【有料版】 内科専門医試験の総まとめ(2021-2024年の勉強資料)(前編)
(※2024/7、初版からバージョンアップしました)
(※総合内科専門医試験を受験される先生は、冒頭部分だけでも是非お読みください)
今回は内科専門医試験についてです。
内科専門医試験は、J-Osler導入後に新しく実施されるようになった試験で、2021年に第1回が開催され、直近の2024年5月が第4回でした。
さて、はじめに、内科専門医試験と総合内科専門医試験(以下、本試験)における過去問の位置付けについて書きたいと思います。
「試験勉強において過去問は必須」。
これは、あらゆる試験を突破されてきたこの記事をお読みの先生方にわざわざお伝えする必要もないことです。過去問を知らない受験生と比較して、過去問を持っている受験生は、どれだけ有利なのかは言うまでもありません。
ただ、本試験おいて、「全く同じ問題が出るわけではないから過去問はやらなくてもいい」というご意見をネットで見たことがあります。
「全く同じ問題が出るわけではない」、これは事実です。これだけ大規模かつ超重要な内科医のキャリア形成における基軸となる本試験において、前年度と同じ問題をそっくりそのまま使い回すなどあり得ません。「全く同じ問題が出るかもしれないから過去問をやる(丸暗記する)」ということが大きな誤解です。大学時代の「○○学の試験は毎年同じ問題が出るから、過去問の入手は必須」という次元ではないのです。
過去問をやる意味。
優秀な先生方にわざわざ私から説明することすら恐縮ですが、少し書かせていただきます。
内科専門医試験と総合内科専門医試験は、内科全科の医師が受験する試験であり、医師の専門医試験の中では最大規模のものです。試験範囲は内科すベてという膨大なものであり、要求される知識レベルも非常に高い。本当にハードな試験です。
もちろん、勉強の大前提は知識を深くしっかりと固めることです。これだけ試験範囲が広いので、ものすごい量の知識を頭に詰め込んでいく必要があります。人間の脳の容量の限界に挑むレベルです。長期間の地道な勉強なくして合格は不可能です。
ただ、この土台を作る猛勉強をした上で、さらに「本試験における多くの情報を持ち、傾向を把握し、さらに関連知識の補強を行う」という対策を上乗せすることで、合格をより確実なものに近づけることができます。
過去問を見れば、膨大すぎる試験範囲の中で、「出題されやすい疾患がある」、さらには、「この疾患が出たときは治療ばっかり問われている」、「この疾患では診断や合併症の部分を問われることが多い」などの多くの傾向がわかります。よりピンポイントで具体的な「問われやすい項目」という情報についても知ることができます。
そして、実際の試験問題を数年分見ることで、試験の全体像が見えてきます。試験勉強用に全疾患を網羅的に取り扱っている問題集とは異なる、生きた試験問題。そこには様々な偏りがあることがわかります。内科学会やその出題者たちが、角度を変えたり、少しずらしたりしながらも、やはりこのあたりを問いたがっているという意向も見えてきます。全く同じ問題が出るわけではないけれど、少し大きめの「的(まと)」は存在しています。
これだけの情報を持っているか、なにも知らないか。どれほどの差があるかは明白です。
さらに、この過去問を使って、勉強を追加していきます。
答えや選択肢だけ覚えておく単純な丸暗記ではなく、周辺知識も含めて固めておくことが大事です。狙われやすい、少し大きめの「的」を射抜くことができるようになるからです。実際に、試験本番でそのエリアの別角度の問題が出題されたりしても得点できたりします。この過去問から関連知識を補強していくという勉強が本当に強いです。
もちろん、この関連知識を補強していく勉強は、試験に出やすい重要ポイントを強化しているだけではありません。その勉強自体が土台の形成や知識の肉付けという、最も重要で根本的な「力をつける」勉強にも大きく役立っています。
過去問に基づく勉強とは、「得点をもぎ取ること」と「総合力を上げること」の両方に大きく寄与するのです。
