うるおう社会
権力の疼き
「どうしてあんたなんかのいうこと聞かなければならないのよ」
「ふふふ、なんと俺は違反撲滅隊に入ったんだ」
「ふうん、いうこと聞かないと捕らえるってかい。やれるもんなら捕まえろ」
「鼻持ちならねえ女だな、のぞみどおり逮捕してやる」
「脅したのは彼のほうです、わたしじゃありません」
「見苦しいぞ、俺は見たんだ。諦めて罪を認めるんだな」
「それなら確かな証拠をだしてよ、どうせでっち上げのくせに」
「俺は違反撲滅隊だぞ、正義に則っているんだ」
「権力の私物化だわ、しっかりした証拠があるのよ」
「なんだとふざけるな、それならここに出してみろ」
「横暴罪であなたを摘発します。証拠はご覧のとおりでご異存ありませんね」
「なんだよおまえ、違反者摘発隊だったのか」
市民の協力平和な社会
* 闇バイト捉えられれば十万円より
* 反則金支払わなければ前科もち
* 捕まれば尻尾きりだぜ闇バイト
* 捕まると国庫うるおす闇バイト
「今月の違反者は六千五百十七人だそうね」
「闇バイトはそのうち何人だろうか。最近公表してんのかな」
「やたらと捕まるのでかなり少なくなったようだわ」
「そういえば特殊犯罪も減ったようだな。みんなで捕らえりゃ平和な社会か」
「いちじは通報者をバイトにしようって話があったけど」
「それも出来高払いな、やらなくて正解だよ」
「そうね、ねつ造や焦りでの通報で警察が忙しくなるものね」
「穏やかな生活を望むボランティアだけにしてよかったな」
地味な行い
「良かったなあ、きのうだったら犯罪者だ」
「どういうことですか」
「きょうから規則違反者として反則金を支払えば罪に問われなくなったよ」
「それって不気味なんですけど」
「昨日の特殊犯罪違反者は二千九百十四人でした」
「切り捨てられる下っ端を捕まえるだけでよくなったから楽だよな」
「そのうち特殊犯罪もなくなる勢いだ。なにせとかげの尻尾がいなくなる」
「こうして毎日報道されれば、やろうとする奴がいなくなるだろうよ」
「犯罪に加担したのに実名報道できないってなんなんだよ」
「反則金を支払えばただの違反者だからな。報道は人数だけなんだ」
「そんなんで犯罪の抑止力になるんだろうか」
「下っ端は捕まりやすい、反則金を払わされる。やる気になるのかな?」