齋藤夫婦の1日。
朝、7:00。
「「「すぅ、、、すぅ、、、」」」
都内某所にあるマンションの一室。
ダブルベッドにて眠っているのは1組の親子。
3歳になったばかりの女の子を真ん中にし、母と父で挟んでいる。いわゆる川の字だ。
そして毎朝この時間、妻のスマホからアラームとして設定してあった「ありがちな恋愛」が流れるのだ。
「同じ方向に並んだ団地の窓に〜♪」
〇〇「んっ、、、朝か、、、」
この曲は妻が数年前まで所属していたアイドルグループ、乃木坂46の名曲だ。それと同時に妻もお気に入りの一曲だ。
曲が流れてから少し経ち、妻が起きた。
??「ふわぁ、、、おはよ。」
〇〇「うん、おはよ飛鳥。」
齋藤飛鳥。
乃木坂46の絶対的センターと呼ばれていたメンバー。
惜しまれつつも数年前に卒業コンサートを行い、それからもモデルや女優としての芸能活動を続けていた。
飛鳥「今日のご飯は〇〇の担当だっけ?」
僕たちは毎日のご飯を交代制にしている。
、、、と言っても最近は僕がやる事が多い。
最近、飛鳥が料理苦手だと言う事が判明したたため。
飛鳥「、、、楽しみだぁ♪」
朝だからなのか、いつもよりフワフワしている飛鳥。
〇〇「ありがと笑。
じゃあ朝ごはん作ってくるね〜。」
飛鳥「うん!彩は私に任せて!」
彩「すぅ、、、すぅ、、、」
齋藤彩。
僕と飛鳥の間で寝ている我が家の天使。
つい先日、3歳の誕生日を迎えたばかり。
僕と飛鳥の第一子で、不慣れながらも2人で育てている。
飛鳥「彩〜。そろそろ起きな〜?」ナデナデ
彩「、、、まだねみゅい。」
飛鳥「もう幼稚園の時間だよ〜?」
彩「、、、むぅ。」
飛鳥「パパがトマト食べさせてくれるってよ?」
彩「、、、じゃあ起きりゅ!」
ベッドからジャンプして飛び降りた彩。
てちてちと〇〇の元へ走っていく。
彩「パパ〜!」
飛鳥「、、、うちの子って可愛いなぁ♪」
〇〇「今日は和食にしよっかな〜。」
僕がキッチンに立ち、3人分の朝ごはんを作ろうとした時、、、
彩「パパぁ〜!」ギュッ
娘の彩がとことこ僕の元に走ってきた。
そして僕の右足に抱きついて来る。
彩「きょうもトマト食べれる??」
キラキラとした瞳で僕を見つめて来る彩。
これに敵う人類は存在するのか疑わしいほど可愛い。
〇〇「うん!今日もたくさん食べような〜♪」
彩「たべるー!」
そうして僕は朝食を作り始めた。
今日は鮭でも焼こうか。
彩には食べやすいように切ったトマト、それと野菜を混ぜた炒り卵を。
飛鳥「私も何か手伝おっか?」ギュッ
料理をする僕の背中に抱きついて来る飛鳥。
彩「、、、ん。」ギュッ
それを真似して、今度は飛鳥の足に抱きつく彩。
飛鳥「あっはは!可愛いなぁ〜💕」
〇〇「だね笑。」
彩「あやもお手伝いするー!」
〇〇「そうだなー、、、じゃあ2人はお味噌汁
作ってもらおうかな?」
正直、飛鳥に頼むのは少し不安、、、
飛鳥「むふふ。最近は真夏にお料理を教えて
もらってるんだ〜!」
〇〇「真夏さんって料理上手いもんな〜、、、
それじゃあ頼む!」
飛鳥、彩「「はーい!」」
そして家族3人で作った朝食が出来上がった。
「「「いただきます!」」」
飛鳥「、、、美味しぃ♪」
〇〇「良かった笑。飛鳥と彩の作ったお味噌汁も
美味しいよ!」
飛鳥「あっ、パパが美味しいだって!
