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「ポスター」
ポスターを貼る。マスキングテープで。
でも、マスキングテープだからすぐ落ちる。
それも、僕がちょこっと目を離した隙に。
ボトッ。
あ、また落ちた。
やっと、一息ついたところだったのに。
(はぁ……、貼るか。)
膝に勢いよく手のひらを当てる。その反動で、ソファーから重たい腰を起こした。
それから、数歩進める。自分の重力を感じながら。
(きっとあの感じだと、また机の上に落ちたんだろうなぁ。)
そう思って、机に視線を向けた。
ーーでもそこに、ポスターはなかった。
「ごきげんよう。」
机に座る、あなたが居るだけで。
「え?」
僕は、思わずそうつぶやく。状況がまったく飲み込めない。
そんな僕を見透かすように、あなたは意地悪な笑みを浮かべた。
ーーー
「は!」
冷たい……。
よだれだ。自分の……。
部屋の外を覗いた。もうすっかり、暗くなっている。
なのでカーテンを閉め、電気をつけた。
もう一度、机を見てみる。
もちろん、そこにあなたはいない。
なんだかいつもより何倍も、部屋がちっぽけに見えた気がした。
(あ、そうだ。ポスター……。)
僕は、机の上のマスキングテープを手に取った。
それで、輪っかを作る。そして、ポスターの四方に貼る。あとは、曲がらないように貼るだけ。
ーーその時、あなたと目が合った。
(あれ?こんな感じだったっけ?)
その時のあなたは、あの意地悪な笑みを浮かべていた。