クラスの"聖母"はめちゃくちゃ可愛い人でした。
櫻坂高校、校門。
〇〇「今日は暑いなぁ、、、」
暑さが勢いを増していくのを肌で感じる今日この頃。
僕は額にジワリと滲んだ汗をタオルハンカチで拭う。今年の夏も一段と暑くなりそうだ。
周りの生徒達も服を仰いで風を送り込んだり、袖を捲ったりして校舎の中へ入っていく。
僕も下駄箱に向かい、自分の靴をしまおうとしたその時、、、
??「〇〇く〜ん!」
後ろの方から"聖母"が駆け足でやってきた。
〇〇「おはよう。上村さん。」
少し駆け足で下駄箱に入ってきたクラスメイト。
上村莉奈さんだ。
彼女の性格から、みんなに"聖母“と呼ばれている人がいる。
どのような性格かって?
それはもう"聖母“にふさわしい性格ですよ、、、
上村「あっ!〇〇くんの頭、寝癖立ってるよ?」
そういって僕の頭に手を伸ばし、寝癖を直してくれる上村さん。
上村「よしっ!これで大丈夫!」
〇〇「ありがとう、、、///」
ちなみに僕と上村さんは付き合っているわけでも何でもありません。
関係としては何だろうな、、、
せいぜい仲の良いクラスメイトくらいかな?
それなのに男子の寝癖を何の躊躇もなく直してくれる上村さん。
優しさの塊すぎて惚れそうになる、、、
っていうか同級生は大体、上村さんのことが好き。
ちなみに僕もその1人だけど絶対に叶うことはないので諦めてる人種だ。
教室
〇〇「ふわぁ、、、」
上村「何だか眠そうだね?」
〇〇「昨日は姪っ子が全然寝なくて、、、笑」
上村「姪っ子ちゃん?」
〇〇「うん、先週からすこしの間はうちで
預かることになったんだー。」
そう、今の我が家には3歳半の姪っ子がいる。
その子は母の妹夫婦から預かっているのだが、その夫婦がウイルス性の病気にかかってしまったのだ。
子どもにもし移ってしまったら大変だという事で一時的にうちで預かっている。
新しい家に来れたのが嬉しいのか、どれだけ遊んでも全く寝ない、、、
上村「、、、3歳。」
すこしの間、何かを考えているような上村さん。
〇〇「どうかした?」
上村「〇〇くんっ!」
突然、上村さんが大きな声で僕の名前を呼んだ。その大きさに周りの同級生が何人かこちらを向く。
上村「姪っ子ちゃんに会わせてください!」
放課後。
普段は1人で歩く帰り道だが、今日は上村さんと一緒だ。それも何だかウキウキしたご様子。
上村「〜♪」
鼻歌まじりに歩く姿は欲しいものを買ってもらった子供のようだ。
すると、前方に僕の家が見えてきた。
〇〇「あっ、そこの白い家が僕の家だよ。」
〇〇宅。
〇〇「ただいまー。」
上村「お邪魔します!」
僕たちが玄関でくつをぬごうとしていると、2階からドタドタと階段を駆け降りる音がする。
ダダダダダッ、、、!!!
??「おかえりー!!」ギュッ
〇〇「うおっ、、、あぶないでしょー。天ちゃん。」
山﨑天ちゃん。
とにかく元気な女の子でどれだけ遊んでも疲れない。
この前、母さんが健康のために食べてるクエン酸をガンガン食べてて結構引いた。
山﨑「あれ?このおねえちゃんは?」
〇〇「あぁ、この人は上村莉奈さんだよ!」
上村「こんにちは!私は〇〇くんのクラス」
山﨑「あっ、かのじょさんだ!」
上村「ええっ///」
〇〇「ちょっと天ちゃん!