やったね彩!」
彩「トマトさんもおいしぃ〜!」
どうやら彩はトマトに夢中な様子。
〇〇「そっか〜笑。良かったな〜!」ナデナデ
彩「えへへ〜♪」
そうして朝食を食べ終わり、仕事に向かおうとする。
僕は都内の図書館で司書として働き、飛鳥はモデルの仕事、彩は幼稚園というのが今日の日程。
〇〇「それじゃあ行って来るね〜。」
彩「いってきまぁす!」
彩の幼稚園は僕の職場の道中にあるので、朝はいつも2人で出発。
職場に向かおうと玄関のドアに手をかけた瞬間、、、
飛鳥「、、、待って///」
何やら顔を赤くしている飛鳥が僕の背広を掴んだ。
〇〇「ん?なんか忘れ物でもしたかな、、、」
彩「あやはじゅんびできてる!」
飛鳥「そうじゃなくて、、、///」
〇〇、彩「「、、、??」」
飛鳥「いっ、、、いってきますの、、、、、チュー、、、///」
そういって飛鳥は僕の襟を掴んでキスをした。
〇〇「飛鳥、、、///」
飛鳥「、、、よしっ!行ってこい!」
幼稚園までの道。
彩「パパたちはラブラブさんだね〜♪」
〇〇「、、、そうだね笑。」
彩「ママもはずかしそうだったね〜。」
手を繋いで幼稚園へ向かう僕と彩。
3歳の娘に冷やかされている光景に思わず笑ってしまう。
そうしているうちに彩の通っている幼稚園に着く。
先生「あっ!齋藤さんに彩ちゃん!
おはようございます!」
入り口で先生が子供達を出迎えている。
〇〇「おはようございます、ほら彩も!」
彩「おはよーございます!」
〇〇「うん、よく言えたね〜!
それじゃあよろしくお願いします!」
そういって僕は彩を先生に託そうとしたのだが、、、
彩「あっ、パパ!」
僕に何かを伝えようとしている彩。
僕は彩に目線を合わせるために屈むと、、、
彩「いってらっしゃい!」チュッ
飛鳥の真似をしたのか、彩も僕の口にキスをする。
〇〇「あっ、、、彩、、、///」
先生「あらあら笑。」
彩「きょうねー、ママとパパがねー!」
〇〇「あー待った待った!早くお友達のところに
行ってきな?!」
彩「、、、はーい?」
僕は先生に聞かれる前に彩を友達のところへ行くよう促した。
美空「あっ!あーやだ!」
向こうから彩を目掛けて一直線に走って来る女の子。
確か一ノ瀬美空ちゃんだったよな。
彩と仲良くしてくれてる女の子。
、、、めちゃくちゃスキンシップ激しい。
美空「きょうもあーやはかわちぃね〜💕」
彩「うげっ、、、」
美空「あーやぁ💕」ギュッ
そうして僕は職場の図書館へ向かった。
〇〇「おはようございます。」
「「おはようございます!」」
僕は同僚の皆さんに挨拶をし、仕事を始める。
まずは返却された本を棚に戻す作業から。
えーっとこの本は向こう、、、これはそっち、、、
そんでこの本は、、、あっ。
僕は1冊の本を手にした時、あることを思い出した。
この本は僕と飛鳥を繋いでくれた思い出の一冊だ。
、、、思えば飛鳥との出会いもこの図書館だったな。
5年前。
僕はいつものように本を指定の場所に戻す作業をしていた。
そして1冊の本を棚に戻そうとした時、うっかり床に落としてしまったのだ。
〇〇「やっば、、、」
「どうぞ。」
〇〇「あっ、すみません。」
僕が落とした本を誰かが拾ってくれたようだ。
帽子を被り、メガネ、マスクをしている女性。
どのような顔か分からなかったが何だか溢れ出るオーラのようなものがあった。
「いえいえ、それでは、、、あっ!」
本を拾ってくれた女性は、その場を去ろうとしたが躓いてしまったようだ。
〇〇「危なっ、、、ふぅ。」
なんとか女性を抱きかかえ、転ぶことは回避できた。
けれど、その拍子に帽子やメガネが取れてしまった。
「やっば、、、」
第一印象は美人。
とにかくそれだけだった。
芸能人とかなのか?ってくらいに凄いオーラだった。
しかし生憎、僕は芸能界に詳しくない。
もし芸能人だとしても気づかないんだよな、、、
とにかくまずは謝らないと!
