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国家試験から学ぶ!臨床検査技師の仕事⑤-写真で見分ける寄生虫の卵!の巻-
こんにちは!
臨床検査技師のあきまるです!
今回の問題は
第69回臨床検査技師国家試験問題の6問目
です。
2問続けて寄生虫です!今回は画像問題ですね。
それではLet's Go!
問題
61歳女性。有機農業従事者。腰痛で来院し、虫卵検査を行った。糞便の直接塗抹標本(6ページ)を示す。考えられるのはどれか。
1. 回虫卵
2. 鉤虫卵
3. 条虫卵
4. 鞭虫卵
5. 横川吸虫卵
簡単な解説
虫卵の特徴を見てみましょう!
色:黄褐色
大きさ:単軸約40μm 長軸約50μmの楕円
構造:外側から①境界不明瞭な濃い色の輪郭②無色の層(卵でいう白身)③中心にモコモコしたかたまり(卵の黄身?)
さあ、どうでしょうか。
解答
この特徴を持つものは、回虫の虫卵です。
従って正答は1. 回虫卵になります。
裏解答
前回と同じ寄生虫の問題です!
画像問題はなんとなーくの知識で解答するのは厳しいです…。ニュースで画像として扱う寄生虫は、せいぜいアニサキスくらいです…。
ということで正しい知識がないと正答できません。身も蓋もない言い方をすれば覚えゲーです。頑張って教科書やネットで調べて下さい
・・・と、突き放すのも非情なので私なりの覚え方を五・七・五でお伝えします。選択肢の順に見ていきましょう!
なお参考資料として、各自の教科書・参考書あるいは愛知県臨床検査技師会が発行するリーフレット(pdfがダウンロードされます)をご覧になってください。
1.回虫卵
外側が 金平糖の 回虫卵
卵の殻が綺麗でなくデコボコした金平糖のような感じが特徴です。
受精卵と不受精卵で形態が異なります。受精卵の黄身は一塊、不受精卵は油滴のように粒粒しています。今回の画像はおそらく受精卵ですね。
2.鉤虫卵
透明な ペラペラ殻の 鉤虫卵
卵の殻が薄いのが特徴です。黄身は成長するにつれて分裂していきます。
鉤虫にはズビニ鉤虫やアメリカ鉤虫がありますが、卵の区別は困難です。
3.条虫卵
条虫といってもいくつか種類があります。ここでは2種類紹介します。
①テニア:無鉤条虫・有鉤条虫・アジア条虫
外(そと)放射 中身六鉤 テニア属
正円に近い楕円で、外側は褐色で放射状模様が見られます。”むこうじょう(工場)ちゅう”という読み方から、工場で規格に合うよう綺麗に作られた円に見える、と覚えました。
黄身には六鉤幼虫という6本の線が見えます。
②(日本海 / 広節)裂頭条虫・複殖門条虫
片側に 小さな蓋の 日本円
出現頻度的に日本海裂頭条虫の名前を入れました。
正円を少し引っ張ったような楕円で、先端に小さな蓋(小蓋)をもつのが特徴です。実際に検査していると、感染者の便中には非常に沢山の卵が出てきます。また同時に、きしめん状の虫体が肉眼的に検出されます。
4.鞭虫卵
両端に 無色の蓋だ 鞭虫卵
カヌーあるいはレモンのような形をしています。先端には前後ともに無色透明の蓋があるのが特徴です。
5. 横川吸虫卵
茄子に似る 横川吸虫 黄褐色
黄褐色で楕円形の小さな卵です。ものによってはヘタがついた茄子のように見えます。
余談
国家試験的には写真を見て、どの寄生虫の卵か当てられれば良いです。
できればそれそれの生活史を把握できれば良いですが、厳しいですよね・・・。
偉そうに記事を書いている私ですが、実際に顕微鏡で虫卵を見ても、すぐにこれだ!と断言できるものは少ないです。卵に限らず、寄生虫の本体を見ても悩みます。恐らく現場で働いている臨床検査技師の100人に1人が寄生虫に詳しい人がいるかどうかといったレベルです(個人の感想)。これは日本国内の衛生環境が非常に良くなり、寄生虫感染者数と検査数が激減しことに起因します。
とはいえ寄生虫症例が0件になったわけではありません。日本国内だけでも感染者はいます。代表的なのは生魚によるアニサキスですね。2016年には豚の肝臓を生で食したことによるアジア条虫の症例もあります。
日本人の海外渡航や外国人の往来によって、今後も寄生虫感染は発生します。医療の特に検査に携わる者としては最低限の知識をもっておきたいですね。
全然話がそれますが、漫画家の長谷川町子さんが『サザエさん』を連載する前に『似たもの一家』を連載していました。今から70年以上前の1949年のことです。この連載の中で、サザエさんの『ノリスケ』そっくりの『のん助』というキャラクターがいるのですが、彼のお見合いの回の中のセリフで回虫が出てくるのです。
お見合い相手「(雑踏の中で)あの・・・懐中にご用心あそばせ」
のん助「やや!あなたもでましたか!」
お見合い相手がスリに気を付けるよう気遣ったつもりが、のん助は『懐中』を『回虫』と勘違いする。帰宅後のん助は相手を下品な人だと愚痴をこぼすという、まるで在りし日のアンジャッシュのような掛け合いですね(笑)
でも、それだけ当時はありふれた感染症だったのかもしれませんね。
というわけで今回はここまで。
最後までご覧下さりありがとうございました