これが過去問をやる意味です。
また、補足ですが、実際にはほぼ同じ問題も複数出ています。プール問題と表現される先生もおられますが、私としては重要事項だから何回もしつこく問われていると認識しています。全く同じ問題を期待して過去問をやるのではないけれど、結果的に頻出ポイントは何度でも出るという認識の方がいいと思います。
私がいつも書いていることは、「確実に合格するための思考や勉強法」です。
本試験はそこらの試験とは全く訳がちがいます。準備は最大限に抜かりなくやるべきです。以前の、「【有料版】 総合内科専門医試験の総まとめ」にも書いていますが、本試験において過去問は本当に役に立ちます。これは総合内科専門医試験に余裕で合格することができた私自身が強く感じたことであり、本試験に詳しい著名な先生や余裕を持って合格された先生も、過去問の重要性を強調されています。
あくまで大前提は王道の勉強をしっかりと行うこと。そして、その上で過去問を通して、敵を知り、傾向を把握し、そこから周辺知識を固めるような形でまた地道に知識を補強していく。この勉強は本当に強いです。
ただ、ここで大きな問題があります。
すでにご存知だったり、お気づきの先生も多いと思いますが、最近「内科専門医試験」の過去問の再現を探しても見つからなくなっているはずです。これは業界内での諸事情により、試験問題の復元を公開することに懸念が生じたためです。
後輩たちのために情報を提供してくれていた先生方が一斉に公開を中止しました。以前はネットで検索すれば、かなり精度の高い復元を見れたのですが、現在はほぼ消滅しています。そして、今後この状況はさらに厳しくなる可能性があります。
このような背景により、今後受験される先生は、これまでは可能であった内科専門医試験の過去問の入手が難しい状況にあります。しかし、私自身がそうであったように、「過去問を知りたい」「情報が欲しい」「傾向を把握したい」「過去問をベースにした対策や関連知識の補強をしたい」と考えておられる先生は多いはずです。
ここで話は変わります。
例えば、試験問題で、患者背景や経過が長々と書いてあり、身体所見、血液検査、画像などが提示されており、その治療法を問う問題があったとします。5つの選択肢が並び、正解を選択させる。1ページを使った長文+画像の問題です。
さて、「軽症のCD腸炎の第一治療→MNZ」という事実があります。これは医学的知識です。ガイドラインにも教科書にも問題集にもネットにも、どこにでも載っていることです。ただの医学的知識です。それ以上でもそれ以下でもありません。
内科専門医試験は2021年が第1回で、2024年5月に第4回が実施されました。
J-Osler導入後なので、現在までに4回しか行われていません。
今回は内科専門試験の勉強資料です。一気にまとめました。
要点だけに絞っていますので、実際の試験問題よりも容易ですが、総復習にはちょうどいいようにも思います。ご興味を持っていただいた先生は、早めの入手をお願いいたします。
※本記事は他の有料記事の転載ではありません。
※第○回という記載はまるで再現しているようであり用いません。
※全部で10の専門分野に分けられますが、総合内科は関連する分野にできるだけ振り分けています。前半は消化器、呼吸器、血液、感染症、アレルギー・膠原病です。後半は循環器、内分泌代謝、腎臓、神経、その他です。
※こちらは1問1答形式でまとめた勉強資料です。その上で興味がおありの先生に限って読んでいただければと思います。過去問再現としてのご購入はお控えください。
それでは前編です。
総合内科専門医試験の総まとめでは「消化器」を公開していましたので、内科専門医試験の総まとめでは「アレルギー・膠原病」からはじめます。
<アレルギー・膠原病(74問)>
✔高齢発症の関節リウマチ→急激な発症、早期から関節破壊あり
✔関節リウマチに対してMTXで治療中、最近増悪傾向、確認すること→青汁の摂取(葉酸によるMTXの作用低下)
✔関節リウマチで治療中の若年女性、挙児希望あり→MTXを中止
✔関節リウマチに対してMTX使用中、胸部CT(肺に浸潤影)→MTXによる薬剤性肺炎
