さよならー茶トラゆずとの幸せな日々 vol.45
火葬する時間を午後に指定し、ゆずに花を添えます。
昨日から入れてある保冷剤を取り換え、死後硬直になったゆずの足を触ってみます。
(あー、カチンコチンになっちゃったねー)
初夏を思わせる黄色系の花、ひまわり、ガーベラ、バラ、カーネーションなどを想い想いに添え、家族写真や思い出の写真もプリントしていれます。
ゆずの好きな食べ物も選びラップに包んで入れてあげます。
これでもか、というぐらいに花に包まれたゆずに、青いバラの蕾を耳の穴にそっと置きました。えーっと言われながらも、ゆずに笑わせて貰いました。
(ゆずも苦笑しているでしょ!)
『何するニャー』
葬儀屋が連絡をくれたので箱をマンションの入り口まで運びます。今日は、朝から私達の号泣を表わすような大雨でしたが、少し小降りになったようです。
火葬してくれる車はワンボックスで、珪藻土の様な土でできた四角い窯をつんでいます。出し入れできるトレーの上に箱から布を持ち上げでゆずを出しそっとおきます。
(せっかく綺麗に飾ったのに、箱から出すのね…)
最後に皆んなでゆずの身体に手を添えてありがとうと伝えます。
本来なら火葬の時に音がし、火葬している事を不審に思う人がいるから、空き地まで移動するそうですが、雨で人通りもなかったので、少し離れた見えるところで火葬してくれました。
暫く見ていましたが、1時間程かかると言われていたので引き上げました。
ゆずを入れていた箱をどうしようと迷いましたが、またカップラーメンを入れ何事もなかったかの様に戻します。
ほとんど活躍しなかった酸素ハウスを分解し、梱包します。
(この間借りたばかりなのに…)
火葬が終わったと連絡が入り、奈々と私で遺骨を受け取りにエントランスに向かうと、簡単に組み立てられたテーブルの上に様々な物が並んでいます。受け取って終わりと思っていたので、興味津々で近寄ります。
骨壺の蓋は開いていて、ゆずの骨が見えます。
隣にトレーがあり、小さな骨が複数個乗っています。葬儀屋の方が丁寧な声で説明してくれます。
「こちらの骨は、手の指、足の指、尻尾、それぞれの骨です。ピンセットで骨壺に収めてくださいね」
奈々と私は同時に叫びます。
「わー、可愛い骨だねー」
2センチほどの小さな骨は、絵で描く様な白く綺麗な形をしています。
ピンセットでつまみ骨壺に入れる感じは、まるでおままごとのようです。お父さんの分もあったので何回もピンセットで摘んで収めました。
最後にゆずから贈られたプレゼントのようで、心が温かくなりました。
温かい骨壺を白い袋に入れて渡され、サプライズの骨上げを用意して貰った事へのお礼を述べて帰ります。
「お父さんも来ればよかったのに、ゆずの骨可愛かったよー、ピンセットで摘んで入れたんだよ、見る?」
「いいよ、みない」
私達の方がサッパリしているのか、骨があまりにも可愛かったことをあれこれ話し合い、葬儀屋さんに貰ったパンフレットをみて、奈々に渡す、分骨用のカプセルの種類や予算を検討します。
思い出は、溢れるほどありますが、遺骨だけでも、物理的な存在として、手元に置きゆずを感じていたいと思います。
ゆず、
ありがとう、
さようなら。
これまでの思い出の記録をゆずにささげます。
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