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【グッドオーメンズ2感想】地獄へ道連れ
今夏、グッドオーメンズ2を見終えたらなにをすればいいのか分からない。
グッドオーメンズ2を見ればいいのか?
【グッドオーメンズのあらすじ】
シーズン1のあらすじ
天使のアジラフェルと悪魔のクロウリーは、地球への愛着を深めていた。そんな2人にとって地球の滅亡は最悪のニュースだ。
四騎士の準備は整っている。すべては神の計画の通りに進んでいた。誰かが反キリストを間違えてしまったことを除いては。人類のヒーローは反キリストを探し出し、手遅れになる前にハルマゲドンを止めることができるのか?
グッドオーメンズは問題が降りかかってはすれ違い、しまいには助け合う天使・アジラフェルと悪魔・クロウリーの話だ。
アジラフェルは善意が溢れすぎて後先を考えられず、悪行ともつく行為を繰り返す。
元天使のクロウリーはその賢さゆえに神の計画について疑問を呈し、不躾な輩として地獄に落とされた。天使と悪魔は善悪のグレーゾーンに身を置く者同士、気のおけない仲になっていく。
シーズン1を初めて見たとき直感で「大好き!」と感じた。いちばん好きなタイプの話だ。どこか皮肉めいてて軽快で、どこまでもバカげていて愛しいコメディだった。
【ウキウキのシーズン2】
シーズン2のあらすじ
天国に背いた天使アジラフェルの書店を裸の大天使が訪れる。彼はすべての記憶を失っており、自分が誰なのか、なぜそこに来たのかを思い出せない。
これによりアジラフェルと、現役を退いた悪魔クロウリーの生活は激しくかき乱される。天国と地獄はそれぞれ全力で大天使を捜索する。
とある人間カップルの恋を実らせようとクロウリーとアジラフェルが画策する中、2人の穏やかな暮らしは過去と現在の両面で脅かされていく。
平日の私は常にスリープモードなので、グッドオーメンズ2を受け止めきる自信がなく、新シリーズのリリースから少し経った今日、ようやく見終えた。
実はシーズン1を見たのも今年のことだ。
コメディドラマを浴びたい衝動で、グッドオーメンズの再生ボタンを押し、気がつけば3周していた。
2023年初頭の私の目にはドラマ版グッドオーメンズが映り、手元には日本語訳版の原作、耳元にはラジオ版グッドオーメンズが流れていた。
転職活動中で人類を憎んでいた私を慰めたのは天使と悪魔だった。天使と悪魔を自分の中に飼いながら、連日求人を眺めていた。
シーズン2のために今夏まで生き延びた。
公式のあらすじしか読んでいなかったので、のっけから披露された愉快な画面にゲラゲラ笑わせてもらった。
※ここからネタバレ有
【ドキドキのシーズン2】
シーズン2ではアジラフェルとクロウリーが恋のキューピッドになるということで、こりゃ大いに失敗してくれるんだろうとワクワクしていた。
見続けていると、やはり雲行きは怪しくなった。
だが、おや? キューピッド要素が薄い……?
あらすじに書くくらいだからメインテーマの1つは「人間の恋」なのだろうと踏んでいた。だが、話の本筋がイマイチ見えてこない。
シーズン1は終末について奔走する天使と悪魔の話だったし、1話あたり45〜50分あるにせよ6話で収集をつけなきゃいけないのだ。テーマは1つに絞らないと扱いきれないのでは、と思った矢先、直情的な感想が浮かぶ。
「今回、2人についてのエピソードが濃くない?」
そう。天使と悪魔が恋のキューピッドに奔走する以上に、2人の過去のエピソードがやたら多い。
やたら多いのはそりゃあメインの2人だからで、時折悪魔的なアジラフェルがなぜ堕落しないのか、どう見ても心優しいクロウリーがどういう経緯で天国から追われてしまったのかなどシーズン1の補完が多かった。私も嬉々として、「シーズン1のスピンオフエピソードだ!」と見ていた。
ところが悪魔・クロウリーの後任であるシャックスが天使・アジラフェルに接触して唐突に切り出す。
「クロウリーとあなたが付き合ってるって聞いた。とても信じられなかったけど」
? ??……そうくる!?!!!!?
視聴者、こんな直接的な表現がくるとは思ってなかったのでびっくりしちゃった。
アジラフェルとクロウリーが互いを大切に思っているという、作者と演者の見解は知っていた。時折「in love」という表現を見かけたので、恋仲に近い設定だろうことも。
ただ、それはあくまで人間側の視点で見た感想だと思っていた。「なんやかんやで6000年も連れ添って2人だけの秘密を抱えて、同じ釜の飯食べてたらそりゃ恋仲だよね」みたいな。
なので、アジラフェルとクロウリーを含む天使と悪魔には恋を理解できないと勝手に解釈していた。アジラフェルとクロウリーも「互いを大事に思っている」のは言わずもがな分かっているが、人間の「好き」とは違うのではないかと。
しかし、アジラフェルはシャックスの言葉に明確に動揺する。「そういう仲じゃない」と言いながら、「そうなのかもしれない」という不安を滲ませる。(シーンさんの動揺演技が上手すぎて、毎度圧倒されちゃう)
まあ、"誘惑"という悪魔の術を知ってるシャックスが恋を知っててもおかしくない。ので、「付き合ってる」というセリフ自体に違和感はない。
クロウリーも同様に人間から「彼はあなたのパートナー?」と問われてアジラフェルとの関係を今まで以上に意識する。
恋を知ってておかしくない人たちから「それは恋では?」と提言される流れなので、違和感は本当にない。ただ、メインテーマが「2人の関係」であることに私が動揺する。
2人が恋仲のような親友のような家族のような関係にあることは、裏設定だと思い込んでいたからだ。
ineffable(言葉では表現しきれない)関係の2人が問題に巻き込まれては協力し合うのがこの作品の醍醐味で、2人の関係に言及するのは野暮なのが前提だと思っていた。
ineffable : 言葉では言い尽くせない、言葉で言い表せない、言語に絶する、言いようのない、えも言われぬ、筆舌に尽くせない
〔神の名などが恐れ多くて〕口にしてはならない
もしかして、シーズン1で頻出単語だった「ineffable」に人間の表現を与えようとしたのがシーズン2……?
