可能性がある。
これがバトルがゲームを奥深くする要因だ。
さらに、プレイする方はいつプレイすべきかというのを考える必要がでて、マナ通りに倒すのがいいのか、それとも遅らせるのがいいのか。非常に細やかなゲームプランが求められる。これは、PWによるゲームチェンジが構築で起きたことを、リミテッドでも起こそうという発想なのだと思う。
最後に
もっと書きたいことがあったんだけど書き始めたらさらに1万文字ぐらいは書かなきゃダメだと気づいたのであきらめて、今のところで終わっておきます。
少なくとも、バトルが入ることでリミテッドは次の世界に進む。今期も楽しみでしかたない。
すごいぞウィザーズ! まだこんな引き出しがあるだなんて!