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なぜ若者は結婚しない?ーー自由すぎる社会で崩れた「結婚は恋愛のゴール」という「常識」

導入

恋愛と結婚は本来、まったく性質の異なるもの。刺激やときめきを重視する恋愛と、安らぎや相互協力を求める結婚では、脳内のホルモンすら異なるのです。にもかかわらず、戦後日本には「恋愛のゴール=結婚」という価値観が強く根付き、これが少子化や未婚率上昇を加速させている可能性が指摘されています。本記事では、恋愛と結婚のギャップがどのように生まれ、その背景と影響をどのように捉えるべきかを探っていきます。自由すぎる社会で生まれ育った若者が、結婚を「避けるor遅らせる」のは、恋愛は「自由」、結婚は「不自由な契約」というギャップがあるからです。


第1章:戦前・戦後でガラッと変わった「恋愛と結婚」の位置づけ

戦前の結婚観
・戦前の日本では、家制度(家督相続)が強く、結婚は個人の意思よりも「家同士の結びつき」「家を存続させる手段」としての性格が非常に強かった。
・「恋愛結婚」よりも、「見合い結婚」のほうが主流。
・恋愛は「結婚の前提」というよりは、「結婚とは別のもの」として捉えられることが多かった。

戦後の大きな転換
・戦後、GHQの影響や民主化によって家制度が廃止され、個人の自由意思による結婚(恋愛結婚)が理想視されるように。
・同時に、欧米的な「ロマンティック・ラブ」文化が普及し、“恋愛の延長線上に結婚がある” という価値観が社会全体に広まった。
・これがいわゆる「恋愛結婚は素晴らしい」「結婚は恋愛を完成させるもの」という“恋愛のゴール=結婚”という神話の誕生につながった。


アイザック

「戦前の日本では結婚は家同士の契約が基本でしたね。個人の恋愛感情で結婚を決めるのではなく、“家の存続”が第一だった。恋愛自体は結婚とは別物というか、隠れてするか、あるいはタブー視された部分が大きかったんです。」

アルベルト
「そうそう、戦前は 『見合い婚』 が王道。家同士の利害が合えば結婚決定で、本人の“好き嫌い”なんて二の次。で、戦後になるとGHQの影響で家制度が廃止され、個人の自由が認められた結果、“恋愛”が前面に出て『好きな相手と結婚』って流れが理想化されたわけだよ。」

アイザック
「特に戦後日本は、アメリカ文化や映画から影響を受けて、“ロマンティックラブ” が当たり前だとされました。『恋愛=自由、かつ結婚でハッピーエンド』という物語が浸透したんですね。」

アルベルト
「ただ、こうして“恋愛の延長が結婚だ”と当たり前に思う風潮こそ、実は時代の産物ってことだよな。伝統社会の見合い婚と真逆だし、欧米のロマンティックラブをそのまま取り込んだもんだから、現代社会とのギャップがいろいろ表面化してるのさ。」


第2章:「恋愛=自由」「結婚=不自由」という2つの性質がごっちゃになってる

2.1 恋愛は“本能と欲求”、結婚は“社会契約”

恋愛=自由、結婚=義務 という二律背反

・従来は家同士の契約としての結婚だったが、戦後は「好きな相手と結婚する」のが当たり前という認識にシフト。
・ただし、結婚には戸籍上の手続き、経済的責任、親族との関係などの“義務的側面”が伴う。
・恋愛は "本能と欲求に従った比較的自由な関係" に近いが、結婚は “法的拘束” “経済的責任” という社会的契約の要素が濃い。

アイザック
「ここがポイントですね。恋愛は“好きになって付き合う”という個人的欲求の自由さが強い。対して結婚は “法的拘束”や“経済的責任” など、“社会的契約”の側面が濃厚。ある意味、両者は本来相反する概念かもしれません。」

アルベルト
「それなのに『恋愛のゴールが結婚!』って言われるから、皆が “ドキドキ” から “安定” に移行するときに違和感が生じるわけだ。“燃え上がる恋愛ホルモン”と“長期的な絆・家庭ホルモン”は別物だから、そりゃバランス取るのが難しいよな。」


2.2 高度経済成長と性別役割分業

戦後の高度経済成長期~バブル期の結婚観

・戦後から高度経済成長、バブル期にかけては、社会全体が右肩上がりの経済成長を続け、人々が「結婚して家を持ち、子どもを育てること」を自然に選びやすい環境にあった。
・「寿退社」「専業主婦」モデルが一般的で、男女ともに「結婚=幸福の象徴」と捉える人が多かった。
・しかしこの背景には「男性が安定した収入を得られる」「女性が家事・育児を担うことができる」という性別役割分業の前提があった。

