欲望の芽
「ここまでは誰でも登って来られるのよ、生まれ持った自然の力で」
「しっかりした休憩所がある。あそこに居ついたっていいのかな」
「それは勝手だけどまだまだ上があるわよ、登らないでもう満足なの?」
「上をめざせば疲れそうだし、だいいち危ないんだろう」
「この辺り集落が多いわね、ここまでで満足しているのかな」
「なんか山のてっぺんのようだ。おそらく勘違いしているんだろうよ」
「もっと上へ登れそうな人たちが大勢いるのにもったいないわね」
「登れる道を知らないんだろうし、探そうともしていないみたいだ」
「ここが山頂かしら、下界の見晴らしが素晴らしいわ」
「上が霧で覆われているだけだよ、もっと登れる。その気があればな」
「かなり上まで登ってきたわよ、大変な努力と苦労を重ねてね」
「どうだもっと別の場所、霧の中を抜けて雲の上から眺めてみないか」