2024年6月25日:自問自答部屋
俺はいろいろなことを考える。
考えたほうがいいと考えているし、考えるべきだと考えている。
けれども、考えようと思っていても考える時間を意識的に作らないと考えられないし、その時間があったとしても頭の中で考えてしまうと思考がめちゃくちゃになって収拾がつかない。
だからこその自問自答部屋だ。
ここでは自分の思っていることでも、思っていないことでも、起きていることでも、起きていないことでも好き勝手にぶちまけていい。そういう部屋だ。
ただし言ったことは、自分に返ってくる。その影響は僅かであっても無くなることはない。
そのため自分の言ったことは責任を持たなくてはいけない。言い逃れはできない。好きなように好き勝手口にしても良いが、口にしたことっていう事実は消えてなくならない。それを自覚してほしい。
ついでに言うと、この自問自答部屋は何の変哲もない、いたって普通の部屋だ。だから何を言ったところで、アクションの一つだって返って来やしない。
それなのに反応があるってことは、入った人が2人、あるいはそれ以上になり切っているのさ。なんてやばいやつなんだろう。
しかも当の本人は、自分がやばいやつだって、見られている人から思われてなお通い続ける。
そういう振り返ると死にたくなるようなことをやろうとしているのだ。
「俺は自分を許せない」
「なんでそう思うの?みんなそんなことないって、励ましたり労ったりしてくれてるじゃない」
これを思い出すのは苦労する。
というかきつ過ぎる。辛いことを思い出さないといけなくて、しかもこの部屋の中で言葉にしなくてはいけない。つまりは誰かに説明して理解してもらえるレベルで言語化できるくらいまで詳細に思い出さないといけないってことだ。
馬鹿げているぜ! そう思って俺はこの部屋の壁を思いっきり殴った。
壁を傷つけられるとは思っていなかった。逆にこっちの手が傷つくかな、なんて思っていた。
しかし殴った手が痛むどころか手ごたえすら感じなかった。
「その行為に何の意味があるの? ねえどうしてそんな意味のないことをやっているのか教えてくれないかな?」
彼女はいかにも不思議そうに尋ねてくる。この無意味なことを何故やろうとしたのかを。
今必要なことは考えることを放棄して、思考停止して吞気に過ごすことじゃない。
今の俺に必要なことは、問い続けて前を向くことだ。
だからこそ、今すべきことは――
「おい、部屋ぁ、まずは愚痴や文句を垂れ流すから、相槌を打て! 解決方法や状況説明は後でやる!!」
「わかったー」
「ああ死にたいなぁ」
「そうなんだー」
「自分ができないやつだって、使えないやつだってわかってたつもりなんだけどなぁ……。まだ自分に期待して落ち込むなんて、全然昔から変わってないじゃないか」
「そうなんだー」
「もうこれ以上自分ができないやつだって思いたくない。傷つきたくないし、一人反省会なんてしたくないっ! 落ち込みたくないし、自責の念だって抱きたくない!! だから一人になるって決めたんだ」
「そうなんだー」
……そうなんだしか言わないぞこの部屋。壊れたかな?
この部屋に滞在できる時間を過ぎたらしい。別の日にするか。
俺はこの部屋を後にして、現実に戻っていく。
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