バブル崩壊以降~現代

・バブル崩壊、グローバル化、非正規雇用の増加、女性の社会進出などを経て、経済環境が不安定化。
・そのため「結婚して家族を持つ」ことのコストが上昇し、また「男女双方が働いていないと生活が成立しない」ケースが増えた。
・それでも社会の根底には「恋愛して当たり前のように結婚すべき」という圧力が残っており、恋愛と結婚の間にあるギャップに苦しむ人も増加。
・結果として「結婚しない(できない)」選択をする人や、「結婚しなくてもいい」と考える人が増え、少子化や未婚率の上昇につながっている。

アルベルト
「戦後~バブル期には、男が会社で稼いで女が家庭を守るって役割分業が成立してたから、『恋愛で盛り上がって結婚→男が養う→女は家事育児』がなんだかんだ上手く回ってた。だけど、バブル崩壊後の不況や女性の社会進出で、その構図が崩れ、『恋愛→結婚』がハードル上がりまくり。」

アイザック
「そうですね。専業主婦モデルが当たり前ではなくなり、男女双方が働いてないと生活が苦しい。だから『結婚はコスパ悪い』と感じる人も増える一方、『でも恋愛だけは続けたい』という自由志向が残っている。結果、“結婚離れ”や“少子化”に拍車がかかると。」

アイザック
「ここでロマンティックラブのイデオロギー、つまり“恋愛のゴールが結婚”という物語が、現代では歪みを起こすというわけです。」

アルベルト
「簡単に言えば『付き合ってるうちは楽しくても、結婚して責任背負うのは嫌』と若者が思うのは当然。だけど社会はまだ“恋愛=結婚”と刷り込むから、個人が余計に混乱するんだよな。」


第3章:男女の性欲・本能と「結婚」とのズレ

3.1 恋愛期ホルモン vs. 結婚期ホルモン

恋愛期のホルモン
ドーパミン:快感ややる気を高める、報酬系を刺激するホルモン。恋愛初期の興奮・トキメキに関与する。
ノルアドレナリン:神経を高揚させ、心拍数や血圧を上げる。いわゆる“ドキドキ”感をもたらす。

結婚期のホルモン

オキシトシン:愛着や信頼、安心感をもたらす。出産・育児などにも関連し、「絆ホルモン」と言われる。
バソプレシン:水分調節や血圧調節に関わるが、対人関係においても親密さや忠誠心と関連するとされる。

アルベルト
「さらに“ホルモン”視点で言えば、恋愛=ドーパミンやノルアドレナリンでトキメキを感じる短期的な興奮。結婚はオキシトシンやバソプレシンで安定・安心を重視する長期的な絆。ここで生物的に“テンションの落差”が激しいのは当然だ。」

アイザック
恋愛時代の燃え上がりを永遠に続けるのは難しい。だからこそ昔は“親や家の意向で結婚を決める”手法があったとも言えます。つまり“感情より社会制度を優先”させる仕組み。その方が合目的だったわけですね。」


3.2 生物学的非対称:女性は安全重視、男性は量重視?

本能と社会的契約の衝突
・生物学的には、男性は「より多くの遺伝子を残そうとする(複数パートナーを求める)」女性は「より良い遺伝子や安定した環境を確保しようとする」――といった本能的傾向があるという話がある。
・一方、結婚制度は「他の相手を選ばない」「相手の生活や子育てを支える」という排他性や責任を伴う制度のため、男女ともにある程度生物的本能に逆行する部分を抱えがち。
・この逆行感制約感が「結婚したくない」「結婚するメリットが見えない」という若年層の心理につながることも多い。

アイザック
「一部の進化心理学説だと、男性は “より多くのパートナーを求める”、女性は “安全や優秀な遺伝子を求める” という本能的傾向が指摘されていますよね。」

アルベルト
「そう。“広く種をまきたい男” と “確実に良いパートナーを厳選したい女” って構図。で、結婚制度はそれを無理やり均す仕組みだと。

ところが自由恋愛が進めば、男は短期的に複数女性を狙いたくなり、女は女で“ハイスペ男”に集中する。結果、格差が広がって“結婚しない人”が増えるんだ。」

アルベルト
「こうして見ると、“恋愛=本能の自由” “結婚=社会の制限” って関係がいかに嚙み合わないかって分かるよな。しかも、昔みたいに『女性は結婚しないと生活できない』わけじゃなくなったから、ますます結婚が敬遠されるわけだ。」

アイザック
「ええ。つまりロマンティックラブ・イデオロギーで『恋愛が結婚に結びついて幸せ』なんて言われても、実際の本能や社会事情では“そう簡単じゃない”という、歪みが生じているわけですね。」


