国家試験から学ぶ!臨床検査技師の仕事-これぞ臨床化学の基礎!の巻-
こんにちは!
臨床検査技師のあきまるです。
国家試験から学ぶ!シリーズ!
今回の問題は
第69回臨床検査技師国家試験問題の38問目
です!
それではLet's Go!
問題
溶液Aを30倍希釈して吸光度を測定したとき、0.300であった。
この物質の測定波長におけるモル吸光係数を6,000L/mol/cmとする。溶液Aの濃度は何mmolか。
ただし、使用した光路長は1.0cmとする。
今回は選択肢を提示しません(!)
頑張って計算してみましょう!
※本ちゃんの試験では選択肢あります。
簡単な解説
吸光度を求める計算式を覚えておこうね!という問題です。
吸光度(略称:E;extinction)は下記3項目を乗じて算出されます。
ε:モル吸光係数(L/mol/cm);物質特有の定数
c:測定対象物の溶液濃度(mol/L)
l:光路長(cm)
つまり
E = ε × c × l
と、なります。
問題文の数値をあてはめると、
0.300 = 6,000 × (c ÷ 30 ÷ 1,000) × 1
注意すべきは、
予め溶液Aを30倍希釈していること(÷ 30)
求められている濃度の単位がmmol/L(÷ 1,000)
ですね。焦るとこの辺を忘れます(笑)
あとはただの算数です。
解答
正答は
1.5 mmol/L
です。
裏解答と余談
今回は裏回答というより、吸光度と臨床化学との関連の解説です。
吸光度(E)とは
とある物質に光をあてます。
物質を通過して見える明るさをT、通過前の光の明るさをT0とした時
E = -log ( T / T0 )
の等式が成り立ちます。
物質を通過すると光が減弱します。減弱の程度が大きい程、つまりTが小さい程、吸光度Eは大きくなります。文字通り光を吸収する度合いを示す数字なんですね。
・・・あれ?簡単な解説で見た式と違いますよね?
もちろんE=ε×c×lでも同じ吸光度Eを求められます。物質の濃度cが濃い程、物質を通過する距離lが長い程、光が減弱し吸光度Eは大きくなります。ちなみにεは物質特有の定数になります。
色の見え方と光の関係
世の中の物質は、光を当てると特定の色を吸収します。
例えば真っ暗な空間に赤いリンゴをおきます。
白い光を当てれば赤く見えます。赤い光を当てればやっぱり赤く見えます。
一方で青色や緑色の光を当てると、何色に見えるでしょうか?
不思議なことに黒く見えるんです!
赤色のリンゴは、赤色以外の光を吸収するためこのような現象が起こるのです。ちなみに青リンゴ(黄緑)であれば紫色の光で黒く見えます。
臨床化学と吸光度
臨床化学の反応には無色透明の硝子容器であるセルを用います。
同じ2つのセルにそれぞれ①無色透明の液体②青色透明の液体が入っているとします。オレンジ色の光を当てると反対からどのように見えるでしょうか。
①は元のオレンジ色の光が見えますね。
②はオレンジ色が青色に吸収されて①より光が弱くなります。
青色が濃くなれば濃いほど、オレンジ色の光はより吸収されます。
つまり吸光度が高くなるのです。
臨床化学への応用
患者血清に測定項目の検査試薬を混ぜると、化学反応により色が変わります。例えば蛋白質の試薬を混ぜると青色になります。蛋白質濃度が高い程、濃い青色になります。
ここにオレンジ色の光を当てて吸光度を測定することで、蛋白質を計算しているのです。
臨床化学ではこの原理を利用して
①蛋白質のよう単純に色の濃さだけを見るもの
②1分間の色の変化量を見るもの
③濁った試薬を反応させて透明に近づけるもの
色々な測定方法があります。
項目によって特性を活かして選択しています。
吸光度の欠点
このように吸光度は臨床化学を考える上で重要です。
すごく便利な原理なわけですが、欠点もあります。
欠点①血清に色や濁りが付いている場合、吸光度がバグる。
頻度的には中性脂肪たっぷりの乳びがあります。通常の血清は黄色透明です。が、食事や脂質異常では血清中性脂肪が増えて牛乳のように濁ります。光を当てると乱反射して透過しないため、吸光度が爆上がりします。欠点②変な化学反応を引き起こす成分で吸光度がバグる。
薬そのものや、病気で発生する特殊な成分が化学反応に干渉することがあります。その結果、色の変化や濁りが起こり正しい吸光度を得られません。
検査データで異常なものを見た場合は、病気による影響だけでなく、このようなバグも念頭におく必要があります。
というわけで今回はここまで。
終盤から少し難しくなってしまいましたかね。。。
それでも最後までご覧下さりありがとうございました!
また次の記事でお会いしましょう!
臨床検査技師のあきまるでしたノシ