見出し画像

母のそばで♡親子の時間

95歳の母と64歳の私は、ゆっくりと温もりのある時間を生きている。
こんな風に過ごせるなんて半世紀ぶりだ。


母とは戦友


両親のもとに生まれて、妹2人と合わせて5人、普通に暮らしていた。ところが私が小学校1年生の時、父が病気で入院。それから母の苦労が始まった。

母は昼間は働き、家では私たちの面倒をみた。父が退院しても、いつまた入院するかわからない状況。時代が良かったし、父の会社も福祉がしっかりしていたので給料が無くなることはなかった。

それでも経済的に不安があった母は、素人ながら資産形成と資産運用をした。副業で小物も作っていたし、よく身体がもったものだと感心する。

病院食に抵抗があった父に、好きなものを作って差し入れしていた。私や妹はそれを持って病院を訪れた。とやかく言われない時代だった。

そんな風だから、家では女4人で協力して生きた。長女である私は、ぼんやりして気が利かない子どもではあったが「お母さんを支えなきゃ」と健気に思っていた記憶はある。生意気にも母と共に闘っている気持ちで。

さて、紆余曲折いろいろ大変なことを乗り越えて、父は何とか復活。手術も何度か受け、もうだめかという時もあったが父は精神的に強かった。後に「お前たちを残して死ぬものか!!」と強く思って歯を食いしばり、頑張ったと聞いた。

親子の時間


私は高校を卒業すると、他県の短大に行った。短大を卒業してからは実家から仕事に通い、それが両親と暮らした最後になる。

転勤で家を出てから憧れの一人暮らし。それ以来一度も実家で暮らしたことはない。世間一般のよくある話。私の周りも多くはそんな感じだ。実家は暮らす所から尋ねる所へと変化した。

私は仕事をしながら、結婚して子どもが生まれ、その子どもたちも自立していった。何の変哲もない平均的な流れ。個人的には辛い経験もしたが、それさえよくある話。

つまり、親子が共に暮らせる時間は短い、ということだ。

本当にこども時代は短く、親子一緒に過ごせる時間は思っているより短い。もっと言えば、人生は思ったより短い


母が私のもとへ


父は大変な病気をして闘病生活も長かったが、母の賢明で熱心な介抱により奇跡的に晩年は元気になった。夫婦で海外旅行をするまでに回復。止められていたお酒も解禁となったが、父は少し口にするだけだった。

平和な時は流れーーー。

父が亡くなった時、子どもの時と同様に「お母さんを支えなきゃ」という強い使命を感じた。悲しみと同時に、緊張感で背筋がピンと伸びたものだ。

あれから10年。母のガンが進んでいることが判明。70歳代で肺ガンの大手術を2度も受けた母。術後の経過は順調で、90歳超えても元気。すっかり病気のことを忘れていたくらいだ。

私の夫が強く勧めてくれたこともあり、母は私の家で療養することに。運命は不思議なもので、近くの病院に緩和ケアがあることを知った。そこの訪問診療を受けることにしたのだ。

私と夫と母の3人の生活。そこに妹たちや、叔母やいろんな人が訪ねてくる。遠くにいる叔母とは電話で話す。みんなと一気に身近になった気がする。

子どもの時以来の母との生活。こんなことがなければできなかった生活。先がそんなに長くないと思うから余計に愛おしい時間だ。

母が夜中に苦しい時は薬を飲ませて背中をさする。

苦しさが落ち着いてから、母は昔の話をしてくれた。

ずっとずっと昔のこと。母は体調を崩してトイレで吐いていた。苦しくてたまらなかった。気づいたら私が母の背中をさすっていたという。「『大丈夫?』と言いながらずっとさすってくれたよ」、と懐かしそうに話してくれた。私が5歳くらいの頃の話。

「60年経って、同じことしてるんだね」と一緒に笑った。

母が父の所に旅立って行っても、私はずっと一緒にいる気がするのだろう。
だって、父の存在も近くに感じるから。
「いなくなった」とは思わないから。

だとすれば、親子の時間は長いことになる。
そう思ったとき、なんだかホッとして温かい気持ちになった。

今、精一杯できることをして、母が旅立って行っても存在を身近に感じられたら寂しくない。母も父と一緒にこちらの世界を見守ってくれるだろう。親子5人はいつでも一緒だ。

私が旅立つときは両親が迎えに来てくれると信じている。もし夫が先に旅立ったら彼も一緒に来てくれるだろう。そう考えると楽しくなる。怖くないし、寂しくもない。

信心深くない私だけど、そこだけはなぜか堅く信じている。

出会い


今までの人生で、実に多くの人と出逢ってきた。
その筆頭は両親だろう。

親は子どもを選べない。
子どもも親を選べない。
偶然の出会い。

まじめに考えたら本当に不思議なことだ。
キセキ。

この世は不思議とキセキに満ちている。

この出会いに感謝したい。
お父さん、お母さん、
私はあなた方のところに生まれて幸せです。
産んでくれてありがとう♡

最後まで読んでいただきありがとうございました♡


いいなと思ったら応援しよう!