わたしはちょっと、違う感覚なのだけれど
SFとかミステリーとか、カテゴリーについて書かれた文章を読んでいると、油彩か水彩かということが言いたいのか、人物画か風景画かということが言いたいのか、どっちなのだろうとたまに感じることがある。
もしかしたら、混ぜこぜなのかもしれない。
そうなると、『Life After Life』や『Never Let Me Go』がSFということも、まあありなのかもしれない。
『Life After Life』は、何度生き直しても似たような場所にたどり着いてしまう主人公の姿を通して、当時を生きた人々、特に女性の、選択肢の少なさを書いている。
そのために、ループという手法がとても有効だった。
それこそ、ヒトラーを暗殺するくらいしか、違う人生を手にするすべはなかったのだ。でも誰にも、それは出来なかった。
『Never Let Me Go』は、原書の表紙にもなっている場面がよく象徴するように、科学の進歩と、人であるということの間に生じてくる齟齬を、主人公の悲しみを通して書いている。
主人公の中には悲しみが満ちているので、彼女の目を通して書かれたものは、単なる風景描写であってもとても悲しい。
まだ間に合うという意味で、舞台は近未来である必要があった。
永遠に近未来であって欲しいという願いも、もしかしたら込められているのかもしれない。そう考えると、『Never Let Me Go』というこの難しいタイトルの意味も、見えてくる気がする。
カテゴリーは、本を選ぶときには役に立つのかもしれない。
でもわたしは、読み終えた時点でカテゴリー分けをしようとは思わない。何が書かれているかがわかればそれでいいし、結果として、分類出来ないことだって多いだろう。
現代美術家である松山智一さんの作品を見て、岩絵の具を使っているから日本画だと言う人は、たぶん誰もいない。
小説を読むときだって同じだろうと、わたしの感覚としては思っているのだけれど。
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