さくらガール。
乃木坂高校。
3時間目の現代文が終わり、昼休み前のラスト授業へ。
まぁ次は世界史の授業のため聞いていれば良いだけだ。
先生「お前ら席につけー。授業始めるぞー。」
今日も無精髭を蓄えた清潔感の全くない男性教師が教室に入ってきた。
〇〇「ふわぁ、、、」
ポカポカと暖かい陽気、教室の窓から入ってくる気持ちの良い春風。
それらを感じる場所として、入学初日に勝ち取った窓際最後列の席は最高だ。
居眠りの状況として、このコラボに勝る組み合わせを僕はまだ知らない。
〇〇「すぅ、、、すぅ、、、」
そうして僕は眠りについた。
??「、、、、、、寝ちゃった。」
??「かわいい寝顔だなぁ、、、、、///」
あれから世界史の授業はぶっ通しで眠り、昼休憩を挟んだ後はそれなりに、、、まぁ真面目に受けた。
そして時計の針は放課後を知らせたとき。
〇〇「今日は部活もないし、さっさと帰るか、、、」
僕は足早に教室を去り、自宅へと向かっていた。
しかしその道中、、、
〇〇「あっ!確か明日が提出期限の課題!
学校においてきたな〜、、、」
忘却の彼方へ飛ばされていた課題の存在を思い出し、せっかく歩いてきた道を戻る。
ガラララッ、、、
〇〇「え?」
僕は一瞬、目の前にあるものが信じられなかった。
??「すぅ、、、すぅ、、、」
僕の席に誰かが座って眠っている。
しかも女の子だ。
僕には女友達はおろか男友達すらいないというのに。
っていうか、この子って確かクラスメイトにいた気がする、、、
僕は全体的に交友関係は広く浅くという身分だ。
だからあまりクラスメイトとも交流が少ない。
っていうかどうしよう!!
この子が寝ているから課題出せないし、僕なんかが声をかけるわけにも、、、!!
僕は焦燥に駆られ、付近の机に足をぶつけてしまった。
ガタンッ!!
〇〇「いってぇ、、、」
??「、、、ん?」
〇〇「あっ!ごっ、、、ごめん!」
僕は咄嗟に謝ってしまった。
いや待て、僕はただ忘れ物を取りに来ただけだ。
その僕がなんで謝っているんだ?
日本人の謝罪文化は僕が思っていたよりも強力に根付いているらしい。
??「あぁ〜、、、〇〇くんだぁ、、、💕」
女の子は目の前に立っている僕を覗き込むように顔を向けた。
、、、めっちゃ可愛いな。
??「あれぇ〜、、、私の名前分からないかなぁ、、、?」
なんだか呂律も回っていない。
寝ぼけているのだろうか。
さくら「私は遠藤さくらって言うんだ!
よろ、、、し、、、」
挨拶の途中で言葉が途切れてしまった遠藤さん。
しかもほっぺたの辺りが紅潮していくような、、、
さくら「ごっ、、、ごっ、、、ごめんなさーい!」
〇〇「えっ!?なになに!?」
さくら「あのっ!
〇〇くんの机で寝ていたのはあれです!
自分の机と間違えちゃって、、、///」
〇〇「いや、、、遠藤さんの席って僕の席とは
真反対のところだよね?」
遠藤さんの席と僕の席は、ちょうど教室の対角線を結ぶ点と一致している。
これを間違えるって言うのは、、、
さくら「はわわっ、、、///」
手で顔を押さえ、分かりやすいくらいに焦っている遠藤さん。
ほっぺたの紅潮も最高に達している。
さくら「ごめんなさい、、、///」
言い訳が何も思いつかなくなったのか、シンプルな謝罪をする。
〇〇「えーっと、、、なんで僕の席で寝てたの?」
さくら「それは、、、この席で眠ったら気持ちいい
だろなぁって、、、///」
〇〇「そうなんだ笑。」
遠藤さんには、清楚でお堅いイメージがあったから少し意外に思う。
さくら「あとね、、、〇〇くんが、、、///」
〇〇「ん?ぼく?」
さくら「、、、好きだから!」
〇〇「、、、は?」
え?待って?
今日が初対面のめちゃくちゃ可愛い子に告白されるって何?どんな状況?