✔MTX肺炎の治療→ステロイド
✔関節リウマチで使用する薬剤→TNF阻害薬、抗IL-6受容体抗体
✔関節リウマチに使用する生物学的製剤、分子標的治療薬→TNF阻害薬、IL-6阻害薬、T細胞活性化阻害薬、JAK阻害薬
✔関節リウマチで治療中、発熱、リンパ節腫脹が出現→MTX中止 (MTX関連リンパ増殖性疾患)
✔白血球が減少する疾患→SLE、シェーグレン症候群、MCTD
✔SLEで最も感度が高いもの→抗核抗体(最も特異度が高いのは抗Sm抗体)
✔SLE→腎生検でC1q沈着
✔TNF阻害薬が適応がない疾患→SLE
✔SLEに使用する薬剤→I型IFNα受容体阻害薬(SLEのバイオ製剤は、抗BLyS抗体もあり)
✔SLEの最多死因→感染症(ループス腎炎、CNSループスも予後に影響する)
✔梅毒STSで偽陽性→SLE、妊婦、Hansen病、麻疹やEBVなどのウイルス感染症
✔手の写真(機械工の手)→皮膚筋炎
✔皮膚筋炎/多発性筋炎について→抗ARS抗体陽性(他には、抗MDA5抗体、抗TIF-1γ抗体、抗Mi-2抗体、抗HMGCR抗体、抗SRP抗体)
✔呼吸困難、胸部CT(肺炎像)、手の写真(Gottron丘疹)→抗MDA-5抗体陽性(皮膚筋炎)
✔中年女性、四肢近位筋の筋力低下、手指関節背面の丘疹→抗ARS抗体(皮膚筋炎)
✔皮膚筋炎の患者が貧血進行あり→悪性腫瘍の検索
✔中年女性、Raynaud現象、咳嗽、嚥下時のつかえ→抗Scl-70抗体、抗U1-RNP抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体、抗セントロメア抗体(強皮症)
✔ Raynaud現象の治療→Ca拮抗薬、プロスタグランジン製剤、エンドセリン受容体拮抗薬
✔強皮症の皮膚硬化の治療→ステロイド
✔強皮症、胸部CT(間質性肺炎)→シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、ニンテダニブ
✔強皮症腎クリーゼの治療→ACE阻害薬
✔Raynaud現象、手指のソーセージ様腫脹、四肢近位筋の筋力低下あり、抗核抗体陽性→抗U1-RNP抗体を測定(MCTD疑い)
✔症例提示、U1-RNP抗体陽性→右心カテーテル検査、呼吸機能検査(肺高血圧と間質性肺炎の合併の確認)(MCTD)
✔MCTDで注意するべき合併症→肺高血圧、間質性肺炎
✔中年女性のドライアイ、ドライマウス。シェーグレン症候群の疑い。特異度の高い抗体→抗SS-B抗体
✔ベーチェット病について→口内炎も外陰部潰瘍も有痛性
✔ベーチェット病の副症状→関節炎、副睾丸炎(=精巣上体炎)
✔ベーチェット病に適応のある生物学的製剤→TNF阻害薬(ベーチェット病のバイオ製剤はTNF阻害薬のみ)
✔強直性脊椎炎→HLA-B27
✔尋常性乾癬で皮膚科に通院していた患者が関節痛→乾癬性関節炎
✔皮膚写真(銀白色の鱗屑)、関節痛あり。この疾患で認めるもの→DIP関節炎、体軸性関節炎、付着部炎、爪病変(乾癬性関節炎)
✔乾癬性関節炎で使用する薬剤→TNF阻害薬(他には、抗IL-12/23p40抗体、抗IL-23p19抗体、抗IL-17阻害薬、JAK阻害薬なども適応あり)
✔NUDT遺伝子多型の確認が投与前に必要な薬剤→アザチオプリン
✔疾患と好発部位の関係について→関節リウマチ:DIP関節が少ない、乾癬性関節炎:DIP関節が好発、痛風:第一MTP関節が好発、偽痛風:膝関節が好発
✔大型血管炎に分類されるもの→高安動脈炎、巨細胞性動脈炎
✔巨細胞性動脈炎の症状→虚血性視神経症、顎跛行
✔高齢男性、間質性肺炎、腎障害、MPO-ANCA陽性、PR3-ANCA陰性→リツキシマブは治療選択肢である(MPA)
✔高齢者、MPO-ANCA陽性、R3-ANCA陰性、気管支喘息などのアレルギー疾患なし→リツキシマブの適応あり(MPA)
✔中年、気管支喘息や副鼻腔炎の既往あり、肺炎像あり、腎障害なし、多発性単神経炎あり→EGPA
✔ EGPAで用いる薬剤→ステロイド、シクロホスファミド、抗IL-5抗体(メポリズマブ)、IVIg
