最近、コンビニのバイトちゃんといい感じです。
pm9:21
会社から家までの帰り道、4つ目の信号を渡ったところにあるコンビニエンスストア。
夜の暗い街に一つ、虫の群れが集まる大きな電灯が立っている。
〇〇(今日は確か、あの子がシフトの日だったよな、、、)
仕事で疲れた体を引きずりながら、ゆっくりと開く自動扉に無感情で出迎えられる。
入店を知らせる無機質な電子音と一緒に誰かの声がカウンターからしてくる。
冨里「あっ、いらっしゃいませ〜!」
夜には似つかわしくないくらい眩しい笑顔を僕に向けてくれている店員さん。
笑うと丸く大きい目は一本の線になってしまい、まるで赤ちゃんのようになってしまうアルバイトの富里ちゃん。
冨里「今日もお疲れ様ですっ!」
〇〇「冨里さんもお疲れさま、今日も遅くまで頑張ってるね?」
冨里「〇〇さんだって頑張ってるじゃないですか〜!」
まだ何も商品を手に取ってないのにちょっと話が盛り上がる。
あぁ、、、こうやって無邪気に話してくれるなんて良い子だな。
〇〇「それじゃちょっと買い物してくるね」
冨里「は〜い!」
どうやら店の中には僕以外の人はいないみたい。
おかげでゆっくりと店内をぶらつくことができるな。
冨里『〇〇さ〜んっ!奈央は暇でーす!』
レジの方から聞こえてくる冨里ちゃんの大きな声。
いくら店に人がいないからって、、、笑
〇〇(とりあえず適当に晩飯でも買ってくか)
僕は近くにあった冷えたコンビニ弁当をカゴに入れ、食後のちょっとしたスイーツ、あとはビールとかも飲みたいな。
とりあえずそこらへんを一緒に買ってさっさとレジに向かう。
若干の急ぎ足で。
冨里「あっ!いらっしゃいませ〜♪」
〇〇「急かしたくせに、、、笑」
冨里「なんのことですかね〜?」
可愛らしいとぼけ顔を見せながら僕からカゴを受け取る。
カバンから財布を用意しながら冨里ちゃんがバーコードを読み取り終えるのを待つ。
冨里「ううん、、、、」
なんか、、、渋い顔をしながらレジ打ちしてる。
いつもニコニコしてるからこんな顔は見たことがないな。
〇〇「、、、、、、冨里ちゃん?」
冨里「、、、お会計、1918円です」
ほっぺたをはち切れそうになるくらい膨らませ、レジ袋に商品を詰めていく。
なんかそれも不貞腐れてる子どもっぽくて可愛いけど。
僕は2000円を出し、冨里ちゃんからお釣りをもらう。
〇〇「そっ、、、それじゃあまた、、、、、」
そう言ってコンビニを後にしようとすると、、、
冨里「〇〇さんっ!こんなのダメですよっ!」ギュッ
〇〇「えっ?!」
冨里「いっつもいっつも!奈央はプンプンです!!」
商品の詰まったレジ袋を掴み、僕を帰らせまいと力強く引っ張ってくる。
さっきよりもさらに膨らんだほっぺのまま、大きな目で僕を見つめていた。
冨里「あと10分だけ待っててください!奈央はもうすぐでシフト終わるんで!」
〇〇「え?あぁ、、、うん」
冨里「ほら!裏口の方で待ってなさい!」
なぜか聞き分けのない子供のような扱いをされながら裏口へと諭される僕。
どうしちゃったんだろうな、、、、
pm9:39
〇〇「もうそろそろかな〜」
裏口で冨里ちゃんを待ち続けてだいたい20分。
夜もどんどんふけていき、下弦の月が僕の真上に浮かんでいた。
ガチャッ、、、
冨里「お待たせしました〜♪」
〇〇「おー、、、、、、え?」
冨里「ん??」
扉が開き、冨里ちゃんの元気な声がした。
僕はゆっくりと振り返り、開けられた裏口の方を見る。
冨里「どうかしたんですか?」
〇〇「えっ、、、いや、、、、、制服?」
冨里「あーはい!学校帰りにそのままバイト来たので!」
〇〇「いやその前に冨里ちゃんって女子高生だったの?!」
冨里「はい!高校2年生ですよ!」
まじかよ、、、今までずっと大学生とかだと思ってた、、、、、
身長高いしスタイルも良いし。
〇〇「っていうかなんで僕のこと待たせてたの?」
冨里「え?もちろん奈央が〇〇さんのご飯を作るためですよぉ!」
〇〇「、、、、、、は?」
左手に持っているビニール袋を僕に見せつつ、あっけらかんと言い放つ冨里ちゃん。
それ買ってたからちょっと遅くなったんだ。
冨里「ほらほら!はやく奈央のお家行きましょー!」ギュッ
強引に僕の右手をぎゅっと掴み、自宅とは真逆の方向へ連れていく冨里ちゃん。
、、、、、、、、、えどゆこと?