さくら「、、、少し前に〇〇くんがさ。」
現状が理解できていない僕を見て、遠藤さんは静かに語り始めた。
数週間前。
今日は晴れ。
私は眩しい太陽に目を細めながら家を出た。
さくら「んっ〜!今日いい天気だなぁ♪」
こんな日は何かいいことが起こりそう!
テレビ番組の占いも1位だったし!
朝からウキウキした気持ちを胸に、最寄駅へと向かった。
「え〜間も無く1番線に電車が到着いたします。黄色い線の内側にお下がりください。」
鼻にかかった駅員さんの声を合図に、いつも私が乗る電車がやって来た。
ガヤガヤ、、、
なんか今日は人が多いなぁ。普段から通勤するサラリーマンや学生はたくさんいるが、今日は特に人が多く感じる。
まぁ、しょうがないか、、、
私は甘んじて満員電車に身を預けた。
息が詰まりそうな空間になんとか耐える。
吊り革には何とか手は届いているが、そのおかげで自由な身動きが取れなかった。
その時、、、
さくら(きゃっ、、、!!)
誰かにお尻を触られている。位置からすると、私の真後ろにいる小太りのサラリーマンの人かな、、、
さくら(うぅ、、、気持ち悪いよ、、、)
恐怖が段々と募り、声を出す事もできなくなっていた。
さくら(誰か助けて、、、)
その願いは虚しくも叶いそうもなかった。
電車に乗る人は首を下に傾け、1枚の電子機器とにらめっこ中だ。
私を触る手は遠慮の欠片も無く、どんどんと力を増していく。そしてスカートの中に侵入しようとした時、、、
さくら(いやだ、、、やだ、、、!!)
〇〇「おいこらジジイ。何やってんだ。」
私を襲っていた不愉快な感触は消えた。どうやらこの声の主が救ってくれたようだ。
サラリーマン「なっ、、、何だ君は!失礼だぞ!」
〇〇「どの口が言ってんだ気持ち悪りぃな。
次の駅で降りるぞ。」
確かこの人って同じクラスの〇〇くんだよな、、、
さくら「あっ、、、あの、、、」
「△△駅に到着いたしました。お気をつけてお降りください。」
車内アナウンスがそう告げると、一斉に人が降りる。〇〇くん達も電車を降りるらしい。
〇〇「それじゃ、お気をつけて!」
そう一言残し、痴漢魔と〇〇くんは駅で降りて行った。
さくら「あっ、、、まって!!」
私の声は電車の自動ドアに遮られ、電車は学校に向けて出発して行った。
その日、〇〇くんは3時間目から学校に来た。
クラスメイトは怪訝に思いながらも、特に気に留めている様子はないようだ。
私は何とか〇〇くんに話しかけようとしたが、臆病な性格が邪魔をして声を出せない。
はぁ、、、、
お世話になった人にお礼も言えないなんて最低だ、、、、
私は事あるごとに〇〇くんを目で追うようになってしまった。
移動教室の時、体育で運動をしている時、授業で居眠りをしちゃってる時、、、、、、
そのおかげで〇〇くんの良いところをたくさん知れた気がする。
〇〇くんは運動神経がいい事とか。サッカーをやっている時、〇〇くんがゴールを決めた時は声を出して喜んじゃった、、、///
それと、やっぱり優しいということ。
たぶん私は〇〇くんが好きなんだと思う。
だからこんなにも目で追っちゃうんだろうなぁ、、、///
そうして数週間が経つと私にチャンスが巡って来た。
この日はクラスメイト全員、部活や塾なんかですぐに帰ってしまった。そして教室には私1人だけ。
、、、〇〇くんの席に座ってみたいなぁ。
急にそんな欲が起こった。
理由なんてない。
ただ座ってみたいと思ったんだ。
私はいつもみている場所に腰を落ち着けた。
さくら「〇〇くんはこういう景色を見てるんだ、、、」
好きな人と同じ景色を見れたことが、何だか嬉しかった。
窓から差し込むのは暖かい夕日。そして春風。
気持ちいいなぁ、、、
私は襲って来た睡魔に抗う事もせず、そのまま眠りについた。
ガタンッ!!
