いい加減な翻訳:フーリエ級数と直交多項式, D. Jackson (3)
3. 係数の決定
先の無限級数が各項ごとに積分できると仮定しますと、式(2)を使って式(1)を積分することで右辺の積分は定数項を除いて 0 になりますので、次式を得ます。
$$
\begin{align*}
\int_{-\pi}^\pi f(x) dx &= 2 \pi A_0, &
A &= \frac 1{2\pi} \int_{-\pi}^\pi f(x) dx
\end{align*}
$$
(訳注:関数の無限級数の積分 $${ \int_a^b \{ \sum_n^\infty f_n(x) \} dx }$$と、各項毎に積分した結果の無限級数 $${ \sum_n^\infty \int_a^b f_n(x) dx }$$ が等しくなるためには、 $${ \sum_n^\infty f_n(x) }$$ が一様収束する必要があります。)
$${ k \ne 0 }$$のときの$${ a_k }$$を決定するために、式(1)の両辺に $${ \cos kx }$$ をかけて $${ f(x) \cos kx }$$ となった式を、ここでも項別に積分することが正しいものとして $${ [-\pi , \pi] }$$ の範囲で積分します。その結果は、$${ \cos^2 kx }$$ を含む項一つだけを除けば、式(2), (3), (5)より右辺の各積分は 0 となり、
$$
\begin{gather}
\int_{-\pi}^\pi f(x) \cos kx \, dx = a_k \int_{-\pi}^\pi \cos^2 kx \, dx = \pi a_k,
\nonumber
\\
a_k = \frac 1\pi \int_{-\pi}^\pi f(x) \cos kx \, dx
\tag{6}
\end{gather}
$$
となります。同様に以下が言えます。
$$
\begin{align}
b_k &= \frac 1\pi \int_{-\pi}^\pi f(x) \sin kx \, dx
\tag{7}
\end{align}
$$
$${a_k}$$ の式ですが、$${ k = 0 }$$ としても $${A_0}$$ にはならないことが分かります。ですが、$${ 2A_0 = a_0 }$$ とすれば、$${ a_0 }$$ は式(6)で $${ k = 0 }$$ とすることで得られますので、フーリエ級数は通常次のように書かれます。
$$
\begin{align}
\frac{a_0}2 + \sum_{k=1}^\infty ( a_k \cos kx + b_k \sin kx )
\tag{8}
\end{align}
$$
ここで、$${ a_0 }$$ を含む全ての係数は式(6), (7)で与えられます。
ここで述べた係数の導出法は、無限級数の積分に関してある仮定がありました。ですが、$${ f(x) }$$ が $${ (-\pi, \pi) }$$ で可積分であれば、式(6), (7)で係数 $${ a_k, b_k }$$ は全部決定できますし、その級数自体の収束性や級数が $${ f(x) }$$ を表しているかについて調べることができます。ここからはこの考え方を採用して、式(8)のフーリエ級数を、それが収束するかも知れないし収束しないかも知れませんが、式(6), (7)の積分が意味を持つような関数 $${ f(x) }$$ に対して関係づけるものとします。
(「積分可能」という言葉ですが、この本では、問題としている積分の値がある級数の極限として存在することを意味します。また、広義積分の場合には、その積分の収束が定義される極限の極限値が存在することを意味するのであって、決して公式とかを使って積分を数式で解けるかどうかということを言っているのではありません。)
任意の正の数 $${ p }$$に対して、$${ y }$$を変数とする関数 $${ F(y) }$$ が周期 $${ 2p }$$を持つものとすれば、
$$
x = \pi y / p, \quad y = px / \pi
$$
とおいて $${ F(y) }$$ を $${ x }$$ の関数として $${ f(x) }$$で表すものとします。このとき $${ f(x) }$$は $${ x }$$ に関して周期 $${ 2\pi }$$ を持ちます。$${ f(x) }$$ を式(8)の級数で表現するなら、これは $${ F(y) }$$を
$$
F(y) = \frac{a_0}2 +
\sum_{k=1}^\infty \left ( a_k \cos \frac{k \pi y}p + b_k \sin \frac{k \pi y}p \right ),
$$
という形で表すことになり、係数の式(6), (7)は次式となります。
$$
\begin{align*}
a_k &= \frac 1p \int_{-p}^p F(y) \cos \frac{k \pi y}p dy, \\
b_k &= \frac 1p \int_{-p}^p F(y) \sin \frac{k \pi y}p dy.
\end{align*}
$$
フーリエ級数の理論全体はそれ相応の一般性を持つものですが、ここでは $${ p = \pi }$$ の特別なケースのときの簡単な形の式で話を続けたいと思います。
定積分が曲線下の面積と解釈できることから明らかでもあり、また解析学的定義に基づいて簡単に証明もできますが、周期関数を一周期にわたって積分したとき、その積分区間を長さが同じであれば他のところに変えたとしても積分値は変わりません。もし関数 $${ \phi(x) }$$ が周期 $${ 2\pi }$$ を持つなら、すべての $${a, b}$$ に対して
$$
\int_a^{a + 2\pi} \phi(x) dx = \int_b^{b + 2\pi} \phi(x) dx
$$
となります。周期 $${ 2\pi }$$ の関数のフーリエ級数に関して言えば、積分を積分区間 $${ (-\pi, \pi) }$$でなく $${ ( 0, 2\pi ) }$$に変えることもできますし、他の周期区間に変えることも同様に可能で、時にはそれが必要なときもあります。