国家試験から学ぶ!臨床検査技師の仕事① -採血管で検査値が変わる!?の巻-
人生2度目のnote投稿です。臨床検査技師のあきまるです。
おおまかな流れですが、
・問題
・簡単な解説
・解答
・裏回答
大体こんな感じで進めていきます。なお、画像問題は著作権でもめると嫌なので、類似画像あるいはイラストでお示しします。また間違ったことは言えないので、私の得意分野や勉強している所のみ取り扱います。ご了承下さい。
では、第69回臨床検査技師国家試験問題の1問目!Let's Go!
問題
EDTA-2K採血管で採取した血漿を用いた場合、測定値が血清より高くなるのはどれか。
1.ALP
2.Ca
3.CRP
4.Mg
5.TP
簡単な解説
論点は血清と血漿の違いとEDTA-2Kの特徴です。ここでは前者を見ていきましょう。後者は裏解答で解説します。
血漿って何?
血液は、大きく個体と液体に分かれます。個体は赤血球や白血球、血小板です。細胞成分ですね。個体を全て取り除くと血漿となります。血漿にはミネラルや蛋白質の他に様々な成分が溶けています。
血清って何?
血漿から血液を固める成分を取り除いたものです。この成分とはフィブリノゲン(繊維素)という蛋白質です。
解答
血清は血漿からフィブリノゲンを除いたもの。
つまり血漿は血清と比べて蛋白質が多くなります。
従って解答は5.TP(総蛋白)になります。
裏回答
①EDTA-2Kが直接関与するもの
EDTA-2Kは2価の陽イオンを捕まえて取り込む作用があります。つがいになると、オスを食べちゃうメスのカマキリみたいですね。2価の陽イオンには、Ca(カルシウム)やMg(マグネシウム)、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)があります。
従って、EDTA-2K血漿では2.Caと4.Mgが血清と比較して低くなります。
②EDTA-2Kが間接的に関与するもの
ALP(アルカリホスファターゼ)はアルカリ環境下で基質という成分に結合したリン酸をはがす酵素です。2価の陽イオンではありません。では関係ないかというと…実は低くなります。秘密はALPを測定する過程にあります。
ALPの測定原理は
①血清と基質(p-ニトロフェニルリン酸(pNPP))を混ぜる
②pNPPのリン酸がはがれて黄色のp-ニトロフェノールができる
③黄色の濃さを数値化してALP検査値とする
です。実は②の反応を進めるために2価の陽イオンであるMgが必要になります。Mgが少ない(無い)と反応が進みにくく黄色が薄くなる=ALPが低くなります。
従って、EDTA-2K血漿では1.ALPは血清と比較して低くなります。
同様の理由で低値になる項目は同じ酵素のAMYやLAPがあります。
ちなみに3.CRPは特に影響はないとされています。
またEDTA-2KのKはカリウムです。EDTA-2K血漿でKを測定すると当然血清より高くなります。以前試しに少量の血液で試したことがありますが、元々4.0mmol/Lだったのが9.0mmol/L以上になりました。
余談
よく言われる血液検査というのは血漿ではなく血清で測定しています。健診なんかでよく聞く腎機能や肝機能、脂質の検査ですね。
「え?血清?なにそれ?先生!血漿と言い間違えてますよ!」
大学1年生の自分はこんなでした。
・なぜ血漿ではなく、血清を測定に使うのか。
・EDTAは一体何に使うのか。
この辺りはおいおい記事にしていきます。
いきなり長い記事だと疲れますからね…。
ということで、本記事はここまで!
最後までご覧下さりありがとうございました。