〇〇「僕のせいですみません!」
「え?」
〇〇「僕の不注意でご迷惑をおかけして、、、」
「いや、私のこと知らないんですか?」
〇〇「、、、存じ上げません。」
「あっそうなんだ、、、私もまだまだか笑。」
〇〇「失礼ですがお名前を伺ってもいいですか?」
「齋藤飛鳥、乃木坂46を最近卒業しました。」
齋藤飛鳥、、、乃木坂46、、、、、、
頭の隅々まで探してみたが、あまり覚えがない。
確かアイドルグループの一つだった気がする。
〇〇「はぁ、、、そうなんですか。」
自分から聞いといてなんだが、素っ気ない返しになってしまい申し訳なく思う。
「あっはは!お兄さんいいね〜笑。LINE交換しようよ!」
〇〇「えっ!芸能人でしかもアイドルの方
なんて、、、」
「だから私は卒業したんだって!ほらスマホだして!」
そう言って僕からスマホを奪い取り、右手で素早く操作をする。
そして帰ってきたLINEの友達欄には「あすか」の文字が新しく追加されていた。
「にひひ、、、これからよろしくね!」
??「あー〇〇さん!
また奥さんのこと思い出してますね?」
〇〇「、、、なんで分かるの?愛萌。」
宮田愛萌。
同じ図書館で働いている女性。
以前から年に一度のペースで本を出版している。
司書と作家の二足の草鞋を履いている。
愛萌「ふっふっふ〜。〇〇さんの事なんて愛萌には
お見通しなんですよ〜💕」
〇〇「、、、そういや愛萌も前はアイドルだったん
だっけ?」
愛萌「はい!日向坂46っていうグループですよ!
まぁ〇〇さんは知らないでしょうけど、、、」
〇〇「いや知ってるわ、飛鳥に教えてもらったよ。」
愛萌「えー!〇〇さんがアイドルを知ってるなんて、、、」
〇〇「はいはい、、、そんでさ。愛萌からみて
飛鳥ってどんなアイドルだった?」
愛萌「そりゃあアイドル界のキングオブポップの
様なもんですよ!」
なぜマイケル・ジャクソンの敬称なのかは分からないが、とにかく凄いって事なのだろう。
〇〇「そっか、、、
凄い人と結婚したんだな、、、」
愛萌「ほんとですよ!来世まで誇れますよ!」
〇〇「そうだな笑。」
そうして僕は職務を終えて家に帰る、、、
その前に彩を迎えに行かなければ。
幼稚園
彩「、、、、、、」
美空「かわいいねぇ〜💕」
彩「、、、、、、」
美空「あーやはきょうもトマトさんたべたのかなぁ💕」
彩「、、、たべた。」
美空「えらいねぇ〜💕」
〇〇「、、、あの2人は?」
先生「いつものことですよ!彩ちゃんも達観した
目をしているし慣れたもんですよ!」
そういや彩の目が美空ちゃんでなく、明後日の方を向いている。
3歳にしてすでに諦念の感情が生まれてしまったのか、、、
〇〇「あっ、、、彩ー、、、?」
彩「パパ〜💕」ギュッ
僕が名前を呼んだら笑顔で駆け寄って来る彩。
美空「あぁ、、、わたしのあーや、、、」
一方、美空ちゃんは絶望の表情を浮かべている。
先生「それじゃあ彩ちゃんまた明日!」
彩「うん!さよーなら!」
〇〇「美空ちゃんにはいいの?」
彩「、、、うん。」
〇〇「お友達は大切にしないとダメだよ?」
彩「、、、くぅちゃん!」
美空「あーや、、、?」
彩「またねー!」
美空「あーや!!またあしたねー!!」
彩に向かってブンブンと手を振る美空ちゃん。
愛が深くて良い友達、、、かな?
