2024年4月29日:1廻し
「お前は言われたことしかできないのか!少しは自分の頭で考えろ!!」
何度も何度も言われ続けたこの言葉が、頭の中でぐるぐると駆け巡る。
「はぁ......」
ため息が漏れ出る。今日はゴールデンウィークの真っただ中、だっていうのに何をしていても仕事のことを反芻している。
――他の奴らは自分が何をするべきかを絶えず考えながら行動してる。お前だけだぞ!そうやってぼーっと突っ立ってるのは......
うるせえ......そんなこと言われなくてもわかってる。自分が一番自覚している。自覚しているだけだが……。
みんなは咄嗟の状況でも自分が何をするべきかがわかっているかのように動く。俺はその間いつも動けずにいる。
その間俺の頭は一体どんなことを考えているのだろうか?一応仕事中だし仕事に関係していることを考えているはずなんだ。
まさか仕事中に上の空になっているわけでもあるまいに。
「っ!アッツ!!」
コップには満杯になりあふれ出したお湯が太ももにかかってしまった。
凄く熱い。コーヒーを入れているときに考え事をしてしまうとは……本当に上の空だなぁ……。
本当に何をしているんだ。今は花の連休だぞ、こんな日にまで仕事のことを考えて落ち込んでいる場合じゃないだろ。
とりあえずこの汚れてしまった床を掃除しないとな。
ティッシュ箱からティッシュを乱暴に何枚かまとめて取り出す。そしてそれで床を拭いた。ついでに濡れたズボンとパンツを脱いだ。
それと同時だった。玄関のドアが開かれるのは。
俺の家の扉を勝手に開けたのは、俺と同年代くらいの男だった。外見はスキンヘッド、革ジャン、サングラスといかにも怖そうな人だった。
その男と目が合い、しばらくの間ずっとそのままだった。
10分くらいだったかもしれないし、2,3秒くらいだったかもしれない。この沈黙の時間はなんだろうか?
てかこの男は誰だ?てかこれって強盗とか?空き巣かもしれない。じゃあもしかしたら俺が今この家にいないと踏んで侵入したのかも。それがばったりと出くわしたってことは、口封じに殺されるかもっ。人知れない山奥に埋められるのかな。
なんてことを考えていると、その男は閉じていた口をゆっくりと開いて……
「お前なに人の部屋で致してんだ馬鹿野郎!!!」
重低音でそんなことを叫んでいた。