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国家試験から学ぶ!臨床検査技師の仕事③ -尿に出てくる円柱って何!?の巻-

こんにちは!
臨床検査技師のあきまるです!

今回の問題は
第69回臨床検査技師国家試験問題の4問目
です!Let's Go!


問題

尿沈渣の無染色標本とSternheimer染色標本を示す。この構造物はどれか。

※画像は別冊pdfの5ページを参照

1.硝子円柱
2.顆粒円柱
3.脂肪円柱
4.上皮円柱
5.赤血球円柱



簡単な解説

棒状の成分の中に丸っこい成分がたくさん入っていますね。

細長い成分

境界が明瞭で中身が均一です。S染色で水色に染まっています。この特徴をもつ成分は硝子円柱です。

丸っこい成分

表面はゴツゴツしておりひとつひとつの境界は粒々した感じです。S染色では赤紫に染まっており、一部成分内には青色の点(細胞の核)があります。この特徴をもつ成分は尿細管上皮細胞です。


解答

硝子円柱に上皮(尿細管上皮細胞)が3個以上入っているため
4.上皮円柱が正解になります。


裏解答

円柱の特徴と、円柱内の成分を知っておこうね!という問題です。

ところで円柱とはどのような成分か説明できるでしょうか。

細長い棒状の成分?じゃあ長いってどのくらい?
真っすぐじゃないけど、少し湾曲しているのはどう?じゃあ折れ曲がってるのは円柱じゃないの?

意外とキチンと説明するのって難しいですよね。

そこで一度円柱のカタチ(形態)を調べてみました!

典型的な形態は両端が丸みを帯び, 長辺が平行な円柱状であるが, 屈曲, 蛇行, 切れ込みのみられるものまで種々なものがある。かつて類円柱と呼ばれていた先端が細くなっている成分も硝子円柱とする。形態的特徴は均質, 無構造なものからシワ状, すじ状のものまでみられる。

医学検査 66巻 第2部 尿沈渣検査

文字だけだとイメージしにくいため、フローチャートも見てみましょう。

フォトアンケートから得られた典型的な硝子円柱判定基準の確立:医学検査 Vol.63 No.3 2014

このフローチャートに従って円柱か否か判断していきましょう。
ちなみに今回の問題では

✓円柱平行部分の長軸径が短軸系の2倍以上 yes
✓辺縁(円柱基質)が明瞭である yes
OK!これは円柱!

というフローになります。

このような円柱ですが、ベースとなるのは硝子円柱といいます。
硝子円柱に3個以上の成分があると、〇〇(成分の名前)円柱になります。
また粒粒(顆粒)が硝子円柱の1/3以上を占めると顆粒円柱になります。
成分1個で〇〇円柱とするパターンもありますが後々解説します。

従って問題の画像を確認すると

円柱内に3個以上の尿細管上皮細胞があるから1.硝子円柱は違う
顆粒成分や赤血球がないから2.顆粒円柱と5.赤血球円柱も違う
脂肪滴3個または卵円形脂肪体(脂肪の塊)がないから3.脂肪円柱も違う

ということで他の円柱は除外されます。

余談

尿沈渣検査とは

尿沈渣検査では尿中の有形成分の有無を確認します。
10 mLの尿を500G 5分で遠心分離して有形成分を沈殿させます。
上清を廃棄して0.2 mL残します。これをそのまま或いは色を付けて顕微鏡で観察します。要するに尿を50倍濃縮して変な成分がないか探す検査です。

尿沈査で観察される成分は

①非上皮細胞:血球成分(赤血球や白血球)
②上皮細胞:腎臓・膀胱・尿道周囲の細胞
③円柱類
④塩類・結晶類
⑤細菌・真菌・寄生虫
⑥混入物:トイレットペーパー線維や花粉

に分類されます。これらを探して数を数えて検査結果として報告します。

腎臓の機能と円柱の形成

腎臓は血液を濾過して尿を作るという仕事をします。
腎臓内の糸球体(毛玉状にからまった細い血管)で濾過された血液は原尿となります。続く尿細管という細い管で濃縮・希釈を受けながら尿として腎臓から流れ出て膀胱に溜まります。

今回の問題で対象となった円柱類は、腎臓の尿細管(遠位尿細管)で形成されます。尿細管は真っすぐの部分もあればクネクネ曲がってる部分もあります。形成される場所によって円柱はクネクネした形になるのです。
※国家試験ではあからさまな真っすぐな円柱しか出ないと思います。多分。

硝子円柱は基本的に健康な人の尿にはでてきません。但し、激しい運動等による脱水なんかで一時的に出てくることがあります。
病気との関連としては早期腎症の発見になると考えられていますが、まだデータがキチンと揃いきっていないとう現状です。今後の報告に期待したいですね(謎の上から目線笑)。


というわけで今回はここまで。
最後までご覧下さりありがとうございました

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