彼岸と此岸、上の巻き
今から50年近く前、「西遊記」と題したTVドラマがござんした。三蔵法師が、唐といやあ中国ですな、そこを出発し、悟空、猪八戒、沙悟浄のお供と一緒にインドに向かって旅をする痛快エンターテイメントなのである。
●●●フィクションとはいえ
お供の3人はフィクションだけど、三蔵法師は本当にいたんだよ、知っている? 名を玄奘(げんじょう)といいます。そもそも「西遊記」は玄奘が書いた旅日記「大唐西域記」がベースになっているんです。
ちなみに「三蔵」とは名前ではありません。お経を3つに分類した経・律・論と呼ばれる体系であって、それに深く精通した名高い僧侶に贈られる尊称なんです。閣下なんていうのと同じだね。
●●●ガンダーラ、ナンナーラ
TVドラマ版の音楽を担当したのが「ゴダイゴ」、東京外大卒の秀才タケカワユキヒデ率いるロック・グループです。オープニングの「モンキーマジック」、エンディングの「ガンダーラ」。知らないなら一度聞いてみてください。なかなかのものよ。
ドラマでは、唐を出発しインドに到着する旅物語となってはおりますが、本来「ガンダーラ」というエリアは、今のインドじゃないですね。パキスタン北部、ペシャワール辺りのことです。面倒なので、まあここではインドとしときましょう。
旅の目的は、インドに行きゃあそれでいい、というわけではございませんでした。インドに行って仏教(その中でも「唯識」と呼ばれる学問)を学び、経典を収集し、それを唐の国に持ち帰って、翻訳をする、と、そこまでが彼の役割でした。一人何役も。こりゃ超人的だねえ。
●●●みんな大好き、あの般若心経も
そして、それをやり遂げてしまうところが玄奘の、本当に素晴らしい功績なのです。優秀な僧侶であり、稀代の翻訳家でもありました。「唯識」関係の経典類と共に「般若経類(般若心経も含む)」の漢訳も手がけています。日本に伝来した主要な経典類に、ことごとく関わっているのですから、日本仏教の礎になった人物といっても過言ではないのです。
続きはどうなりますか。さてさて以下、下の巻き。