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【入院3】手術後は人生初のことだらけ。

こんにちは
九芽です

顎変形症の手術後、目が覚めてから深夜までの記録です。

目が覚めた時

「九芽ちゃん終わったよー」

まず耳に入ったのがこの声でした。あとは周囲の雑音。人の話し声だったり、器具の音だったり。音ってこんなにうるさくきこえるもんだっけ。

あ…おわったんだ。

「目開けれる?」の一言でようやく開けるきっかけができたけど、開けるのにも一苦労でした。実はテープで止めてあるんじゃないか、私の目。そう思ってしまうくらい、それくらい瞼が重かったです。

ちなみに目覚めた時は鼻に挿管チューブが入っています。声が出せない以前に、呼吸がしづらい。肺が精一杯膨らまない感覚でした。唾を飲み込もうとすると、喉にチューブが入っているのが分かります。

聴診器が当てられて自発呼吸が確認できると、鼻からチューブを抜いてもらえました。なんだか気持ち悪い聴診器の感触と抜く時の不快感と微妙な痛みの後、呼吸が一気に楽になりました。

口をゴムで縛られて(いわゆる顎間固定)、傷口から出たドレーンのチューブが胸に固定されます。

麻酔科の先生、看護師さんなどいろんな人が色んなことを話しかけてくるから、脳みそフル回転でした。

「わかる?」「目開けれる?」「吐き気する?」「ここにテープ貼ったら痒い?」「寒い?」

おそらくどれに対してもはっきりした反応ができていなかったと思います。聴覚と触覚を中心に記憶はしっかりと残っているから、訳の分からないやり取りを繰り広げたことは今だに覚えてるんですよね。


この目覚めを何かに例えるなら、「すごく疲れた夜に眠らされて、夜中に一度も起きることなく爆睡して迎えた朝」のような感じ。

でも先生たちに無理やり起こされ質問を投げかけられて、体のチューブやらを触られ、しまいには裸で尿道カテーテル付き。というフルコースの非日常的な人生初の、控えめに言って最悪の目覚めでした。


集中治療室へ

自分の体がベッドに移されてそのまま移動。通路を通り真っ白な場所に着きました。目は開かなかったけれど、かなり白くて明るいことがわかります。

ここが例の、ICUですか。

手術室が暗めだったので余計に光の刺激を感じましたがそこに不快感はなくて、むしろ心地よさを感じるくらいの、不思議な感覚でした。


着いた直後の記憶は殆どありません。そして、耳はしっかり聞こえているのに目を開ける力が残っていませんでした。

看護師さんが「これナースコールだからね、何かあったらここ押してね」と言いながら、開くことも、閉じることもしようとしない私の手の平にしっかりとそれを載せて、私が自分の力で握れるまで包み込んでくれました。

その手のあったかさは何があっても永遠に忘れないと思う。それくらい頼もしかったです。


ただ寝る一択

この時私の体についていたのは、酸素マスク、腫れを抑えるためのバンド、創部ドレーン、心電図のコード、点滴、動脈カテーテル、尿道カテーテル、血圧計、パルスオキシメーター…などです。

母が面会に来てくれました。目は閉じているけれど、お母さんの雰囲気は肌でしっかり感じられるというか、看護師さんとはまた違ったものがありました。


その後、荷物を整理してくれた看護師さんたちの「メガネケース、ハリーポッターだ!好きなのかな⁇」というひと言を私は聞き逃さなかった(笑)
本を読み、映画を観て「私もマグル生まれの魔女としてホグワーツに入学できないかしら」と思いながら育った私としては本当に嬉しいお言葉です。
J・K・ローリングさん、素敵な物語をありがとうございます。


手術が終わって2時間後くらいに、口腔外科の先生たちが様子を見に来ました。5、6人はいたかな。先生たちは同じように濃い色のスクラブを着ていて、まさにドラマのコードブルーみたい。

もちろんその中に藍沢先生も緋山先生もいなかったけれど、みんなそれ以上にかっこ良かったです。


しばらくして、口腔外科の先生が当直の先生を紹介しに来ました。「当直の先生だよ、何かあったら言ってね」って。

看護師さんが、苦しい時に使ってと吸引のチューブを渡してくれて、やり方も教えてくれました。顎間固定によって口が開けられないため、自分でやる場合は唇と歯茎の間限定の吸引にはなりますが、やってみるとずいぶん楽です。


夜勤の看護師さんが挨拶に来たのはちょうど9時頃。

早く病室戻ってケータイ触りたいでしょう?(笑)
全身麻酔で手術すると、すごく体力が消耗されて疲れるみたいだから、今日はゆっくり休んで。暑いとか寒いとかあったら言ってね。

まともに意思表示もできない私に対してもたくさん話しかけてくれて、しかもスマホのことにまで気を配ってくれるなんて。

たぶん夜の9時前後が、一番の体調優良期。後に分かることですが、後にも先にもこんなにスマホ欲と帰りたい欲があったことはありません。


深夜の闘い

時間が経つにつれて腫れがひどくなり、だんだんと呼吸のしづらさを感じ始めました。息をするのがこんなに苦しかったことって今までになくて、胸に手を当てるか、ベッドの柵を握るかして呼吸に全集中。

自分が今まで生きてきた中で、これだけ「全集中」が似合う状況はなかったです。きっとあれは幻覚だったんだろうな、と今になって気づくような、ありえない状態のリアルな記憶もいくつか残っています。

ただ、疲れが溜まっていたので目を閉じればすぐに眠れる状況でした。眠っては苦しくて起き、数時間おきにやってくる血圧計の締めつけで起こされ、間違ってナースコールを押してしまってその音で起きる。

その時は本当に辛かったし、全く笑えない話なんですが、まるでコントのよう。

眠る起こされるのやり取りは本気のバトルでした。




どのタイミングだったか、看護師さんが「氷枕欲しい?」と言ってそれを持ってきてくれていました。氷枕なんて、と舐めてかかった自分もいましたが、これがまた本当に気持ちよかった。

「マイ氷枕持ってたら便利なんじゃ。特に近頃の夏は重宝しそう」

変に朦朧としていたんですかね、日常生活に冷静に思いを馳せていました。

ちょっと明るい室内に、ちょうど良い掛け布団の重みと、氷枕の冷たさ。
自分がここにいられることそのものに喜びをがあって、ぎゅっと抱きしめたくなるくらいの温かみを感じていました。



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