風鈴高校　夜の事件簿

8月25日。風鈴高校、校内。
「なあ、出るんだよ、アレが」
「アレってなんだよ！」
「微熱に決まってんだろ、検温なんだから」
「……で、誰がこんな時間に
保健室で熱なんか計ってるの？」
「そりゃあ、直腸検温だもん。
癖っちまったら病みつきよ」
「相手は誰なんだよ？
検温してるのは水木先生か？」
「勝手な想像だけど、体育教師の熊谷辺りじゃね？」
ちりん、ちりん……
中庭の棚田にくくられた、風鈴がやさしく呼応する。
野郎ふたりで大声で会話しているから
夜の学校独特の不気味さも払拭出来ている。
水木＝ミナキ先生　熊谷＝クマガヤ先生
ふたりって確定はしてないけど
思春期のイマジンは、こう言うオトナたちをカップルにしたがる。

日中は、体温よりも高い外気。
こんな時間まで灯りが点いている保健室。
ふたりが真相を確かめに行くことのリスクは非常に高い。
そうだとしても、冒険者と化したふたりは
保健室のあるＤ棟に潜りこみ
スニーカーの靴底を殺しながら、
廊下をぼんやり照らす渦中の部屋に忍び寄って行った。
気が向いたらTO BE CONTENUED……