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私が『唯一の推し』だと思ってたのに、、、!!

夏の暑さも本格的になり、歩いているだけでも汗が滲んでくる。

加えて騒がしいセミたちの声が私の鼓膜をガンガンと刺激する。

私、井上和は乃木坂高校への通学路でそんなことを思っていた。

2022年から乃木坂46・五期生に加入したメンバーの1人。

「アイドル」と言う普通では無い仕事に不慣れながらも日々奮闘しています。

さて、今日は8月4日です。

普通であったらすでに夏休み期間に入ってる日付です。

ですが、私はありがたいことに忙しくさせていただいてまして、、、

今は先生が特別に用意してくれた補講に向かっている途中です!

あと少しで「夏の全国ツアー in 北海道」が行われるので何とか頑張っていかないと!


和「よしっ!頑張るぞ!」


私はほっぺたをパンッと叩いて気合いを入れ直した。


乃木坂高校。

事前に指定されていた教室に向かい、先生から特別補講を受けました。

今日は数学と国語の2教科です!

でも数学は苦手なんだよなぁ、、、



先生「井上ー。それじゃあ始めるぞー。」

和「はい!」

先生「まずは国語から始めるか。そんじゃ教科書の
   48ページ開いてくれなー。」


それから約50分間、国語の補講を受けました。

でも時間が進むにつれて自分の学力が少し遅れているんだなって感じてます、、、

さっきの古文問題だってよく分かんなかったし、、、



先生「やっぱ他のみんなより授業を受けてる回数
   が少ないのがネックか、、、」

和「このままだと少し不安です、、、」

先生「だよなー、、、、、、あっ!!」

和「どうしたんですか?」

先生「確か今日はサッカー部の練習あったな、、、
   って事はアイツがいるな!」

和「アイツ?」

先生「井上!ちょっと待っとけ!」

和「ええっ!!どこ行くんですかー!」



先生は私の呼び止める声を無視してどこかへ走って行きました。

そもそもアイツって誰のことなんだろ??


約10分後、、、

先生が教室を飛び出してから約10分が経ちました。

すると廊下から先生ともう1人誰かの話し声がします。



??「いま休憩中だったんすよ、、、」

先生「まぁまぁ!お前のこと少し借りるって
   顧問にも伝えたから付き合えよ!」

??「はぁ、、、あとでジュース奢ってくださいよ?」

先生「ジュース1本でお前の頭を借りれるなら
   安いもんだよ!」



そんな話し声が教室の前で止まり、扉が開く。

入って来たのは走って汗だくになった先生。

そしてサッカー部のユニフォームを着たクラスメイトの"中西〇〇"くんだった。



〇〇「なっ、、、!!」

先生「お待たせ井上!こいつが臨時の講師だ!」

和「え?」

先生「〇〇は俺よりも教え方が上手いんだよ!
   教師として認めたくは無いがな、、、」



確か〇〇くんって先月の模試で全国順位4位っていう噂を聞いたなぁ。

っていうか先生は〇〇くんの背中をバンバン叩きながら高笑いしてるし、〇〇くんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔して動かないし、、、

これどんな状況ですか?

そもそも〇〇くんとは一回も話した事がないんだけど、、、



先生「あれ?お前らって友達じゃないの?」

和「話した事は無かったと思うんですが、、、」

先生「え?だって〇〇さ、この前教室で井上を
   ベタ褒めして」

〇〇「わーーーっ!本人の目の前で何つうこと
   言おうとしてるんすか!!」

先生「いやお前が井上のことベタ褒めしてる話を
   しようと思ったんだけど。」

〇〇「全部言っちゃってるじゃないっすか!!」



〇〇くんが私のことをベタ褒めしてた?

関わったこともないはずなのにどうしてだろ?

