就職氷河期ど真ん中の人生とは
就職氷河期世代(主に1990年代半ばから2000年代初めにかけて新卒だった人たち)は、確かに非常に厳しい時代を経験しました。その状況が戦前の日本人よりも生きるのが大変だと言われる理由には、いくつかの要因があります。
1. 経済の停滞と失業の長期化
就職氷河期は、日本がバブル経済崩壊後の深刻な不況に直面していた時期に重なります。バブル崩壊後、日本経済は長期的な停滞に入り、多くの企業が新卒採用を大幅に減らしたり、採用そのものを停止しました。その結果、大学を卒業したばかりの若者が正社員として働く機会を得られず、非正規雇用やアルバイトで生計を立てざるを得ない状況が続きました。このような状況が何年にもわたり続いたため、多くの人が経済的に安定しないままキャリアを築けずにいます。
一方で、戦前の日本は、産業の発展期にあったため、農村部から都市へ出稼ぎに出るなど、仕事の機会が比較的多く存在していました。戦前の労働環境が過酷であったことは事実ですが、少なくとも労働力の需要は高かったため、仕事に就く機会自体は多かったのです。
2. 社会的サポートの欠如と孤立感
就職氷河期世代が直面したもう一つの大きな問題は、十分な社会的支援がなかったことです。当時の社会は、若者が就職できないことについて個人の責任や能力の不足と捉える風潮が強く、国や企業からの支援が乏しかったため、多くの人が孤立感や絶望感を抱えました。また、正社員になれなかった人々がその後も非正規雇用のまま定年を迎えるリスクが高まり、老後の不安が大きくなっています。
一方、戦前の日本では、家族や地域社会によるサポートがより強固であり、共同体の中での助け合いが一般的でした。特に農村部では、家族単位で生計を立てることが多く、個人が完全に孤立することは少なかったとされています。
3. 格差の拡大と将来への不安
就職氷河期世代の多くは、安定した正規雇用を得られず、その後も不安定な職を転々としたり、低賃金で働くことを余儀なくされました。また、日本の労働市場は一度キャリアを逃すと再挑戦が難しい傾向があり、キャリア形成のチャンスが少ないまま年齢を重ねた結果、経済的格差が広がりました。このような状況は、彼らの世代が家庭を持つことや、老後に備えることに対して深刻な影響を与えています。
戦前の日本では、生活水準は確かに低く、生活は厳しかったものの、産業が発展する中で経済成長の期待感があり、将来への希望が持ちやすい時代でもありました。特に戦後の高度経済成長期には、頑張れば報われるという感覚が強かったため、個々の努力が社会的に認められる環境があったのです。
4. 社会の期待とのギャップ
就職氷河期世代が経験したもう一つの困難は、彼らが成長期に受けてきた社会的な期待と現実との大きなギャップです。バブル経済の時代に育った彼らは、「一流企業に入れば安定した人生を送れる」といった期待を社会や家族から強く受けていました。しかし、現実にはバブル崩壊後の不況の中で、そうした夢や期待は叶わず、精神的な負担が大きくなりました。
これに対して、戦前の日本は、生活が厳しいのが当たり前という認識が広く浸透しており、貧しい生活や過酷な労働に対する社会的な受容度が高かったとされています。このため、現実とのギャップによる精神的なストレスは、就職氷河期世代ほど大きくなかったと考えられます。
結論
就職氷河期世代は、経済的な不安定さ、社会的なサポートの欠如、将来への不安、そして社会的期待とのギャップに苦しんだ世代です。戦前の日本人も確かに厳しい環境に生きていましたが、当時の労働市場の特性や社会構造を考慮すると、就職氷河期世代が経験したような「機会を得られない」「孤立する」という状況は、より現代的な苦しみであり、特有の困難さを持っていたと言えます。