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真夜中の丑三つ時に現れる謎の少女にビビりまくる夫

ご覧くださりありがとうございます!
今回の主役は私の夫、小心者のライオンです。

【酔い覚まし、年越しの怪談】

我が家では、毎年大晦日に必ず蟹を食べます。理由はシンプルに、みんな蟹が大好きだから。
さて、そんな大晦日は我が家にとって一年で最もゆったりとした時間をみんなで過ごせる日。そんな楽しい大晦日の丑三つ時、私たち夫婦にとって忘れられないエピソードがあるのです。

その年の大晦日も、我が家では蟹鍋と、焼き蟹をおもいっきり堪能しました。
美味しい蟹を争奪戦のように取り合って、どうでもいい会話で盛り上がって、ボウルに蟹の殻だけが山積みになったところで一次会は終了。子供たちは順にお風呂に入って各自の部屋へと姿を消します。毎年恒例のお笑い番組とやらを姉妹で見るらしい。
私と夫は二次会へ突入です。お互い酒好きなのもあって、大晦日は各々好きな酒を持ち寄って一緒に呑むのです。ちょっとしたつまみを用意して、夫は日本酒とイカのスルメをあてに、私は赤ワインとチーズをあてに、嗜好品も性格も全く違う二人なのですが、そんな二人が一年を振り返りながら呑んで語り合うのです。

話してる内容なんてもんは、人様にとってはどうでもいい内容なんで割愛します。
やがて、夫の酒のあてが無くなってしまい手持ち無沙汰になった夫。日本酒にチーズはどうにも好まない夫は、急に立ち上がりコンビニまで歩いてつまみを買いに行くと言い出しました。
時刻は深夜2時。
「欲しいもんあったら一緒に買ってきたるで」
「えっと、ほんならハイボール」
「オッケー。ほな、行ってくるわ」
こんな真夜中に酒のつまみを求めてコンビニまで行こうとするなんて、45歳を過ぎたオジサンが何だか無邪気な若者のように見えました。夫は小銭をジャージのポケットに入れると鼻唄を歌いながら部屋を出ていきました。夫の鼻唄というのは、昭和に流行ったJポップがベースとなっているのでちょっぴり恥ずかしい時もあるのですが、この時は真夜中ということもあり大声でない限りは特に気になりませんでした。
一緒に呑んでいる相手が楽しそうにしているのはこちらとしても嬉しい限りです。ボトルにあと少しだけ残ったワインをグラスに注いで私は一息ついた。今年もいろいろあったけど、家族みんな各々よく頑張ったんじゃないかとグダグダ考えながら夫の帰りを待ちました。

しばらくして、玄関の鍵を開ける音がしたので夫が帰ってきたことが分かりました。すると、廊下をドタバタと騒々しく走る音がして、勢いよくドアが開いたかと思いきや、血相を変えた夫が息を切らしながら部屋の中へと転がり込んできました。
「どうしたん?ほんなおもろい顔して」
「おい、ヤバイぞ!」
「なにが?」
「ヤバイ女おったんやて!」
このまま、私たち夫婦のアホみたいな喋り言葉でnoteに書き続けることはかなり危険なので、夫が体験した内容をここで簡単に説明します。


夫は家を出ると、外灯がぽつりぽつりと数えるくらいしか灯っていない住宅街の暗い夜道を、陽気な足取りでコンビニまで歩いて向かった。お酒の作用も働いてか、夫は鼻唄を歌いながらてくてくと何気に歩いていた。
自宅から二軒隣は空き地になっていて、雑草対策なのか砂利が一面に敷かれている。その空き地は、外灯の光も僅かにしかとどかない位置にあるので、夜ともなればもっぱら真っ暗闇な状態だった。夫がそんな空き地をいつものように通り過ぎようとしたその瞬間、何か黒い大きな塊が空き地の入口近くに置かれているのを感じたのだ。夫は一瞬立ち止まり、少しだけ歩み寄って見てみると、そこには髪の長い少女が一人三角座りをして座っていた。
「うわっ!」
夫は思わず大声を出してしまった。
そして、全力でその場から逃げ走り去った。
夫は目的だったコンビニへ駆け込むと、(店員さんをビビらせてはいなかっただろうかと思う…)とにかく自分のつまみとハイボールを買った。夫はコンビニを出ると、またあの空き地の前で謎の少女に出くわすのはどうしても避けたかったようだ。夫は酔い覚めした脳みそで必死に考えた末、あの空き地を通らずに済むようにわざわざ迂回して帰ってきたのだ。


とまあ、夫のかなり興奮した話の大筋はだいたいこんな感じです。
私は、思わず家出か何かじゃないの?と夫に言いましたが、それは考えられないと反論してきました。夫が言うには、我が家の周辺のお宅はお年寄り夫婦がほとんどだし、若い女の子なんてのは我が家の娘たちくらいなもんで、もし、どこか遠くに住んでいる少女が家出してきたのだとしても、あんな真っ暗な空き地で座り込む方がおかしいと半分キレ気味に主張してきました。そうとう怖かったんでしょうね…。
夫はしばらく、窓の鍵をやたらと確認したり、「ビビったー、あー、ビビったー」を呪文のように繰り返すのでした。


おしまい☆
では、またね(^-^)/





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