和「あの、ベタ褒めってどれ位のレベルですか?」

先生「それは〇〇しか分からんな。ほれ。」

〇〇「くっそ、、、恨みますよ、、、」

先生「勝手に恨め。
   俺は生徒が留年しなきゃ何でもいい。」



先生に軽く突き放されると、〇〇くんは覚悟を決めたように私の方を向く。

そしてそっと口を開くと、、、



〇〇「はぁ、、、
   僕は井上さん単推しなんですよ!!」

和「ええっ!!」

先生「単推しって何だ?競馬か?」

〇〇「おっさんは黙っててください。」

先生「おいこら!俺はまだ35だぞ!!」

〇〇「充分おっさんですよ。」

先生「そんな事ないわ!なぁ井上!!」

和「えっと、、、、、、ちょっとだけ?」

先生「ぐふっ、、、」


私の一言が効いてしまったのか、先生はその場に崩れ落ちてしまった。


〇〇「騒がしくしてごめんね、井上さん。」

和「ううん。でも〇〇くんって私のこと推して
  くれてたんだ!」

〇〇「お見立て会の時からだけど、まさか同じ
   学校に和ちゃ、、、井上さんがいたなんて。」

和「あはは!呼び方変えなくていいよ!」

〇〇「、、、、、、かわいい。」

和「えっ///」

〇〇「えっ!あっ!ごめんきもかったよね、、、」

和「うっ、、、ううん、、、///」



先生「はっ!」

〇〇「あ、先生が起きた。」

先生「なんか嫌な夢を見てた気がしたが、、、
   まぁいいか!はっはっは!!」



高笑いをする先生が可笑しくなってしまい、私と〇〇くんは顔を見合わせて微笑んだ。


それから私は〇〇くんと先生の2人にお勉強を教えてもらい、1日を終えました。


それから私は〇〇くんとLINEを交換して、勉強を教えてもらったり、乃木坂について話したり、〇〇くんの部活の話を聞いたり、、、


気づけば私は〇〇くんとお話しする事が楽しみになっていました。


それに〇〇くんの"単推し"である事がちょっとだけ、、、いや凄く嬉しかったんです。


しかし、事態はある件を境に一変することになりました。


これはいつもの様に〇〇くんから勉強を教えてもらっていた時のことです。

放課後の教室で2人きり、隣同士の席に座っていました。


〇〇「それでこの式がこう変形するわけ。どう?」

和「なるほど!
  やっぱ〇〇くんは教えるのが上手だね!」

〇〇「ありがと笑。」


初めは一応"単推し"の私と話す事に緊張気味であった〇〇くん。

だけど最近はフランクに話してくれる様になりました。


和「〇〇くんって今度のライブとか来る?」

〇〇「うん!神宮の2日目に行くんだー。
   乃木坂好きな後輩と一緒にね。」

和「そうなんだ!〇〇くん見つけられるかなぁ、、、」

〇〇「見つけなくてもいいよ笑。和ちゃん推しの
   人は他にもいっぱいいるんだから!」

和「え〜、、、じゃあ見つけたらレスあげるよ!」

〇〇「ありがと笑。」

その時、先生が教室に入って来た。


先生「おーい〇〇!いるかー?」

〇〇「何すかー?」

先生「ちょっと荷物運ぶのに人手がいるから
   手伝ってくれねーかな?」

〇〇「えぇ、、、」

先生「またジュース奢ってやるから!」

〇〇「はいはい、、、ごめんちょっと行ってくる!」

和「うん!行ってらっしゃい!」


少し気だるげに教室を出ていった〇〇くん。

よし!〇〇くんが戻ってくる前にやれるとこまでやっちゃお!

私がそう決心した次の瞬間。


プルルルル、、、プルルルル、、、、、、プルルルル、、、


スマホに1通の着信音が入って来た。

だけどそれは私のスマホではない、〇〇くんのだ。

机に置かれたままのスマホが着信があることを頑張って伝えている。

通話相手を見るとクラスメイトの男の子だった。

女の子じゃなくて安心したのはここだけの話、、、

まぁそんな事はどうでもよくて!!

今は〇〇くんもいないし、勝手に出るのも変だと思ったのでそのままにしていたんです。

そして数秒経って電話が切れた頃、ふと〇〇くんのスマホを見てみると、、、

、、、、、、え??

〇〇くんの壁紙が私のよく知っている人、同じ5期生の一ノ瀬美空ちゃんになっていたんです!!

なんで?!

〇〇くんの単推しって私じゃなかったの?!

私が1人であたふたしていると、〇〇くんが教室に帰って来ました。


〇〇「おまたせー。」

和「うっ、、、うん、、、」


私は今の感情を表に出してはいけないと思い、何とか笑顔を作って応える。


和「そう言えば電話来てたよ?」

〇〇「まじ?後でかけ直さないと、、、」


スマホの着信履歴を確認してポケットにしまおうとする〇〇くん。

しかし、私は壁紙の美空が気になってしまってつい〇〇くんに尋ねてしまった。


和「あっ、、、あのさ!!」

〇〇「ん?」

和「〇〇くんの壁紙を見ちゃったんだけど、、、」

〇〇「壁紙?あー美空ちゃんのこと?」

和「そう、、、」

〇〇「最近の工事中とか見て可愛いねーって
   部活で話してたらさ、後輩が勝手に壁紙に
   しちゃって笑。」

和「そっ、、、そっかぁ、、、」



まずい。

自分から壁紙にしてないって言うのは分かったけど、〇〇くんが美空を気になり始めてるのも分かっちゃった。

いやちょっと待って。

誰を推すのかってのは〇〇くんの自由だよね、、、

でも〇〇くんが私以外を推してるのってなんかモヤモヤする、、、

もしかして私って〇〇くんのこと、、、///


それから私は〇〇くんを私の単推しに戻すための作戦を開始しました。

、、、ですが。

真夏の全国ツアーが始まり、レッスンやリハーサルでどんどん忙しくなってしまったんです!