〇〇「いってぇ、、、」
んっ、、、、、なんだろ、、、
私は閉じていた瞼を何十分ぶりに開いた。
目の前には私が思いを寄せている人。
寝ぼけた頭で次に発する言葉を作った。
さくら「あぁ〜、、、〇〇くんだぁ、、、💕」
何でこんなところにいるんだろ?
挙動がオロオロしてて可愛いなぁ、、、💕
そんなことを考えているうちに、私はこの行動をひどく後悔した。
さくら「ごっ、、、ごっ、、、ごめんなさーい!」
さくら「ということで今に至ります、、、///」
私は〇〇くんに助けてもらった話をした。その中に自分の感情も込めて話したのですごく恥ずかしい、、、
でもやっと言える。
さくら「あの時、私を助けてくれてありがとう!
優しくてかっこいい〇〇君が大好きです!」
やっとお礼が言えたぁ、、、!!
よかったよかったー!
、、、あれ?
なんか流れに乗って告白しちゃってなかった?
いやいやいや、そんなわけないよ!
もう一回なんて言ったか頭の中で繰り返してみよう!
「あの時、私を助けてくれてありがとう!」
よしよし!ここまではいいよね!
「優しくてかっこいい〇〇君が大好きです!」
はわわっ、、、///
遠藤さくら、本日2度目の失態です、、、///
さくら「あぁっ!!えっとね〇〇くん!!」
私は急いで言い訳をしようとした。
しかし、、、
〇〇「ごめん!!」
〇〇くんは私に向かって頭を下げた。
、、、振られちゃったか。
そりゃそうだよね。
こんな私の事なんて覚えてる訳ないだろうし、人の机で勝手に寝てる女なんて、、、
〇〇「あの時。
もっと早く遠藤さんを助けられなくて、、、」
さくら「えっ、、、?」
〇〇「実は遠藤さんが痴漢にあってる事はもう少し
前に気づいてたんだ。だけど満員電車で中で
自由に身動きが取れなくて、、、」
さくら「〇〇くん、、、」
本当に彼はどこまで優しいのだろうか。〇〇くんに悪いところは一つもないのに、今もこうして頭を下げてくれている。
だから私は好きになったのかな。
さくら「〇〇くんが謝る事なんてないよ!
私がどれだけ救われたか、、、」
思い出すだけでも体に震えが生じてしまう。
"もしあのまま"を想像してしまうと、、、
〇〇「遠藤さん、、、」
さくら「〇〇くんのおかげで私は今も元気で生活
出来てるの!だから謝らないで!」
〇〇「、、、ありがとう!」
2人だけの教室。
この空間がいつまでも続いてほしいなぁ、、、
あっ。
そう言えば私、告白しちゃったんだった、、、///
さくら「えーっと、、、」
〇〇「僕はまだ、遠藤さんのことをあまり知らない。
だから最初は友達から始めてみない?」
さくら「あっ、うん!よろしくお願いします!」
確かに〇〇くんは私の事をそんなに知らない、、、
よしっ!
これから私の事を好きになってもらうように頑張るぞ!
あれから、私たちは沢山お話しをするようになった。
たまにお弁当を作ってみたり、お出かけもして映画とか見たり、一緒にお勉強したり、、、
以前では考えられない位に私と〇〇くんの距離は近くなった。
隣同士で歩く桜並木、帰り道の途中にあるこの場所は2人のお気に入りだ。
さくら「やっぱり綺麗だね、、、!」
〇〇「うん、、、」
毎年、何度かこの道を通る。そしてその度に感動してしまう、、、
桜の枝々が触れ合い、サワサワとした音が心地いい。
さくら「、、、、、、」
私は思わず、この景色に見惚れてしまっていた。
〇〇「、、、、、綺麗だよ。さくら。」
〇〇くんが不意に口を開いた。
彼も私と同じ感覚を持っている事が嬉しい。
さくら「うん!桜って本当に綺麗だよね!」
〇〇「あっ、、、いやそうじゃなくて、、、」
さくら「えっ?」
〇〇「綺麗なのは、、、さくらだから、、、///」
そう言って私に近づいてくる〇〇。
〇〇「僕が綺麗だと思ったのは、君だから。」
彼は一度、深呼吸をしてから口を開く。
〇〇「ふぅ、、、今度は僕から言うね。」
「僕は遠藤さくらさんの事が大好きです。」
桜吹雪が2人を包み、ここに一つ春が咲いた。
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