第4章:社会構造の変化で「恋愛→結婚」がますます難しくなる

4.1 経済的安定が得られない若者

経済的負担・リスク
結婚は、家賃・教育費・生活費など、家族としての固定費が増える。非正規雇用や低賃金労働者が増えている中で、「結婚して家庭を持つ余裕がない」と感じる層が厚くなった。

結婚への意識の変容
・若年層に限らず、「結婚したら一生同じ相手としか性的関係を持てない」という束縛を重く感じる人が増えた。
・SNSやマッチングアプリの普及で、恋愛をする機会自体は増えているが、「わざわざ結婚にまで踏み切らなくてもいいのでは」と思う人もいる。

アルベルト
「今の若者って非正規雇用や低賃金で将来不安すぎだろ。結婚なんて高コストだから『どうせなら恋愛止まりでいいや』『そもそも恋愛すら面倒』になるわな。恋愛の先に結婚があるって神話がズレまくり。」

アイザック
「高度成長期と違い、年功序列・終身雇用が崩壊。男性が一馬力で養うのも厳しく、女性も働き続けるのが当然になった。恋愛と生活費の競合がリアルです。『恋愛後に結婚して専業主婦に…』というモデルは今や贅沢になってしまいました。」


4.2 個人主義・自己実現志向の高まり

恋愛と結婚の乖離
・「結婚は恋愛の延長」という認識がズレを生み、恋愛感情のフェーズが去ると「こんなはずでは」となりがち。そもそもこのズレを知っている若者は、最初から結婚を回避する。

人生100年時代の価値観の変化
・結婚・出産・子育ては人生のかなりのエネルギーを要する。一方で、人生が長くなり「自分のやりたいことに時間とお金を使いたい」という人が増えている。「家族を築くメリット」と「自分の自由やリソースを守るメリット」を天秤にかけ、後者を取る人が増えれば少子化・未婚は進む。

アルベルト
「さらに『自分の人生だから好きに生きたい』って個人主義が強まった。昔のように“家のために”結婚しろとか、“子どもこそ人生のすべて”と押し付けにくい時代。『恋愛は欲しいけど結婚は責任重いし嫌』って人が増えるのも当たり前だ。」

アイザック
「自由恋愛はロマンだけど、実際の結婚の責任やコストが見えると『そこまでする必要ある?』と疑問を持つ。ロマンティックラブの神話が“重荷”に化してる面もありますよね。」

アイザック
「要するに、恋愛という自由な世界と、結婚という社会契約は本来齟齬がある。そのギャップを埋められるだけの経済力や社会的仕組みが崩れた今、みんな『恋愛→結婚』に違和感を感じてるわけです。」

アルベルト
「そうだ。んでもって“結婚しなくてもいいじゃん”って人が続出して少子化が加速。「恋愛のゴールが結婚」というロマンティックラブ幻想は、そろそろ限界を迎えているわけだな。」


第5章:恋愛と結婚が乖離する根本――「ロマンティックラブの神話」の実態

5.1 なぜ「恋愛のゴール=結婚」は歪みを生むのか

アルベルト
「繰り返すが、恋愛ってのは刺激・ドキドキが醍醐味だろ? 結婚は安定・責任だ。両方を一度に満たせるのが理想だけど、現実じゃ『刺激』と『安定』はそう共存しねえんだよ。」

アイザック
「特に長い結婚生活では、“ときめき”より“協力・信頼・絆”が必要です。

ところがメディアや恋愛ドラマでは “燃え上がる恋が結婚に直結してずっと幸せ” と描かれがち。

これは人々に過剰な期待を抱かせ、『結婚してもドキドキや恋愛感情がずっと続くはずなのに続かない…この人は私の理想のパートナーじゃない?』と落胆・失望を生む構図ですね。」


5.2 恋愛で選ばれても、結婚で幸福になるとは限らない

アイザック
「実際、恋愛で燃え上がりやすい相手って、結婚生活には合わないケースも多々あります。自由恋愛で“惚れた相手”と結婚した結果、経済観念が合わなかったり、育児の分担で揉めたり……要は“恋愛”と“生活”のスキルセットは別物です。」

アルベルト
「そんでもロマンティックラブ・イデオロギーに縛られてるから、『好きな人と結婚するはず』と信じて疑わない。じゃあ離婚率も上がるし、そもそも“結婚に夢を見れない”若者は『最初から結婚しないでいいや』ってなってくる。」

アルベルト
「ここまで来ると、マジで“恋愛のゴールが結婚”って発想自体が幻想だって分かるよな。恋愛は恋愛、結婚は結婚で目的が違うのに、無理やり同じ線上に置いた結果、その歪みがいろんな問題を引き起こす。」

