最高だった
新天地
遠距離恋愛していた彼と結婚する事になり、私は新卒から続けていた会社を辞め、地元を離れた。
地元の企業に事務職として就職し、このままずっとここにいると思っていたが、うっかり社内の営業マンに惹かれてしまったのだ。
営業には全国転勤があった。
知らぬ土地での生活、人間関係、仕事…不安しかなかった。
しかし、住めば都。生活にも慣れ、仕事を通して飲み友達もでき、蓋を開けてみれば新天地は最高だった。
面会NG
新生活にすっかり慣れてきたころ、妊娠が発覚。半年ほど前に1度流産を経験していたので、嬉しい気持ち半分と妊娠を継続できるか不安な気持ち半分だった。
順調に妊娠と悪阻が継続していく中で、いつの間にか"新型肺炎"と呼ばれていたものに"コロナ"という名が付き、日本に広まっていた。
妊婦は免疫力が弱い。
予定していた旦那の立会出産も出来なくなり、入院中の面会も家族でさえ不可能になった。
感染者数が増え、病院側も対応に追われ、検診の度に規制が厳しくなっていく。
不安な気持ちでいっぱいになった。
2020.春
幸いにも今回は妊娠を継続する事ができ、無事長男を出産。
1人寂しい入院生活...かと思いきや、翌日から母子同室➤3時間に1度の授乳を24時間営業の生活が始まった。合間に自分の食事やシャワー、授乳指導や沐浴指導等、入院生活は想像よりも忙しく、寂しさは微塵もなかった。
誰も来ないので気を遣う事もなく、ゆっくり我が子を愛でる事ができ、穏やかな時間を過ごす事ができた。
え?最高。
旦那には悪いが、私にとって面会NGは最高だった。
コロナ禍ワンオペ育児
自宅に戻り、コロナ禍での初めての育児がスタートした。
旦那の帰りは遅く、両親も近くにいないため平日はワンオペが確定していた。
育児教室や児童館、一時預かりもコロナのため閉鎖。
人と話す機会が全くなくなってしまった私は、仕事から疲れて帰ってくる旦那を捕まえ、機関銃のように一方的に話すのが日課になった。
赤ちゃんはとてつもなく可愛いが、まだ0歳の息子は「あー」とか「うー」で会話終了。
〚大人としゃべりたい...〛
日に日に想いは強くなっていった。
願いは叶わぬまま、長男が1歳を迎えた。
体力もついてきて、家で1日過ごすだけでは昼寝せず、夕方グズるようになった。
昼寝をしない=自分の時間の消滅
それは困る。
慌てて長男を近所の公園へ連れて行った。
公園には自分と同じように、コロナ禍で行き場のない親子達がいた。
〚大人としゃべりたい〛
私の1年越しの願いが、近所であっさり叶った。
私の住んでいるエリアは転勤族が多く、公園でママ達と話をしていると、皆同じようにワンオペ育児で家に引きこもり悩んでいた。
長男はとにかく寝ない子だったので、私は毎日公園へ連れ出すようになった。
毎日通っていると、徐々に顔見知りも増えていき、幼稚園に入るまで出来ないだろうと思っていたママ友もできた。
お花見をしたり、仮装してハロウィン、クリスマス会など、諦めていたイベントもママ友達のおかげで息子と楽しむ事ができた。
そして子供達も共に大きくなり、今は同じ幼稚園に元気に通っている。
私は昨年次男を出産し、同じく2人目を出産したママ友達とは兄弟揃って同級生になった。
いま私は最高に恵まれた環境にいる。
地元を出たくないと思っていた私が、縁もゆかりも無い土地に住んだら〚ここを出たくない〛と思う場所になった。
長男にいたっては、ヨチヨチ歩きの頃から一緒にいる幼馴染達がいる“ここ”が地元だと思う。
転勤になったら、長男は〚ここを出たくない〛と言うだろう。親の都合で地元を奪われたと思うかもしれない。
その時はしっかり受けとめて、次の地もまた最高だったと思えるよう行動したい。