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なぜ統失 第7部「現代デイケア編」②認知症の精神科医✨統合失調症の目つきと表情。

前回のお話⬇️

今回は、元主治医のアタオカおじいちゃん先生について語りたいと思います。

アタオカ先生は、

腰は90度に曲がり、

乳母車を押さないと歩行する事もままならない様でした。

耳は既に遠くなっているので、

診察室には、

いつもお付きの看護師さんがいて、

まるで「船場吉兆のささやき女将」の様に、

耳打ちで色々と先生に助言をしていました。

アタオカ先生よりこのお付きの看護師さんの方がよくしゃべります。

診察の合間に頻繁に乳母車を押しながらトイレに行きます。

恐らく齢80は遠に超えて居たでしょう。

あんまり喋らないし、

たまに喋ったかと思えば、

「あれ」とか「それ」ばかりで、

トンチンカンな事ばかり言うので、

かなりボケてるなと感じていました。

ボケてるけど、

この病院で一番偉い院長先生なんです。

あまりにも喋らないので、

うちの母親が、

「院長先生は長年やっちょるんじゃけぇ、頭がおかしいかどうかは眼を見ただけで直ぐに分かる!」


「頭がおかしいかどうかは顔つきを見れば直ぐに分かるんじゃけぇ!」


と、家で言い始めました。

確かに、統合失調症独特の目つきと顔つきと言うものはありますが、

頭がおかしいかどうかは関係なく、

誰でも向精神薬を飲めば、

副作用でこういう表情になります。

(眼球が上を向く、顎が震える、表情が固まる、等)

僕もこの頃の写真を見返してみると、

どう見ても健常者には見えないおかしな顔つきをしています。

うちの母親は、

アタオカ先生に絶対の信頼がある様で、

「いつもお世話になっています、これからもよろしくお願いします」



と、よく診察の際に菓子折りを持参していましたが、

アタオカ先生は、

甘いものが嫌いなのか、

菓子折りが気に入らないのか、

何もお礼も言わず、

いつも、顎でクイッとお付きの看護師さんに指示をし、

すぐに菓子折りを片付けさせていました。

ちょっと態度が悪いなと感じました。


アタオカ先生は診察室で、

蒸気機関車のDVDを流しっぱなしにしていました。

ある日アタオカ先生が、

いきなり診察中に動画の自慢を始めました。

アタオカ先生がわざわざ中国まで行って、

1000万のカメラで撮影した物なんだそうです。

「この動画は、ええっと〜、あれ、あそこ、パソコンの…あれで売ってる」


どうやら売り物の様です。

色々と質問をして「あれ」が何処の事なのか推理した結果、

恐らく「Amazon」で売っているのではないかという事が分かりました。

家に帰ってから調べてみると、

ちゃんと売っていましたよ!

ちなみに評価は一つも付いてませんでした(笑)

こんなもん誰が買うってんだよ…

(もう売ってません)


退院してから暫く経ったある日の診察、

「えぇ〜、ベゲタミンが製造中止という事で出せなくなったので、代わりに別の薬を処方します」


と、アタオカ先生が言いました。

するとお付きの看護師さんが、

「同じ効果の薬があるから安心してね」


と、フォローを入れました。

ベゲタミンの代わりに2種類の薬が追加されました。

ベゲタミンは3種類の異なる成分の薬をかけ合わせた、

強力な向精神薬なのですが、

別々にそれぞれの成分の薬を処方する事で、

ベゲタミンと同じ効果を再現する事が出来ます。

最強の睡眠薬と言われていました。

頭がぼぉ~っとして動けなくなるので、飲む拘束衣とも言われています。


依存性が強く、

薬物乱用が問題となり製造中止となった薬です。

アタオカ先生は、

患者さん達の間では、

ベゲタミンを大量に処方する事でも有名ですが、

レボトミンという古い薬をどの患者さんにも大量に処方するので、

親しみを込めて、

「レボトミン先生」とも呼ばれていました。

この頃、あまりにも大量に薬が処方されていたので、

様々な副作用に頭を悩まされていました。

なので、

こっそりと自分で薬の量を調整し、

自分の体で人体実験を繰り返していました。

その結果、

ベゲタミンが一番気持ちよく眠りに付く事ができる薬だと気がつきました。

なので、

ベゲタミンをよく眠れる貴重な薬だと思い、

かなりの量を溜め込んでいました。

(ベゲタミン以外の薬も大量に溜め込みました)

アタオカ先生が引退し、

主治医が変わり、

ベゲタミンの代わりの薬が処方されなくなってからは、

この時、溜め込んだベゲタミンを、

寝付きが悪い時に飲んでいました。


次回へ続く。



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