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B@CK HΦME S3:12

Chapter:03
「吹雪くん、君は頼まれて、不武器を腰に差しているね? 
蔦屋T三郎……、皆までいうまい、我々六人も、蔦屋側の人間なんだ。
君を護衛する為に、招集された精鋭なんだよ? 
俺の妖刀ルネッサンスは、言霊の具現化編集速度を、
飛躍的に高める効果がある。
速記の様な刀身描写でも、意訳して、攻撃防御に素早く転じてくれるんだ」
 
「T三郎様のお名前が公然と語られることに、先ず、驚きです! 
僕は何カ月も前から、この準備に関わり、細心の注意を払ってきました。
不武器が暴走することも周知ですが、関係組織の知識技術では、
それを喰い止める術は、未だほとんど無く……」
 
「不武器は持ち主と距離が生まれると、一瞬、妖力が薄れる特徴がある。
しかしだ、地面に落とす、意図的に置き去ることは、
追っ手に奪われる最大の危機に……。
不武器の暴走の脅威に晒されながらも、持ち主と紐づけされた君は、
極力、自らの近辺に不武器を保存する必要があるんだよ」
 
「T三郎様の意思を貫くには、我が身も妖刀の刀身に喰われろ! 
と、おっしゃるわけですね?」
 
「極端にいえば、そうだな。
君は、命を賭して、蔦屋家の外門の敷居をまたぐ必要がある」
 
「どんな集団が不武器を狙っているのですか?」
 
「わからない……。単体ではないことだけは確かだ。
団体によっては、不武器の悪用化を既に描けているのかもな」
 
「僕は非力です。
ですが、両親から責任を果たす大切さをしっかり学びました。
僕の肉体が妖力に喰われても、他の六人の護衛力に意思を託すまでです」
 
「いい目だ。いっていることに一切の嘘を感じないよ。
吹雪と六人の力を結集すれば、
未確認の追っ手も簡単には蔦屋作戦に水を差すことはできんだろう。
正義の為に火の中に飛び込む夏の虫になるぞ!」
 
Chapter:04
 目標を達成したあとで、平穏無事な日々が約束されているとは限らない。でも、現に、僕は腰に不武器を差して、
六人の中心に位置しながら道中を歩んでいる。
 不武器が自分の意思で操れない妖刀なら、
自分の身を守る為の一振りを、道すがら手に入れる必要があるのかも? 
剣は苦手だ。追っ手といえども、刀の錆にするのは口惜しい。
 鹿の面の鹿野助さんが、おもむろに近づいてくる。
腰に差した刀を抜いて、僕の目の前に差し出した。
「獣の耳で、お前の心は大体掴めた。
わっちは、体術も一流だけん、しばらくはその刀を貸してやんよ。
蔦屋作戦遂行に人員が欠けていくのは痛手だかんな。
刃こぼれしても構わねえ。しっかり、己の命を守れよ」
「か、鹿野助さん、ありがとうございます。体術に期待してます。
全力で作戦を遂行しましょう」
「なあ、若けえの。腹、空かねえか?」
角材の石塚さんが声をかけてくれる。
 
「石塚さん、お腹空きました。
材料があれば、道場さんが作って下さるのですよね?」
 
「ああ、麗美の料理は天下一だぜ? たらふく喰って、英気を養おう!」
 
「ニャニャ、吾輩の名前はスコティッシュフォールドだニャ。
自慢の肉球、半分妖怪。剣士のニャかでは、
ダントツに個性が光ってるニャろ? 隻眼肉球は、攻撃半減の妖刀。
必殺の一撃は荷が重いけど、戦力を削ぎ落とす活躍をしてみせるニャ、
以後、お見知りおきを」
 
「スコティッシュフォールドさん、期待していますよ! 
孫の手の様な妖刀が、僕たちの作戦を成功に招く訳ですね」
 
「少年、庵地英治という人物に出会ったことはあるかい?」
 
「紋心先生! その方は初対面です。老刃辛と関係がある方、ですか?」
 
「なかなか鋭い心を持っておる。その通りだ。
庵地英治は翁という妖刀の使い手。
もっとも加齢妖刀故に、一秒毎に切れ味は落ちているのだがな」
 
「翁……二人の持ち主の知恵を結集すれば、
老化の原因を突き止められるかもしれませんね」
 
「そうだな。庵地英治は元々同じ郷土出身の剣士だ。
私は蔦屋作戦に招集されたが、
彼は別件で諸国を漫遊していると伝え聞いた」
 
「少年、料理番長の道場麗美よん。
この作戦から、飢えという心配は払拭されたと思い知りなさい」
 
「麗美さん、素敵な妖刀ですね。
戦う料理長、その異彩が、作戦成功の鍵を握ると信じています!」

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