卒業タイムリミット
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卒業タイムリミット
辻堂ゆめ
双葉社
以前、同じ作者さんが書かれた「サクラサク、サクラチル」を読んだ。初めての作者さんでしたが、とても読みやすくて他の作品も気になったので今回手に取ってみた。
やはり、理由はよくわからないけど、とてもスラスラ読めて、難解な表現もなく非常に読みやすかった。かつ、話も構成もしっかりと練られており、ストーリーの中盤から終盤にかけて、テンポよく展開され、ページをめくる手が止まらなかった。
卒業式といえば・・・
本小説の感想とは関係ないかもしれないが、個人的にはあまり楽しかった思い出がない。自分が卒業するときは、とても良い思い出だが、在校生側だと、長時間の練習や準備が辛かったような気がする。特に、長時間硬い椅子に座っているとお尻が痛くなってとても辛かったなぁ・・・。なんてことを思い出したりする(笑)
ただ、3月って、4月に向けてというかいろいろと学校内の環境が変わるので、なんだかソワソワした気持ちになる。そんな雰囲気も小説内に出てきて、なんとなくそういった雰囲気を思い出すことができた。
さて、簡単なあらすじになるが、本小説は、ある高校の卒業式を3日前に人気の高い女性教師が誘拐・監禁される事件が発生する。主人公(黒川)を含む4名の学生が犯人から指名され、事件の解決をするという内容だ。
単に、事件を解決する推理ものというよりかは、事件を通して、4名の高校生各々が抱えた秘密について徐々に触れていき、主人公を含めて新たな人間関係を形成していく、青春物語的な要素も含んでいる。
物語の展開としては、推理系の話から始まる。また、本小説で登場する高校で行っている、月に1回理事長から出される「告白カード」というその時々に合わせたテーマで生徒が各々考えていること、感じていることを書いて提出するという行事がある。
この告白カードが物語の展開するキーとなる。初めは「ふーん」程度に読んでいたが、物語が展開するにつれて、だんだんと物語の真相にリンクしてきて、無駄なく、テンポよく展開されていたため、楽しんで読むことができた。
以前、本小説の作者が書いた「サクラサク、サクラチル」を読んだ時にも感じたことだが、先生や親と子どもという絶対的な力関係がよく描かれている。
個人的には、この絶対的な力関係に共感を感じる部分が多く、読んでいて、チクチクと心に刺さる部分がある。
同じ人間でも、生きてきた時代、環境が異なるため、理解し合えないところがある。その衝突から、子ども側は反論、反抗することが上手にできない。そういった子どもたちが描かれ、私は共感できる。
学校でも家庭でも、人によって、大小あるが、大人からの圧力というか、絶対的な服従を感じたことはないだろうか。
その時の気持ちが蘇ってくるような作品に惹きつけられる。
青春時代のダークな面を描きつつも、最終的には円満に終わるので、暗い題材だとしても、後味が爽やか。スッキリした気分で読了できる点、とても好きな小説の一つになりそう。
最後に、絶対的な大人の力を以って子どもを服従させたがる大人(先生)を描く一方で、全力で生徒を守る大人の姿も描かれていて、そこは素直にカッコイイと感じた。
私もオトナといっていい年齢に差し掛かっているが、子どもたちに威張らず、カッコイイ大人になりたいと思ったりしている。
それではまた。
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