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ギターで始めるコード理論 -ドミナント編 -

 前回↓の続きです。


はじめに

 前回は基本の「7つの音」、「3つのコード」、そしてそれらの対応である6つの主要なコードを紹介しました。
 今回は少し踏み込んで、コード進行を知る上で重要な「ドミナント」という概念について解説していきます。
 少し理論っぽくなりますが頑張って着いてきてください。

ドミナントとは

 最初に答えを言うとⅤ7です。ただこれではあまりに乱暴なので、順を追って説明します。
 これを読んでいるあなた、ギターを手にとって、前回の基本の7音をシまで弾いてみてください。どのフレットからでも良いです。

図1: 階名と指板上の位置

 ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ…

 なんとなく次にドを弾きたくなりませんか?
 私はなります。シで終わるとなんだかムズムズします。

 シを弾くとドに引きつけられるように、音には引力が生まれることがあります。そしてこれはコードでも同じです。

 一度Ⅱm7 → Ⅴ7と弾いてみてください。そうすると、なんとなく次にⅠM7が来て欲しい気がします。ⅠM7を弾くと、ストンと腑に落ちた感じがします。

図2: Ⅱm7→Ⅴ7→ⅠM7
※メインの音が6弦2フレットの場合です。

 前回ドはメインの音と言いましたがコードでも同じで、ⅠM7は基本のコードの中でもメインのコードです。
 そして、このメインへの引力を作り出すのがⅤ7なのです。

 この引力を生み出す特殊能力を持ったコード「ドミナント」と呼びます。
 「Ⅴ7はⅠM7のドミナントである」というような言い方をします。
 ほとんどの場合ドミナントはセブンスであり、セブンスは何かのドミナントです。

強進行

 Ⅴ7→ⅠM7は最強の引力なんですが、そこまでではないけれど引力が生まれる進行が他にも存在します。
 Ⅲm7→Ⅵm7やⅠM7→ⅣM、Ⅱm7→Ⅴ7なんかもそうです。
 弾くとなんとなくしっくり来ませんか?

図3: Ⅲm7→Ⅵm7
※メインの音が5弦5フレットの場合です。
図4: ⅠM7→ⅣM7
※メインの音が5弦5フレットの場合です。

 これらを実際に弾いてみるとわかるんですが、ルートの動き方が一緒なんです。6弦から真上の5弦に行くか、5弦から一つ飛ばした左下の6弦に移動します。

図5: 強進行

 これが重要で、このルートの動き方をすると引力が発生します。
 こうした引力が発生するコード進行を「強進行」と呼びます。

 実は、コード(ルート)は「同フレットの6弦→5弦」または「5弦→一つ飛ばしの左下の6弦」に進みたがるという性質があるのです。

 ジャズには「ツーファイブワン」という用語があるのですが、これはⅡm7→Ⅴ7→ⅠM7という進行を表しています。
 これをよく見ると2回強進行になっている上、ドミナント→メインで終わっておりとんでもなく強い進行なのです。
 重要かつお決まりの美しい進行です。

セカンダリードミナント

 先ほど紹介した強進行のうち、Ⅲm7→Ⅵm7に注目してみます。ここでのⅢm7はⅥm7への引力を持っていますが、セブンスでは無いのでドミナントではありません。引力も弱めです。

 しかしこの引力を強める方法が存在します。それはⅢm7をⅢ7に変えてしまうことです。
 Ⅲ7はⅥm7のドミナントであるので引力がパワーアップする上、Ⅲ7にはソ♯という基本の7音ではない音が使われているため、独特の雰囲気を出すことができます。

 このようなメイン(ⅠM7)以外のコードに向かうドミナント「セカンダリードミナント」と呼びます。

 これが使われているもので有名なのが、いわゆる「丸サ進行」です。ⅣM7→Ⅲ7→Ⅵm7という進行なのですが、ただのⅢm7を使うよりドラマチックになっているのが感じられると思います。

図6: ⅣM7→Ⅲ7→Ⅵm7
※メインの音が5弦5フレットの場合です。

 Ⅲ7以外にも、Ⅵ7やⅠ7がよくセカンダリードミナントとして使われます。

裏コード

 ここまで色々なドミナントのコードを紹介してきましたが、これらのコードは別のコードに置き換えることができます。
 例えばⅤ7であれば、Ⅱ♭7に置き換え可能です。この置き換え後のコードを「裏コード」と言います。Ⅱ♭7はV7の裏コードというわけです。

 置き換え方法は、「着地したいコードの半音上のセブンス」です。Ⅴ7であればⅠM7に着地したいので、その半音上のセブンスであるⅡ♭7(Ⅰ♯7)が裏コードとなります。

 ツーファイブワンで裏コードを使ってみると、下図のような進行になります。使っている音が特殊なのとルートが半音ずつ下がることで、独特な響きが得られます。

図7: 裏コード
※メインの音が5弦2フレットの場合です。

 このテクニックはセカンダリードミナントに対しても使えます。丸サ進行であれば、ⅣM7→Ⅶ♭7→Ⅵm7となります。曲に変化を付けたいときに使うと面白いかもしれません。

補足:裏コードの原理について

 使い方は上記の「着地したいコードの半音上のセブンス」さえ覚えておけば問題ないのですが、なぜそうなるのか気になる人向けに補足を書いておきます。少し分かっている人向けになるので理解できなくても大丈夫です。

 Cメジャーで考えます。
 ドミナントの構成音は下から「ソ、シ、レ、ファ」となるのですが、このうち「シ」と「ファ」が「トライトーン」という不安定な音になっています。
 このトライトーンは「半音内側」(または半音外側)に進みたい性質をもっており、これがあることでドミナントは前述の「引力」を持つことができています。進みたい先がⅠM7の構成音である「ド」と「ミ」な訳です。

図8: トライトーン

 ファとシが重要ならば、「ファとシを構成音とした別のコード」でも代用できるのでは?というのが裏コードの原理です。
 G7の裏コードであるD♭7の構成音は「レ♭、ファ、ラ♭、シ」であり、「ファ」と「シ」が含まれているため、G7の代理として機能できるということです。

まとめ

 今回は「ドミナント」を主なテーマとして、関係の深い「強進行」「セカンダリードミナント」「裏コード」を紹介しました。これらを理解すれば、本当にほとんどの曲はコードを取れてしまうのではないかなと思います。

 ただ、前回言った「例外」のパターンはまだまだこれだけではありません。次回は他の例外パターンを理解するために、基本の3つのコード以外のコードを紹介していきたいと思います。

 質問やツッコミ等あればコメントお願いいたします。気づいたら反応します。
 図をペイントで作っているんですが面倒すぎる…つかれた

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