〇〇「今日のご飯はなんだろうね〜?」
今日の晩御飯は、飛鳥が「作りたい!」って言うから任せてある。
彩「ママのおりょうり、、、だいじょーぶかなぁ?」
〇〇「真夏お姉さんにも教えてもらってるんだって。
たのしみだねー!」」
彩「うん!」
〇〇、彩「「ただいまー!」」
僕と彩が玄関でそう言うと、エプロンをつけた飛鳥が小走りでやって来た。
飛鳥「おかえり!」チュッ
もう恥ずかしげもなくなったのか、普通にキスをして来る飛鳥。
〇〇「なっ、、、///」
飛鳥「うひひ笑。これからもしようね〜♪」
彩「あーやもパパにちゅーしたい!」
僕は屈んで彩に目線を揃えた。
彩「だいすきだよ〜!」チュッ
妻と娘にキスをされ、ようやく妻の作った料理をみんなで食べる。
飛鳥が作ったのはオムライス。
飛鳥「真夏に教えてもらったんだ〜♪」
僕のには「あいしてる」、彩のには「だいすき」の文字がケチャップで書かれている。
飛鳥「ちょっと書いてみちゃった笑。」
〇〇「ありがと笑。」
彩「ありがとぉ!」
飛鳥「いえいえ!
あっ!スプーン出すの忘れてた!
2人ともちょっと待っててね?」
キッチンの食器棚からスプーンを取ってこようとする飛鳥。
〇〇、彩「「はーい。」」
彩「はやくたべたいなぁ♪」
〇〇「あともうちょっとだね、、、あれ?」
彩「どうちたの?」
ふと飛鳥のオムライスを見ると、ケチャップが掛かっていない。
〇〇「、、、彩?ママのオムライスにも何か
書いちゃおっか!」
彩「かくー!」
飛鳥「2人ともおまたせ〜、、、あれ?」
飛鳥のオムライスには「いつもありがとう」と言う文字がケチャップで書かれていた。
〇〇「パパ達も書いちゃったね〜?」
彩「えへへ〜!」
飛鳥「ふふっ、、、こちらこそありがと!」
そうして飛鳥は写真を数枚撮ってからオムライスを食べた。
「「「いただきます!」」」
ご飯を食べ終わって、彩をお風呂に入れ終わると、、、
彩「、、、、、、ねむい。」
飛鳥「もうベッドに行こっか?」
彩「、、、、、、うん。」
飛鳥は彩を抱っこしてベッド運ぶ。
彩「あぅ、、、パパおやすみぃ、、、」
〇〇「おやすみ笑。」
ここ最近、彩が眠ってからの時間。
僕と飛鳥だけの時間が何よりも幸せだ。
映画を見たり、一緒に本読んだり、ゆっくりお茶飲んだり、今日あったことを話したり、、、
この時間が何よりも幸せなんだ。
〇〇「今日は何しよっか?」
飛鳥「そうだね、、、///」
〇〇「昨日は飛鳥の卒コン見たし、一昨日は映像研
みたよなー、、、」
飛鳥「そう、、、だね、、、///」
さっきから飛鳥が上の空気味。
なんかあったのかな?
〇〇「飛鳥?どうかしたの?」
飛鳥「、、、あのさ。」
〇〇「ん?」
飛鳥「彩も大きくなったし、私も仕事に余裕が
出て来たからさ、、、///」
僕の顔をしっかりと見つめる飛鳥。
そして次の言葉を放つ。
飛鳥「2人目とか、、、どうかな、、、///」
その夜は彩が起きないよう声を抑えて、飛鳥と〇〇は身体を重ねましたとさ、、、