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最後の夜(9日目)茶トラゆずとの幸せな日々 vol.44

9日目(日)vol.43のつづき

奈々に倒れた時の様子を聞くと、涙が溢れ鼻水が止まらないながらも冷静に
「すでに倒れていて、一回だけ痙攣してえび反りになったよ」
「猫は死ぬ時目を開けるから早く閉じてあげなきゃ」
と教えてくれ、いつ開いたのか不思議におもいながら、ゆずの目を閉じます。黒目で大きく見開らいた目はなかなか閉じません。2人して閉じ、かわいくみえるように口角もあげました。
近くで見ていたお父さんに
「何時?」
と聞かれ、時計をみると4時すこし過ぎていました。覚えやすい様に、4時にし、ゆずは6月5日午後4時に虹の橋を渡ったのだとしました。
ゆずを見送る時は、布団に寝かせ、皆んなで囲んであげたかったのですが、実際は台所の片隅の床で、それもコンセントから延びる延長コードを下にしていました。
「なんでこんな所で、しかも電気コードの上で死ぬかなぁ」
笑い泣きです。ゆずらしさ全開で逝ってしまいました。床から抱き上げると、頭がぐらっとまるで首が据わっていない新生児の様に、落ちてしまうんじゃないかと思うほど下がりました。慌てて頭を持ち上げます。死んでしまった事を実感します。さらに下半身が少し濡れていたので、これもよく聞く現象だと実感し、綺麗にしてあげようと、お湯が出るまで待ち、タオルを濡らして拭いてあげ、とりあえず丸クッションに横たえリビングに運びました。
死んでいても可愛いゆずに、顔を近づけてずーっと触っています。毛もフサフサで寝ているのと変わりありません。
ゆずを寝かせる箱を探してみると、丁度頃合いの段ボールがあります。無地の箱と、蛤鍋の絵が一面に描いてある箱です。
「蛤鍋も捨てがたいけど、やっぱりこっちじゃない」
と無地の箱を選び中身をとりだします。まだカップラーメンが数個はいっていました。
毛布を敷いて、ちょっと窮屈そうに見えましたが、丸まったゆずがピッタリ入るジャストサイズです。
「なんで、こんなにおあつらえの箱があるかなぁー」
上に布をかけて、次はお花の用意をします。近くの花屋は6時まで、まだ間に合う時間です。
「お母さんも行く?」
「ゆずが1人になっちゃうから、待ってるよ」
お父さんと奈々がお花を買いに行っている間にまたゆずを触り、手や足を持ち上げて、まだ柔らかいゆずで遊びます。
段ボール箱といい、お花屋さんといい、ゆずが亡くなった途端に、スムーズに事が運んでいきます。病気の時は、後手後手で悔しい思いをしていたのに皮肉としかいいようがありません。
スマホでペットの葬儀関連を調べると、色々な情報が出てきます。今時の便利な情報を見つけて詳細を調べます。
とりあえず火葬し、遺骨を手元に残そうと考えていたので、葬儀しない方向で検索すると、驚く事に車の火葬場が家まで来て近くで焼いてくれ、骨を届けてくれるという、まるで石焼き芋システムがある事を発見しました。
何て便利な世の中になったもんだ。これなら、外出しないで、普段着でいいし、この泣き腫らした顔でも大丈夫なわけです。
花をいっぱい買って帰った2人にも、移動式火葬車の説明をすると、驚いたリアクションで賛成してくれました。本当にスムーズに進みます。
明日は骨になってしまうから、物理的に無くなってしまうから、寝る時も和室に運び、ゆずを思いながら一緒に休みました。




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