理解のまとまっていない頭のまま、僕はウキウキした彼女の背中へついていくだけだった。
pm10:01
冨里「たっだいま〜♪」
〇〇「お邪魔します、、、」
時計は10時を回って少し。
僕は女子高生の部屋に上がり込むという犯罪ギリギリの行為をしているところです。
冨里「ソファに座っといていいですから!」
〇〇「、、、、、、やっぱ帰るよ」
冨里「えぇっ!なんでなんで!!」
〇〇「いや冨里ちゃんが女子高生だからでしょ!?」
冨里「奈央はそんなの気にしないもん!」
〇〇「法律が気にしてんの!!」
玄関で靴を脱ぐ前に何とか思いとどまり、また玄関を開けて出て行こうとする。
流石に現役JKはまずい!
こんな形で新聞の一面を飾るような人間はやだ!
でも、、、、、、
冨里「だーめーでーす!」
〇〇「なんでよ!」
冨里「せっかく奈央が〇〇さんの面倒を見てあげようとしてるじゃないですかー!」
〇〇「警察の面倒にはなりたくないんだよ!」
冨里「観念しろー!」
と、こんな攻防を続けて10分くらい。
ドンッッッ!!
隣の部屋から怒りの壁ドンが来てようやく僕が折れました。
冨里「うぅ、、、怒られちゃった、、、、、」
〇〇「そりゃ夜の10時だし、、、」
冨里「まあ〇〇さんが泊まっていくから万事オッケーですね!」
〇〇「そうだね〜、、、、、、、、おいこら」
冨里「え?」
〇〇「泊まる?」
冨里「はい!」
〇〇「誰が?」
冨里「〇〇さんしかいないじゃないですかぁ〜笑」
『何をバカなことを言っているんだ』と僕の肩を軽く叩いて笑っている冨里ちゃん。
、、、、、、なにこれ。
〇〇「いや泊まるつもりは」
冨里「時に〇〇さん、今日は何日ですか?」
僕の声を遮ってテレビドラマに登場する癖の強い探偵のような声真似をする。
今日って、、、
〇〇「4月26日だけど?」
冨里「明日、明後日、明明後日はお休みですか?」
〇〇「まあゴールデンウィークだからね」
冨里「じゃあ止まれますね!」
〇〇「いやいやいや」
確かに今日はゴールデンウィーク前の仕事終わりだけど!
それは理由になってないでしょ!
冨里「ほら!はやく上がってください!」
〇〇「さすがに泊まるは」
冨里「上がってください!」
〇〇「いやだから」
冨里「上がってください!!」
〇〇「、、、、、、はい」
そういえばまだ玄関だったことをようやく思い出し、正体のよく分からない罪悪感を抱えながらまた冨里ちゃんの跡をついていく。
もうどうにでもなれ、、、
冨里「じゃあ今度こそソファに座ってください!」
中は想像通りといったら変だけど、やっぱり女の子らしいピンクを基調にした部屋だった。
ベッドの上にはクマのぬいぐるみが何匹か座っているし、ソファにはもこもこのクッションが両サイドに置かれている。
冨里「遅くなっちゃいましたね〜」
可愛らしいエプロンをつけ、ワンルームの中を忙しそうに歩き回る冨里ちゃん。
そういえば、、、、、
〇〇「あれ?冨里ちゃんって一人暮らし?」
冨里「はい!中学卒業と一緒に上京してきたんです!」
〇〇「すごいねぇ、、、」
冨里「でもたまにお母さんとか来てくれるから寂しくはないですよ!それに、、、、、///」
玄関近くに置かれた小さめな冷蔵庫へ買ってきた食材を入れていく冨里ちゃん。
その後ろ姿を見ながら彼女の言葉を待っていた。
冨里「いっ、、、いつも〇〇さんに会えるから、、、、、///」
〇〇「そっか、僕も冨里ちゃんにはいつも元気もらってるよ笑」
冨里「ほっ、本気ですよ!」
〇〇「ありがとね笑」
所詮はJKの軽口だと思いつつ、彼女の言葉を受け流していく。
この様子だと冨里ちゃんは学校でモテるんだろうな〜。
冨里「、、、、、、本気なのに」
pm10:42
冨里(よいしょっ、、、おっ!いい出来だぁ!)
ガスコンロの前で不器用ながらにフライパンを動かす。
2週間くらい前から練習し続けてきた豚の生姜焼き!
