余り物の私的極上スープ
当店では定期的に野菜のピクルスを作っています。先日は無農薬・無化学肥料の小蕪を使って作りました。しっかり泥のついた小蕪を洗うのはなかなかに時間がかかり、洗うまでは正直なところ毎回億劫になったりもするのですが、きゅっと締まった小蕪を洗い始めるとそれなりに楽しくなります。
きちんと手をかけて作られた野菜は余すところなく食べたいという欲望の赴くままに、お客様にはご提供できない部分をスープにします。蕪の葉の根元と根(胚軸)の上部の、通常なら捨ててしまいがちな部分を集めて洗い、胚軸の黒い筋が入っていてピクルスに使えない部分も加えて、水、塩、生姜のスライスを1枚・ワクチンや抗生物質無投与の鶏のもも肉1切れとともに蒸し器でじっくり蒸して作ったスープです。
しっかり柔らかくなった蕪と鶏肉。消化がよく脾胃を労り温め、五臓の円滑な働きを助けるスープ。少し疲れて冷えた体に染み入ります。何より蕪と鶏肉、生姜の風味が調和し、調味料が塩だけとは思えない美味しさです。
見た目は良くないですが、蕪の葉と根(胚軸)の、栄養と美味しさのいいとこ取りです。一番手間がかかるのは、野菜の泥を綺麗に掃除すること、これに尽きます。
せいぜい1〜2人分程度しか作ることができず、見た目も悪くお客様にご提供することはないでしょうが、この素朴なスープの風味の延長線上に、当店でご提供するお食事やおやつがあるようにと気持ちを新たにします。
きっと先日、牛骨と鶏肉で丁寧に作られた化学調味料を一切使用しないコムタンスープを飲み、手間暇をかけた仕事ぶりがわかる素朴な味付けの、韓国薬膳の考え方が活きている家庭料理が食べられる店が自分の住む街にあることのありがたみを噛み締めながら、触発されたのかもしれません。
当店は国産紅茶専門の喫茶店ですが、ご提供するお食事やおやつは、上記のように素材の持ち味が、素朴ながら豊かに感じられるようにと考えながら作っています。