✔IgG4関連疾患に該当する疾患→大動脈周囲炎
✔ IgG4関連疾患→間質性腎炎、唾液腺腫脹(他には、自己免疫性膵炎、後腹膜線維症、大動脈周囲炎なども)
✔IgG4関連疾患の病理像→IgG4陽性形質細胞の浸潤、花筵様繊維化、閉塞性静脈炎
✔顎の下の腫脹、IgG4高値→IgG4関連涙腺・唾液腺炎(旧ミクリッツ病のこと、顎下腺が多い)
✔中年女性、ぶどう膜炎、肺門リンパ節腫大、心機能低下、病理提示(非乾酪性肉芽腫)。治療→ステロイド(サルコイドーシス)
✔中年女性、ぶどう膜炎、心電図(徐脈、房室ブロック)。診断に有用な検査→心エコー、造影MRI、Gaシンチグラフィー、FDG-PET(サルコイドーシス)
✔成人Still病の血液検査所見→WBC 10000以上(好中球が80%以上)、肝機能障害、抗核抗体陰性、RF陰性、フェリチン上昇
✔成人Still病について→血球貪食症候群の合併あり
✔持続する発熱(不明熱)、サーモンピンク疹あり。合併することがあるもの→血球貪食症候群(成人Still病)
✔血球貪食症候群の検査所見→LDH、トリグリセリド、フェリチン、IL-2レセプター上昇
✔中年女性、発熱、血球減少、EBV-DNA陽性。フェリチン上昇、可溶性IL-2レセプター高値。治療→ステロイド (血球貪食症候群)(診断基準:発熱、脾腫、血球減少、フィブリノーゲン低値、トリグリセリド高値、フェリチン高値、IL-2レセプター高値)
✔中年女性、3ヶ月以上持続する全身の痛み。各種血液検査に異常なし、CRP上昇なし、自己抗体陰性。治療→プレガバリン、デュロキセチン(線維筋痛症)
✔高齢女性、首や肩など全身の近位部に左右対称の痛みが急に出現。各種自己抗体は陰性。血液検査所見について→CRP高値(リウマチ性多発筋痛症)(PMRは炎症反応上昇以外に特異的なマーカーはない)
✔リウマチ性多発筋痛症の治療→ステロイド(著効する。巨細胞性動脈炎の合併にも注意)
✔若年女性、発熱、頸部リンパ節の腫脹→菊池病(生検が診断に有用、治療は経過観察)
✔アナフィラキシーショックの対応→アドレナリン筋注。静注は×
✔疾患とアレルギー→気管支喘息:I型アレルギー、SLE:III型アレルギー、Stevens-Johnson症候群:III型アレルギー、過敏性肺炎→III型、IV型アレルギー
✔接触性皮膚炎の検査→パッチテスト
✔貼付試験(パッチテスト)の機序→IV型アレルギー
✔季節性アレルギー性鼻炎について→I型アレルギー、他のアレルギー性疾患の合併あり、鼻汁中の好酸球上昇、RASTで確認
✔季節性アレルギー性鼻炎の生物学的製剤→抗IgE抗体(オマリズマブ)
✔季節性アレルギー性鼻炎(スギ)、抗ヒスタミン薬などの既存治療では効果不十分、副作用もあり→舌下免疫療法(花粉症のシーズン前に行う)
✔食物依存性運動誘発性食物アレルギーで最多の原因→小麦
✔口腔アレルギー症候群について→果物、野菜、豆類の摂取が原因、花粉と交差反応がある食物を摂取することで発症する、RASTが有用、果汁を用いたプリックテストを行う、加熱処理をすると摂取可能になることが多い
✔薬剤アレルギー→I-IV型アレルギーのいずれの機序でも発生する
✔薬剤過敏症症候群(DIHS)について→HHV-6の再活性化が関与(重症薬疹であり、原因薬剤を中止しても改善しないことも多い)
✔中年男性、鼻汁、鼻閉、嗅覚障害、CT(篩骨洞の蓄膿)、気管支喘息とアレルギー性鼻炎の既往あり→好酸球性副鼻腔炎
✔若年者、突然全身の浮腫、腹痛、呼吸苦、蕁麻疹はない、以前にも同様の症状が何度かあった→C1インヒビターの活性低下、補体低下(遺伝性血管性浮腫: HAE)
✔HAEの治療→ブラジキニンB2受容体拮抗薬(発作時)、C1-インアクチベーター製剤、カリクレイン阻害薬(発作の抑制)
✔若年女性、全身の浮腫、血液検査で好酸球上昇あり。治療→ステロイド(好酸球性浮腫)(日本人は非反復性が多く、経過観察のみでの自然寛解もある)
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