茉央も『お店のやつみたいやなぁ〜』とか言ってたし準備は万端!
冨里「できましたぁ!」
意気揚々とお皿に盛り付けた料理を〇〇さんの方へ持っていく。
なんて言ってくれるかなぁ〜♪
『奈央ちゃんすごいね!』かな?
それとも『これからもずっと食べたい!』なんて言われちゃったり!
そしたらもう結婚するしかないじゃないですか〜♪
冨里「、、、、、、あれ?」
〇〇「すぅ、、、すぅ、、、、、」
どうやら私は料理に夢中で〇〇さんが眠ってしまったことにも気づかなかったみたい。
あちゃぁ、、、
冨里「起こすのも悪いしなぁ、、、っていうかもうこんな時間なの!?」
時計はもう夜の11時を指していた。
時間かけすぎちゃったなぁ、、、
ソファに腕を組みながら眠っている〇〇さんをみながら反省する。
冨里「作った分はラップかけて朝ごはんにしよっかな、、、」
我ながら美味しそうに出来た生姜焼きに透明なラップをかけ、冷蔵庫の中へ。
そして、、、
〇〇「すぅ、、、すぅ、、、、、」
冨里「失礼しまーす、、、///」
眠っている〇〇さんの隣へ座る。
そしてどさくさに紛れて肩に頭も乗っけちゃう。
冨里「うひひ、、、///」
自分でも引くくらい気味の悪い笑みを浮かべながら〇〇さんの温もりを堪能する。
まさか本当に泊まってくれるとは思わなかったな〜♪
翌日、AM5:14
〇〇「んっ、、、やべ、、、、、寝てたか」
僕はゆっくりと目を開けると、見慣れない光景が目の前に広がっていた。
あれ、昨日はそのまま家に帰って、、、、、、ないな。
〇〇「ソファで寝ちゃってたか、、、」
座ったまま、そしてずっとスーツを着ていたことで肩が凝り固まっていた。
冨里ちゃんはどこに行ったのかな、、、
っていうか膝が重いんだけど。
〇〇「なんか乗っかって、、、、、は?」
冨里「すぅ、、、すぅ、、、、、」
まったくこの子は、、、
僕の腿に乗っていたのは寝ていたのは僕を家に連れ込んだ冨里ちゃん。
赤ちゃんのCMを今でも狙えそうなほどに可愛らしい寝顔だ、、、、、、あっ。
冨里「んんぅ、、、あぁっ、、、おはようごじゃいましゅ、、、、、」
〇〇「おはよ」
冨里「朝から〇〇さんに会えるなんて幸せですねぇ〜、、、」
のそのそと起き上がり、昨日の制服姿のままの彼女が僕の方を見る。
彼女も寝落ちしたみたいだな。
冨里「、、、、、、あっ!メイク落としてないぃ!」
〇〇「僕もお風呂入ってないし、、、今日はお暇しようかな」
冨里「それはダメですっ!奈央が作った料理があるんですから!」
〇〇「えぇ、、、」
恥ずかしそうに右手で顔を隠しながらも僕の腕を左手でぎゅっと掴んでくる。
なんか姪っ子と遊んでる時を思い出す。
冨里「、、、、、、そうだ!」
〇〇「ん?」
冨里「ご飯を食べたら〇〇さんのお家行きましょう!今度は奈央がお泊まりします!」
〇〇「だめ」
冨里「ええっ!奈央のお料理も持っていけるし提案じゃないですか!そのあともデート行けるし!」
〇〇「女子高生を家に連れ込むのはマジで危ないから!」
冨里「じゃあ妹設定でいきましょう!」
〇〇「いかねぇよ!」
冨里「じゃあ母親!」
〇〇「なんで年齢を上げんの?!」
結局、その日は朝ごはんに冨里ちゃんの料理を食べ、僕の家でお泊まりすることになりました。
あとしっかりデート(?)にも連れていかれました。
冨里「ほんとのカップルみたいですね〜♪」
〇〇「、、、まあね」
冨里「キスでもしちゃいますか!」
〇〇「しない」
冨里「くぅー!〇〇さんはほんとに鉄壁人間ですね!」
都内の公園を2人で並びながら歩いていく。
すれ違う人から見れば普通のカップルなんだろうな、、、
〇〇「冨里ちゃんも僕よりも良い人が」
冨里「いません!あと奈央ちゃんがいいです!」
〇〇「いや冨里ちゃ」
冨里「な・お・ちゃ・ん!!」
〇〇「、、、はい」
そしてこの日から、冨里ちゃん、、、、、いや奈央ちゃんのアタックがより激しくなりました。
あと本物のカップルになったのは奈央ちゃんがちゃんと高校を卒業した後のお話。
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