そのため学校に行けずにどんどん時間が経ち、ついに〇〇くんがライブに来る日になってしまいました。


8月26日、真夏の全国ツアー in 神宮 2日目


井上「はぁ、、、」


私は楽屋でため息をついていた。

もしかしたら今日で〇〇くんは本当に美空推しになっちゃうかも?!

それを考えたら気が重くなってしまうんです。


ピコンッ


そんなことを考えていると私のスマホに1通の通知が届きました。

なんと〇〇くんからのLINEです!

私はすぐに〇〇くんのトーク画面を開きます、、、!!



〇〇💬 会場ついた!
     和ちゃんのタオルも買ったー笑。

なぎ💬 ありがとー!笑
     席はどの辺りだった??

〇〇💬 アリーナのCブロックだった!
     めちゃくちゃ良い席。笑

なぎ💬 おー!!

〇〇💬 和ちゃんのこと応援するね〜。


なるほどなるほど。

〇〇くんはこの辺りの席にいるんだ。

そして運のいいことに私はその近くで踊る曲があるんです!!

このチャンスを逃すわけにはいかない、、、!

和「よしっ!やるぞー!!」


時刻は18:00。

影ナレも終え、ついに聞き慣れたOvertureが始まった。

今回のライブで〇〇くんにコンタクトをとれるのは1回だけ。

アンコールの時に近くで踊る曲があるんです。


和(よし、、、絶対に見つけてやる!)


それから私はファンの皆さんのために一生懸命に歌って、踊って、、、

たくさんの人に名前を呼んでもらったりして、とても幸せな時間でした!

そして楽しい時間はすぐに過ぎていってしまい、ついにアンコールへ!

私は指示されていたポジションに向かって走り出す。

私が立つのは〇〇くんがいるCブロック付近の花道。

私はファンの皆さんにレスをしながら〇〇くんの姿を探す。

たしか〇〇くんは私のタオルをつけてくれているはず。

えっと、、、

どこだろ、、、

いた!!

私は〇〇くんと後輩くんらしい2人組を見つけた。

〇〇くんは私のタオルを胸の高さまで上げてライブを楽しんでいる。

だけど視線が私ではなく別のメンバーを見ている、、、美空だ。

なんでよ!

私のタオル持ってるならちゃんと私を見なさいよ!!

しかも美空は必殺技の「み〜キュンキュン💕」を思う存分に繰り出している。

〇〇くんと後輩くんもそっちに気を取られちゃってるし、、、

あーもう!!

こうなったら私だって色んな人にレスして視線をこっちに戻してやるんだから!!

私は〇〇くん周りの人が持っているうちわに書いてある「投げキッス」「指ハート」何かを一通りやった。

すると後輩くんが〇〇くんの肩を叩いて私の方を指差した!

ナイスだ後輩くん!

そして私はあたかも今〇〇くんに気づいたかのようなリアクションを取る。

そしてここまで温めていた私の必殺技を〇〇くんだけに向けて放つ、、、!!

和「にゃんにゃん、、、にゃぎ〜💕」

そしておまけに投げキッスもする。

和「、、、、、、///」

私は何だか急に恥ずかしくなってしまい、〇〇くんの方を一瞥もせずにその場を去ってセンターステージに戻った。

そして最後の曲まで歌い切り、ライブは無事に終了した。


ライブ終了後。

和「どうだったかな、、、」

私は終わってすぐ〇〇くんにLINEをした。


なぎ💬 〇〇くん!今日は来てくれてありがと〜!

〇〇💬 こちらこそありがとう!
     めちゃくちゃ良いライブだった!

なぎ💬 〇〇くんのこと見つけたよー!
     ちゃんとレスもしたんだけど気付いた??

〇〇💬 うん笑。
     後輩にすごい嫉妬されちゃった笑。

なぎ💬 そのー、、、どうだったかな??

〇〇💬 え?

なぎ💬 私はどうだったかなーって、、、

〇〇💬 和ちゃんが1番かわいかったよ笑。
     最後のレスで完全に持ってかれた笑。

なぎ💬 そっか〜♪


私は楽屋で人目も憚からず、ガッツポーズをした。

やったやった!

これで〇〇くんは私の単推しに戻ったかな〜♪

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