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看護補助スタッフ じょうさんの話

こんにちは、九芽です

高校2年生になる年の3月、顎変形症の手術により、一週間の入院を経験した私。

入院先の病棟に配属されていた看護補助スタッフの方にはとてもお世話になっていました。

今回はその中の1人「じょうさん」のことを書きます。お名前は仮名です。




初めてじょうさんと関わったのは、術後のレントゲン撮影。長い距離を歩けなかったため車椅子で放射線科まで行くことになり、それを押してもらった時でした。

顎間固定がされていて話せず、シャワーを浴びれず髪はぐしゃぐしゃ。おまけに体調がすぐれなかったので、座っているのもしんどい。そういう自分にちょっとイライラもしていました。
思い返すのも嫌になるくらいの姿です。

移動して撮影して帰ってくるまでの間にこれといった話題はなかったけれど、じょうさんの雰囲気はどこか温かいものでした。


いよいよ顎間固定が解禁になる日の矯正歯科も、行きはじょうさんが付き添ってくれていました。

4日ぶりに発語できるようになったことはもちろん嬉しかった。そしてそれと同じくらい、いろんな人と話せる喜びは大きかったです。


シャワー浴の許可が降りて2日後のこと。
いつものようにシャワー室の鍵を掛けようとしましたが、うまいこと閉まりません。

頑張って解決しようとするものの、なぜかロックされないのです。
これはもう、誰かを頼るしかない。

話しかけやすそうな人を探し始めると、すぐに見つかりました。じょうさんです。

他の患者さんを頼るわけにはいかず、すれ違う看護師さんたちは早歩き。
そんな中、じょうさんも同じように忙しそうに見えたけれど、なんていうんだろうあの「いつでも頼ってください」的オーラ。

「シャワー室の鍵が閉まんないんです…!」そう伝えると「あーほんと?いま一緒にいこっか」と。

2人でシャワー室の中に入り、じょうさんが試しにやってみると、普通ですよと言わんばかりの様子で何事もなく閉まりやがる鍵。

ちょっと!なんでしまるの!!

「え…閉まるじゃん。笑」
「いやでもさっきは鍵掛からなかったのに!笑」

蛇腹式のような作りになっているその扉。
どうやら閉めるのにはコツがいるようです。

これっぽっちのことで呼んでしまったことに申し訳なさも感じつつも、一緒に笑ってツッコミを入れてくれ、「鍵が閉まらないと不安になるもんねー、いってらっしゃい」とお風呂に送り出してくれるじょうさんの雰囲気に救われる思いでした。

30分間という限られたシャワー時間のうち、最初の貴重な7分を「鍵の掛け方講座 in シャワー室」に費やすことになってしまったけれど、その時間は他の何にも変えられない大事な思い出です。


その後もシャワー予約やシーツ交換でお世話になり、その度にたわいのない話をしました。

コロナの影響で面会には制限があって1人で過ごす時間が格段に多かった中、ごく当たり前に話を振ってくれる方々にたくさん助けられていたのだと思います。

誰かを頼りたい!と思った時にそこにいてくれるじょうさん。話す時間こそ短かったものの、すれ違う時には「どうも〜」と優しい笑顔で声をかけてくれる。

その安心感は言葉に表せないくらいでした。




そして、退院の日。
病室で荷物を整理していると、いつものように廊下からじょうさんの話し声が聞こえてきます。
退院日に今までお世話になっていた分のありがとうを言おう、とずっと前から決めていました。

それなのに…
飲み物を買いに行ったり手を洗いに行ったりで何度か出歩いていたのに、見当たりません。
他の患者さんの検査に付き添っていたのかな。

退院時間の10時半までの間で、私がじょうさんと顔を合わせることはありませんでした。


私の顎には今回の手術で入れたプレートが留めてあって、それを除去するために、次の春もう一度入院して手術を受ける予定です。

もしその時にお会いすることができたら、
またありがとうが言いたい。

シャワー室の鍵を閉めれなくて困り果てるのは私ぐらいだと思うけど、もしそんな人を見かけたなら、迷わず助けてあげられる人になりたい。


そして、たとえどちらも叶わなかったとしても。

今回の入院で出会った人、経験したことを忘れず、これからも前へ歩き続けたいと思うのです。




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