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内科専門医試験について⑥(2024年試験の詳細)

先生方、日々の勉強本当にお疲れ様です。

今回は、2024年の内科専門医試験の結果の詳細について書きたいと思います。

前回の記事で、これまでの内科専門医試験の合格率の推移などについて書かせていただきました。今回はより細かい内容に絞っていきますが、実際にここまで詳細には把握しておく必要はないかもしれません。ただ敵を知ることは大事なので、ざっとお読みいただければと思います。

まずは、内科専門医試験の全4回の平均得点率をまとめてみました。

内科学会のHPより作成
(クリックで拡大表示できます)

これは結構重要なポイントです。
全受験生の平均得点率は試験問題の難易度を反映していると言えます。だいたい平均得点が70%前後の試験だということがわかります。不適切問題の調整など、外部からはわからない点もありますが、全体の平均得点は69-74%の5%の範囲に留まっています。不適切問題として取り扱う問題はそこまで多くないとされていますので、全4回でここまで平均点がブレないのは、「問題作成者がすごい」と率直に思ってしまいます。

ただ、2024年の得点率の高さだけは少し違和感があります。内科専門医試験は第1回から第3回まで得点率、合格率ともに低下する傾向にありました。第4回は少し緩和させた可能性はありますが、あまりに差が大きいです。

第3回内科専門医試験は合格率が85.2%。つまり、落ちたのは6-7人に1人。
第4回内科専門医試験は合格率が93.6%。つまり、落ちたのは15-16人に1人。

不合格になった先生の比率で考えると、別の試験なのかと思うほどの差です。このあたりは、やはり内科学会の予想に反して、受験生のレベルが上がったことも関与していると思わざるを得ません。

内科専門医試験は「得点率60%以上で合格」の絶対評価の試験ですので、当然平均得点率が高い年度は合格率も高くなります。2024年は受験生全体の平均点が急に上昇しましたので、合格者(得点率60%以上であった先生)も多いということになります。

ここからは、ややマニアックな内容になります。
これまでの各分野の平均得点率の推移をまとめました。

内科学会のHPより作成
(クリックで拡大表示できます。PCの方が見やすいです)

率直に言って、試験を受ける上で、この細かいところまですべて把握する(暗記するレベルで知る)必要はないと思います。

ざっと解説しますと、各分野とも、平均点が70%台前半になることを目指して、問題を作成しているのだと思います。ただ、さすがに全分野で毎年ピッタリとそのようにはできないので、多少の上下があります。

注目していただきたいこととして、赤文字や青文字で記した部分があります。前年度と比較して10%以上の得点率の上下があった部分に印をつけました。

これは明らかな内科学会側の調整と考えられます。前年度の平均得点率が高すぎた(または、低すぎた)ことを鑑みて、難易度の調整を行った結果、反動として翌年の平均得点率が低くなった(または、高くなった)ということが如実に現れています。ここから得られる情報としては、内科学会はしっかりと過去のデータを解析して、翌年に反映させるように調整しているということです。難しすぎたり、易しすぎたりしないようにしています。これは適切な対応だと思いますが、結果として、逆に易しくなりすぎたり、難しくなりすぎたりすることがあるようです(うまく調整できているところもあります)。実際に、得点率の調整が難しいことは、問題作成者の立場になれば理解もできます。細かすぎるところは割愛しますが、もしお時間があれば、じっくりと表を見てみてください。いろいろと見えてくることがあります。

これをふまえると、2025年の内科専門医試験では、2024年で得点率が高すぎた呼吸器と神経(さらには、腎臓、消化器、内分泌・代謝)はやや難化する可能性があります。一方で、得点率が低かった血液、循環器はやや易化する可能性があります。

ただ、はっきり言ってしまえば、ここまで予測して各分野の勉強時間を調整する必要はありません。先生ご自身の中で、どの科目も同程度の完成度を目指した勉強をしていただければいいです。大事なことは、極端な苦手分野を作らないということです。

内科専門医試験には、いわゆる「死兆星」というものが存在します。これは、標準偏差(-2SD)を下回る得点が2分野以上あると不合格になってしまうというものです。つまり、全体で60%以上の得点率を取ったとしても、極端に成績の悪い分野が2つあると不合格になってしまうのです。例えば、自分の得意分野で高得点を連発して、全体で60%の得点率を超えていても、2つの専門分野で30点などの極端な点数を叩き出してしまうと、不合格になります。

これは受験される先生にとっては、かなり心配なところではありますが、過度に恐れる必要はありません。普通に勉強をしていれば、このようなことはほぼ起こりません。「特定の科目を捨てる」ということをしなければ、2つ以上の死兆星がつくことはまずありません。極端な苦手科目ができないように、できるだけ全科で同程度の仕上がりになるように勉強していただければと思います(苦手分野は捨てるのではなく、時間をかけるということです)。

今回の記事でお伝えしたいことは2つです。
・内科専門医試験は平均得点率が70%前後の難易度の試験である
・極端な苦手分野を作らずに、全分野を同程度の完成度になるように勉強する

すでに4回の結果が公表されたことで全体像も見えてきましたので、内科専門医試験の「勝ち筋」もだんだんわかってきました。今後は、この点も踏まえて、いろいろ考察していきたいと思います。

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