アイザック
「そうですね。昔みたいに恋愛禁止で見合い結婚なら矛盾は少なかったし、現代みたいに『とにかく恋愛を楽しもう』なら“結婚”は必須じゃない。中途半端に恋愛と結婚をくっつけすぎたのが歪みの原因でしょう。」


第6章:今後の道筋――ロマンティックラブに代わるパートナーシップのカタチ

6.1 “恋愛は恋愛”、“結婚は結婚”と割り切る

アイザック
「一つの考え方として、恋愛と結婚を明確に切り分けることです。すなわち、恋愛は欲望や感情を楽しむもので、結婚は家族や経済的協力をする仕組み――と認識する。ロマンチックラブの神話を相対化して、『必ず好きな人と結婚しなくていい』とするのが一案。」

アルベルト
「そりゃあ結婚をビジネスライクに捉えてもいいわけだし、“恋愛は自由に楽しむ ”けど “結婚は家を持つための契約” みたいに割り切るペアも出てくるかもな。伝統回帰でも何でもなく、むしろ近未来の合理主義と言えるかもしれん。」


6.2 法整備・社会保障のアップデート

アルベルト
「結婚しなくても子どもを産み育てられる制度、事実婚や週末婚への法的サポートなど、いろんな形態を認めて少子化対策するのもアリ。だが今の法制度は“夫婦同姓” “戸籍上の婚姻” に強く依存してるから、柔軟さが足りねえ。」

アイザック
「もし“恋愛と結婚が本来別”なら、必ずしも結婚をしなくても子育てできる社会がいいでしょう。それが逆に “ひとり親支援” “共同養育” など、さまざまな仕組みを拡充することにつながるかもしれませんね。」


6.3 結婚したい人には夢を、結婚しない人にも安心を

アイザック
「ロマンティックラブの価値観を完全に捨てる必要はないんです。結婚が夢や希望を与える面もある。ただ、それが万人に当てはまるわけではないから、“結婚=幸福の唯一の道”とは言わずに、多様な生き方を尊重したほうがいい。」

アルベルト
「そうだな。“結婚こそゴール”って押しつけると、そこにのれない人が苦しむ。そして“恋愛もしない”選択をした人に対する社会の圧力も生まれる。要は『みんな自由にすれば?』で終わるのもアリだが、同時に『じゃあ少子化どうすんだ』って国の課題があるわけだ。」


第7章:まとめ

アイザック
「では、これまでの議論を総括します。ざっくり言えば、

  1. 戦前は家制度で結婚を強制、戦後は恋愛結婚のロマンを押しつけ

  2. でも恋愛(自由)と結婚(不自由)は対立概念に近い

  3. 男女の性欲や本能の違いもあり、“恋愛→結婚”が上手くいかず未婚・少子化が深刻化

  4. 解決には“恋愛と結婚を別物と理解し、制度や社会のアップデートを” 」

アルベルト
「要するに『恋愛のゴールが結婚』なんてのはロマンティックラブ神話が生んだ幻想だと。実際には刺激的な恋愛と長期的な結婚は両立しにくいし、近代以降の価値観はもう限界に来てるってわけだ。そりゃ“恋愛しない人が増える”“結婚しなくていいや”ってなる。」


7.2 今後の展望

アイザック
「少子化や家族制度の崩壊を懸念するなら、結婚一択にこだわらない育児支援や、恋愛を必ずしも結婚と結びつけない多様なパートナーシップを認める社会づくりが必要かもしれませんね。」

アルベルト
「そうだ。むやみに“恋愛結婚最高!”なんて叫んでても苦しむ奴が増えるだけ。“恋愛は恋愛で楽しむ”のもアリ、“結婚は結婚の別の価値”があることをお互いわかっておいたほうが気が楽になる。まあ難しいが、そこに気づき始めた今がちょうど転換期ってわけだ。」


おわりに

アルベルト
「結局、『恋愛のゴール=結婚』っていうロマンティックラブのイデオロギーが歪みを生んできたんだな。なんでもかんでも恋愛感情が持続すると思ったら痛い目見るし、結婚はむしろ社会契約で、本能的な欲求と真っ向から衝突する面もある。」

アイザック
「そうですね。戦前なら“家のため”に結婚する仕組みがあって、戦後は“自由恋愛が当たり前”になり、今や『恋愛して結婚しない』選択も普通になりました。つまり恋愛と結婚は本来別物なのに、無理に『恋愛こそ結婚への道』とされてきたからこそ、多くの人が現実とのギャップに苦しんでいるわけです。
将来はもっと柔軟な家族観・パートナー観が広がり、“結婚しないからこそ幸せな人生”や“恋愛自体を楽しみつつ結婚しない選択”などが認められていくでしょう。それこそ、ロマンティックラブ神話から解放される道と言えるのかもしれませんね。」


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