4話あたりから急旋回急展開が止まらないシーズン2に情緒を振り乱されながら、最終話に辿り着いてしまった。
「ま、まあなんやかんやで? 今回もきれいに収まりそうじゃん?」と息絶え絶えに自分に言い聞かせた。ラスト30分。物語の幕が閉じる。
閉じ……閉じない!?
【ラストシーンで寝込んだ】
物語の幕、閉じられない!!!!!!!!!
ガブリエルとベルゼブブの衝撃エンディングに思考を割かれているのに、アジラフェルとクロウリーが畳みかけてきて思考が止まった。いや、思考が消えた。ただ流れてくる情報を眺めていた。
??
?
いやいやいやいやいやいやいやいや。
いいんだ。2人の仲にどんな名前をつけても、どんな結論に至っても。
よかったはずだった。
2人の"最善の解釈"が違いすぎる。
連れ添い歩んできた2人が気づいた現実が、あまりにも酷だった。本当に酷だ。打ちのめされるのに十分だ。
破局とか失恋とか今生の別れとか、そういう言葉で表せず、やっぱりineffableな2人だと痛感する。擦り切れそうなエンディングで呆然とした。
アジラフェルもクロウリーも性格が全く異なるので、物事の解釈が違うのは分かる。今までなら喧嘩して、次は謝るか妥協かで終わった話だ。
ただ今回のラストは「相手と生きるために本気で考えた最善」が食い違っていた。あとが設けられていない、究極の選択が食い違っていた。
視聴者は無意識のうちに「2人だけは永久」と刷り込まれていたように思う。地球の様相は変わるし、天国も地獄もあたふたしてるし、それでも2人の存在と愛は変わらずあの書店にあると信じ込まされていた。
愛ゆえの別れをグッドオーメンズで叩きつけられると思っていなかった。
ジャンル:コメディに全力で悩まされている。
「自分が天界のトップになってクロウリーを天使に戻す」と提案するアジラフェルは一見すると傲慢だ。
でも、アジラフェルは天界でしか生きたことがない。地球に身を置いて、大好きな人類と生きているが心は天のもとにある。天と善のために尽くしてきたから、クロウリーを元の居場所に帰してあげるのは彼にとって"最善"だ。最も善い選択なのだ。
さらに、クロウリーが天界に戻ってきてくれれば、堂々と彼と時間を過ごせる。なんだってできる。それこそとびきり愛せる。筆舌に尽くせないほど。
神のもとで生きるアジラフェルからしてみれば、心優しい友人が地獄へ堕とされてしまったことがずっと気がかりだったのだろう。「こんなに善い友がなぜ善良な場所に居られないんだ」という思いをようやく晴らせたはずなのだ。
でも、クロウリーはもう神から見放された存在で、天国にはもちろん、地獄にも身を置けない。
途方もない孤独と引き換えに、すでに自由を手に入れていた。足りないのは孤独を埋める友人だけだった。だからアジラフェルたった1人を望んでしまう。
極めつけはクロウリーのあのシーンだった。
宇宙を作ってから現代に至るまで口にできなかった願望をアジラフェルに言い放つ。孤独を分け合える唯一の存在を前に、2人という存在になろうと健気な提案をする。
(クロウリーってさー……人間に愛着が湧いてるんじゃなくて、人間を愛しているアジラフェルを心底信じてるんだよなあ……。だから間接的に人間を救っちゃうのが、健気で愚かで悲しい)
結局、クロウリーの提案はまるで理解されず、アジラフェルは己の提案を最善として語る。
もう、自分の手じゃ埋められない溝を悟ったクロウリーは人間の愛情表現を介して別れを告げる。
私はグッドオーメンズ2がリリースされる前から「恋仲にあったとして、人間の愛情表現なんかされたら解釈違いで金輪際見れない」と謎の宣言をしていた。
だが、マギーとニーナ、ガブリエルとベルゼブブという「2人になれた」前例に感化されて、その表現に至るしかなかったと思うとものすごく納得した。
天使として生きてきたアジラフェルは人間界を愛してこそいるが、それは人間が愛玩動物を愛でるような感覚なのだろう。対してクロウリーは、元天使ということもあって天国にも地獄にも馴染めなかった。人間界を愛しているというより、天地の誰より人間に近づいてしまった。
憤り、悲しみ、慈しみ、切なさ愛しさぜんぶ、ぜんぶを伝えたかったのだろう。ineffableに表現を与えたらあの結末になったのだ。
痛々しくてずっと泣きかけている。なんだよこれ。めっちゃ好き。
視聴を終えてからすでに数時間が経過している。知恵熱が出そうなくらい思考がショートしている。仕事できるかな?
GO3が制作されるとして、公開まであと何年かかかるのだろう。
本気で思う。それまでずっと寝込みそう。
製作陣には感謝の気持ちしかない。
ああ、それにしても……。
↑憎い。