見出し画像

VANLIとRYUKIの物語

RYUKIは又、VANLIに怒られていた。
「ほらあ、RYUちゃん! 余所見しないでって、言ってるでしょ?」
「……ごめんなさい、ごめんなさい。
ねえ、三日月峠には未だ着かないの?」
「ええと……それはわからないわ。私も初めて行くんだから」
ジモティーあるある。地元の有名な観光地ほど、行くことが少ない。ましてや、三日月峠は満面の三日月が天体を照らさないと行く意味が無い。
(満月が三日月になっている時点で、満面と言う表現は弱いと思うけど……)。
ふたりは三日月峠に行く用事があった。
飼い猫の茶太郎と柚姫に婚前交渉をさせる必要があったのだ。飼い主たちが凝視する中でおこなうことでも無いのだが、プラトニックな関係から一歩進むには、主人同士が聖域に同伴する必要があった。どこまでを婚前交渉と線引きする?
子供のふたりにはよくわからなかったが、できることは、三日月のふもとまで二匹を誘導すること。真剣な思いで、ふたりは煉瓦の道を一歩一歩歩いた。三日月峠の巡礼は、夜明けまでに済ませる必要があった。
「RYUちゃん、あそこのベンチで少し休んで行こうか? ママに葡萄ジュース作ってもらったよ」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?