私の最期の先生 九話

九話 艱難
class committe side
先生が、逮捕された。未だに信じられない。おかしい。先生はあの件には関わりが無いはずなのに。 

◇ あのあとすぐ、私は事情を警察に聞かれた。担当してくれた方は「言えないことは言えないで全然いいよ。」と、優しい言葉をかけてくれた。だけど喉に言葉がつっかえて、まだら模様みたいに記憶がフラッシュバックして、私は「あ・・・、ああ・・・・・・。」と思いどおりに言葉を発せなかった。それでも、私は警察に、これだけは伝えた。「犯人は相沢先生じゃないです。」

◇ 事件の翌日、学校は臨時休校になった。朝から何をしても気分が晴れない。ゲームをしても、宿題をしても、本を読んでも、普段とは想像出来ないくらい集中が続かなかった。散歩でもしようと思い、岩のように重い腰を上げた。その直後、スマホのバイブレーションが鳴った。「電話・・・・・・・?」画面を見ると「千穂」と無機質な文字で表示されていた。
「・・・もしもし。千穂?」『あっ、栞ちゃん。もしもし。』「・・・・・・どうしたの。」私はいつもどおりを意識して声を作った。『あのさ、栞ちゃん。最初に謝っておくね。その・・・・・・これから話すこと、デリケートな話題だから。』「・・・・・・昨日の事件?」嫌だ、嫌だ・・・・・・・。『正解。』
「お願い、やめて!!」『・・・・・・・っ!』「ごめん。驚いたよね。はは・・・・・・。でも、本当に、嫌・・・。あんな思い。、もうしたくない・・・・・・・!」『・・・・・・・・・。』「もう、切っていい・・・?」『・・・・・・辛かったね。栞ちゃん。いいよ。思ってること、全部言っていいから。辛くないふりされたら、私は悲しいな。』「・・・・・・うっ、えう・・・・・・。んぐっ・・・。」
『怖かったね。苦しかったよね。』「っう・・・ううっ・・・・・・・・・・・・つっ」

◇ 『落ち着いた?』「・・・・・・うん。』「分かった。じゃあ本題なんだけど・・・。』「・・・?」『私、もしかしたら相沢先生は無実なんじゃないかって思うの。』「・・・・・・え?」どういうこと?「根拠は?」『うん。事件の日、私相沢先生と一緒にいたの。家で面談してて。』「じゃあ、それを警察に伝えれば・・・・・・。」『少なからず、警察は違和感に気付くはず。』「・・・・・・でも、何で?何で相沢先生のことを信じるの?千穂が先生の無実を証明するメリットなんて無いよね?」『・・・・・・・・・・・・内緒!とにかく、警察に話してみようよ。もしかしたら取り合ってくれるかもしれないよ。』ふと、頭によぎった。先生は罪こそ違うものの、犯罪者であることに変わりはない。先生は「約束」を守ってくれるのだろうか。あるいは・・・・・・。

murder side
「本当に、断言できるのか?」目の前の刑事が狼狽える。俺はそんな刑事を茶化すように言い放った。
「ええ。断言できます。〇〇市無差別殺人事件と、9年前の渋谷日向殺人事件の犯人は僕です。」

 

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