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母のそばで♡誕生会篇
95歳は珍寿というらしい。
99歳は白寿ということは知っていたけど。
もう、何寿だろうと毎年お祝いしよう。
誕生会計画
誕生会の計画を早くから立てた。
母の好きな料理屋に行くつもりだったけど、
遠い所は無理みたい。
毎年、料理と眺めの良い店でお祝いしてたけど、
今回はあきらめよう。
では、お弁当にしてもらうのはどうだろう?
電話でお店に相談したけど、無理だった。
では、もう一つのお気に入りの店はどうだろう?
母お気に入りのメニューもたくさんある。
場所も近いし。
母に聞いてみたら、外に出るのが嫌みたい。
疲れた時、家ならすぐ横になれるもの。
不安なんだな。
結局、もう一つのお気に入りのお店に仕出しをお願いした。
我が家でゆっくりお祝いしよう。
あとはお花とケーキの注文。
母の誕生祝いに乗っかって、みんなで
美味しいものを食べる会だ。
平和な一日
![](https://assets.st-note.com/img/1711352906398-97cu6ibneN.jpg?width=1200)
警報級の大雨だが、予定通り皆が揃った。
よくぞご無事で!
集合の途中に何事かあれば、母の寿命が縮む。
長寿を祝う会なのに、寿命を縮めてはいけない。
お花とケーキを取りに行き、
料理も無事に届いた。
家ですることにして、良かった。結果論だけど。
外は激しい雨。
でも、家の中は穏やかで優しい。
平和だ。
皆が揃った。
といっても母と、私たち娘とその連れ合いと。
たまたま妹について来た可愛い母のひ孫と。
平和だ。
母が普通に呼吸ができること。
私たちにつながる人たちに心配がないこと。
皆が元気で健やかなこと。
今、ここに砲弾が飛んでこないこと。
うっかり!
![](https://assets.st-note.com/img/1711345214776-JnteIZnYzV.png)
ケーキのロウソクに火をつけてみんなで歌った。
♪Happy Birthday to you♪
「ふーってして」と私が言うと
妹が「大丈夫?危なくない?」と心配そう。
あっ! そうだった!!
酸素を吸っているから、
近くでロウソクに火をつけたり
お線香を焚いたらいけないのだった。
慌てて灯を消そうとするのに、
慌てているから消えない。
母の代わりに「ふーっ」とする人、
手で消そうとする人。
みんなが起こす風で火はゆらゆらして、
ドキドキした。
妹が言った意味は、
「お母さんは肺の病気で呼吸がきつくなるから」
ふーっとするのは危険かも、ということ。
私が酸素濃縮器と炎の関係で慌てたのだって
早とちり。
機械の近くで火や煙を出してはいけない、
と言われていたのだ。
機械は食事会の隣の部屋にあって、
チューブを引いているのだから大丈夫。
そのことに気づいて、皆で笑った。
来年の桜
![](https://assets.st-note.com/img/1711345462611-MHkPKgQSR2.jpg?width=1200)
「来年の誕生祝はお母さんの好きなレストランに行こうね」と妹が言う。
気が早いな。
来年、か…。
「来年の桜は見れるでしょうか」
そんなセリフをどこかで聞いたか
読んだ気がする。
命のことをやんわりと尋ねる
美しい聞き方だと思う。
ここで、ハタと考える。
どうして桜なんだろう?
来年のチューリップ
来年のアジサイ
来年のヒマワリ
来年のモミジ…
季節を感じるなら何でも良いような気もするけど
「来年の桜」
確かに、これがなぜかピッタリする。
1か月前は「今年の桜は見れるのか?」
そう思っていた。
早く咲く山桜は見た。緋寒桜も見た。
これから八重桜やソメイヨシノが咲いてくる。
お花見に行こうね、と楽しみにしているのだ。
まずは今年の桜を堪能しよう。
「来年のことを言えば鬼が笑う」
チョッと違うか?
やっぱり日本人は桜が好きなのかな、と思う。
自然が好きなのだ、きっと。四季があるし。
花鳥風月。
美しいものが好きだし、そこに人生の何かを重ねる。
一見調子が良いけど
![](https://assets.st-note.com/img/1711362233620-VQ7RHp5M3m.jpg?width=1200)
母はごちそうを食べた。
「お刺身、おいしいね」と食べた。
ケーキも食べた。
去年からすると、食べる量は恐ろしく
減ったけど。
そうやって、身体は旅立つ準備をするんだよ
ある人に教えてもらった。
妙に納得。そうなんだ。
すでに体重は10Kほど減ったことを知っている。
この1~2か月で。
一緒にお風呂に入るから知っている。
かなり細くなった足を撫でながら
「若いとき、こんなに細かったら
良かったのにね」と母が言う。
「そうね」と小さく相槌を打つ。
それ以上スマートにならなくて良いよ。
体重計にそっと乗っている。
「何キロだった?」と聞いてみた。
「そんなに減ってない」とちぐはぐな返事。
正直に言いたくないのだね。
かなりぽっちゃりだったけど、
下着もサイズダウン。
今までのは大きすぎるので、新たに買った。
たはむれに母を背負ひて
そのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず
石川啄木
昔は「母を背負いてあまりの重さに三歩あゆまず」
なんてからかったこともある。ごめんなさい。
いや、背負うなんて考えるのも無理なほど、体格が良かった。
背は低いけど、ぽっちゃりさん。
今、本当に背負えそうでコワイ。
背負ったら泣いちゃいそうだ。
来年の桜が見れたらキセキだろうな。