道端で助けた人がたまたま大家さんだった話
こんにちは!現在うつ病で離職中の元看護師、二の腕ぷに子です!
いつもスキしてくれる人、ありがとうございます!励みになっております!( *´꒳`*)
あれは私がうつ病に罹って思うように働けなくなり、焦っていた時の話です。
無闇に転職を繰り返しましたがいつもうまくいかず、私に就職はもう無理なのでは……と思い始めた頃でした。
買い物から家に帰る途中、シルバーカーを押した一人の女性が、とあるアパートの下で立ち往生しているのを見つけたのです。歳は70~80歳といったところでしょうか。見るからに辛そうにしながら、一生懸命ガラケーを弄っていました。
「どうかなさいましたか?」
多くの人々がその女性を避けて歩いていく中、私も一度は通り過ぎました。けれど振り返っても振り返っても、彼女は動く気配がありません。
余計なお節介かもしれないと思いながらも、気がつけば私は元来た道を戻って彼女に声をかけていました。
「ああ、ありがとう。リハビリのために散歩に出たはいいけれど、帰りに疲れてしまって……今娘に電話をかけて迎えに来てもらおうとしているのだけど、電話に出てくれなくて困っていたの」
彼女は困ったようにそう言いました。聞けば、すぐ近くのマンションの住人だといいます。
とりあえず塀に引っかかっていたシルバーカーを外し、娘さんに電話が繋がるのをしばらく一緒に待っていましたが、一向に繋がる様子はありません。
季節は夏で、照りつける日差しに私の体力もゴリゴリ削られていきます。まして相手はご高齢。体力の削られ方は私の比ではないでしょう。
「あの……私で良ければ、お家までお送り致しますよ」
勇気を出してそう提案しました。女性は私を気遣ってかしばらく迷っていた様子でしたが、最終的には私の言葉に頷いてくれました。
私はシルバーカーを押す女性を支えながら、できるだけ彼女の負担にならないようペースを合わせてゆっくりと歩き出しました。
「あなたはこの辺に住んでいるの?」
「はい、ちょっと行った先のアパートに住んでいます」
「そうなのね?なんていうアパートなの?」
「〇〇というアパートに住んでいます」
「そうなのね。あなた、お名前は?」
「二の腕ぷに子と申します」
やたらと個人情報を聞かれるな〜とは思いましたが、女性は見るからに優しそうでしたし、あまり警戒もせずに答えました。こんなご高齢の方に詐欺などの悪事ができるわけがないと思いましたし、何よりうちには取るものなど何にもありません(笑)
雑談をしているうちに、すぐに女性のマンションの下につきました。スロープがあり、シルバーカーでも上がりやすい構造になっていました。
問題はエレベーターです。
「向かい合って、両手で私の腕に掴まって下さい。手じゃなくて肘の辺りを掴んでもらえると安定しますよ」
「随分と慣れているのね。確かに掴まりやすいわ」
「実は私、看護師なんです。だから、安心して掴まっていてくださいね」
プライドが邪魔をして、休職中ですとは何となく言えず、嘘をつきました。女性を安心させる意図もありました。
女性をエレベーターに引き入れ、一度エレベーター内の手すりに掴まってもらってシルバーカーも中に入れました。そして女性の住んでいる階に到着すると、同じように手すりに一度掴まってもらい先にシルバーカーを下ろしました。その後女性をエレベーターから下ろすと、もはやシルバーカーなど二の次です。また腕に掴まってもらい、息を切らしている女性に合わせて更にゆっくりと女性の住んでいる部屋まで歩きました。
インターフォンを押し、しばらくして出てきた娘さんは、私の姿を見て驚いたようでした。どうやら掃除機をかけていて、着信音に気付かなかったようです。
娘さんに女性を預け、シルバーカーを取って戻ってきた私は大変感謝されました。
女性から手紙が届いたのは、それからしばらくしてからでした。かわいいレターセットに入った、便箋二枚にも及ぶ大作のお手紙でした。
手紙の字は、お世辞にも綺麗とは言えませんでした。パーキンソン病を患っていて、手が震えるのでうまく字が書けず申し訳ないといった謝罪の言葉から始まった手紙は、真摯な感謝の手紙でした。
住んでいるアパートこそ教えたものの、部屋の番号までは教えていなかったのでびっくりしましたが、手紙の内容から彼女が自分の住んでいるアパートの大家さんだったことを知り更にびっくりしました。
恐らくアパートの名前と私の名前から、部屋の番号を突き止めたのでしょう。
手紙には、彼女の身の上話を始め、実に様々なことが書かれていました。
その中でも、『腕を掴んだ瞬間から、あなたがプロだということはすぐにわかりました。立派な看護師さんなのですね』という一文は特に私の胸を打ちました。
パーキンソン病を患っている方は独特の歩き方をするので、実は彼女を家まで送り届ける途中に気付いていました。手の震えも代表的な症状の一つで、さぞかし日常生活にも苦労されていることでしょう。
そんな彼女が、私に感謝を伝えるためにわざわざ筆を取ってくれた……その事実だけで、胸がいっぱいになりました。
彼女と再会を果たしたのは、それからすぐのことでした。娘さんに付き添われて外に出ていた彼女は、シルバーカーではなく車椅子に乗っていました。
私は慌てて彼女に駆け寄り、手紙の謝辞を述べました。
そして家に帰り、懐かしくなって手紙を再度開くと、そこからぽろっと切手が出てきたのです。
もしかして彼女は、私と文通したかったのではないか。
病気に苦しむ自分を、励ましてくれる人を必要としていたのではないか。
もしかしたら思い上がりかも知れませんが、私はその瞬間直感的にそう思ったのです。
便箋二枚にも及ぶ謝辞のお礼を、あんな道端で簡単に済ませてしまった。
今更改めて手紙を送るのもなあ……と思い躊躇したことを、今でも後悔しています。
あれから道端で彼女を見かけたことはありません。
健やかに、というのはなかなか難しいかもしれませんが、周りに見守られながら自分の病気に何とか折り合いをつけて生きていることを願っています!
ちなみに彼女からの手紙は、今でも大事に取っています。
これを読んでいるあなたも、道端で困っている人がいたら是非声をかけてあげてください。
明日はとうとう二回目の移植外来の受診日です!例え断られたとしても、落ち込まないようにがんばってきます!
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