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東京では18年ぶりの回顧展!    佐伯祐三「自画像としての風景」備忘録


東京ステーションギャラリーの入り口

2023年1/21~4/2まで東京駅の東京ステーションギャラリーで佐伯祐三展をやっていました。金曜日の夜は、20時までやっているので行ってきました。

本格的な佐伯祐三展は、2005年の練馬での開催以来との事です。
あれから18年も経ったのか…と感慨深いです。
さて、展覧会ですが、100点以上の絵が出品されていて、かなり見ごたえがありました。重たいですが、図録も購入してきました。

いろいろ考える事がありますが、まずは頭をクリアにして感じるままに見て行きました。それで得られた感想は、以下の通りです。

  1. 絵の四隅に絵具が塗られていない作品が目に付く

  2. サインがある作品が少ない

  3. モランの寺5作品のうち1作品だけ白が異様に白い

一般的には四隅に絵具が塗られていないとかサインがないというのは作品として完成していないものと判断すると思います。四隅に絵具が塗られていないのに絵の中央部はかなり細かい線できちんと描いているので、そのアンバランスがとても気になりました。
サインに関しては、今回展示された若画きの自画像7点中1点にしかサインがないので、佐伯はもともとサインをしない人なのかも知れません。あるいは、本当に気に入ったものしかサインしなかったのかも知れません。
サインは「SAEKI」と書いたものが何点か見えますが、佐伯の書簡を見ると晩年の1928年まで自分の苗字を「SAIKI」あるいは「SAHEKI」と書いています。この違いは不思議です。

モランの寺の白に関しては、1点だけ本当に「異様」に白かったです。他の絵のくすんだ白ではなくクリアな白でした。これはもしかして「チタン白」を使用していたのではないでしょうか?

上の疑問点に関してご存じの方がいればぜひご教授下さい。

さて、日本の画家としてとても有名で人気のある(お客さんを呼べる)佐伯祐三の展覧会をなぜ18年も東京で行わなかったのでしょうか? 
私は真贋事件のほとぼりを覚ますため、その「風化」を狙ったのだ思います。1990年代中頃からメディアで話題になっていた「佐伯祐三真贋事件」は2005年に練馬区立美術館で開かれた展覧会の当時はホットな話題(口には出さないにしても実際どうなの?という疑問)となっている印象でした。

それまで佐伯祐三の第一人者と言われていた朝日晃氏が2016年に死去し、
今回の展覧会では、その影も見当たらない状況でした。時代の移り変わりを感じるとともに真贋事件に関する関心も無くなっているようで、ひとまず「風化作戦」は成功したと言えるでしょう。

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