上村さんはそんなんじゃないって、、、」
上村「うっ、、、うん、、、///」
山﨑「なんだぁ、、、」
なんだか残念がってる天ちゃんと顔を赤くしてる上村さんを他所目に僕たちはリビングに向かった。
すると早速、、、
山﨑「お兄ちゃん!あそぼ!」
天ちゃんからいつものお誘いが来た。
〇〇「はいはい、、、」
山﨑「あっ!りなお姉ちゃんもあそぼ!」
上村「うん!遊ぼ〜♪」
山﨑「初めはスパマイダーマンごっこね〜♪」
それから約2時間、天ちゃんが満足するまで僕たちは天ちゃんのごっこ遊びに付き合った。
すると珍しく、天ちゃんが眠くなってしまったようだ。
山﨑「おねえちゃん、、、ひざまくらしてぇ、、、」
上村「うん!おいで〜♪」
山﨑「はぁい、、、」
そうして天ちゃんは上村さんの膝枕で寝息を立て始めた。
、、、、、、少し羨ましいと思ってしまった。
上村「ふんふ〜ん♪」
しっかし、あれだけ遊んだってのに上村さんもまだまだ元気そう。
〇〇「ふぅ、、、ちょっと疲れちゃったね笑。」
上村「たしかにそうだね笑。
でも子どもと遊ぶの大好きだから大丈夫!」
〇〇「あっ、上村さんって子ども好きなんだ?」
上村「うん!YouTubeで赤ちゃんの動画とか
いっぱい見ちゃうんだ〜♪」
天ちゃんの頭を撫でながらそう言う上村さん。
その姿は聖母でもあり、天ちゃんのお母さんのようにも見えた。
山﨑「すぅ、、、すぅ、、、、」
上村さんのは膝枕ですやすやと寝息を立てている天ちゃん。
その姿を見て上村さんが、、、
上村「いいなぁ。」
〇〇「なにが?」
上村「私も赤ちゃん欲しいなって、、、」
〇〇「、、、え?」
上村「、、、あっ///」
自分の言ったことに恥ずかしさを覚えたのか、少しずつ赤面して行く上村さん。
上村「いやっ、、、変な意味とかじゃなくて、、、///」
何とかして取り繕うとしてる上村さんを見て少し可笑しくなってしまう。
〇〇「あははっ!」
上村「うぅ、、、///」
〇〇「やっぱり上村さんは可愛いね笑。」
上村「茶化さないでよ、、、///」
それから数十分、天ちゃんが起きるまで僕と上村さんはいろいろ話した。
お互いの趣味だったり、上村さんおすすめのユーチューバーとかだったり、僕がこれまでに撮った天ちゃんの写真を見せたり、、、
とにかく聖母とこんなに話せるなんて夢の様だった。
山﨑「んんっ、、、ふわぁ、、、」
〇〇「あっ、天ちゃん起きた?」
上村「うん!おはよ!」
山﨑「おはよぉ、、、」
目を擦りながら起き上がる天ちゃん。
上村「あぁ、、、天ちゃんかわいい、、、💕」
そんな天ちゃんの様子を見て悶絶しながら、スマホで写真を撮る上村さん。
山﨑「あっ、おにいちゃん!」
〇〇「ん?どうかした?」
山﨑「アイスたべたい!」
〇〇「冷蔵庫に入ってないっけ?」
山﨑「きのうたべちゃった!」
〇〇「あぁ、、、じゃあ買いに行こっか。」
山﨑「おねえちゃんもいこ!!」
上村「うん!」
コンビニへの道。
山﨑「ふんふ〜ん♪」
僕と上村さんの手を握りながら歩く天ちゃん。
何だかいつもより上機嫌だ。
〇〇「なんだかご機嫌だね?」
山﨑「おねえちゃんがいるから!」
上村「私?」
山﨑「なんだかパパとママみたい!」
〇〇、上村「「なっ、、、///」」
天ちゃんの純粋な一言に少しドキッとしてしまう。
確かに3人並んで手を繋いでいる姿は一つの家族の様だ。
上村「まっ、、、ママかぁ、、、///」
〇〇「上村さん?」
上村「えへへ、、、///」
なんだか上村さんの意識が何処かに行ってしまったようだ、、、
山﨑「お姉ちゃんのお顔まっかだ!」
それから僕と上村さんは学校でも話す様になり、天ちゃんが遊びに来てる日なんかは僕の家に来て一緒に遊んだり。
僕とクラスの聖母が急に仲良くなったからみんなに怪しまれたけど。
そんなある日、、、
〇〇「あっ、上村さん!
今日は天ちゃんが遊びに来てるけど来る?」
上村「あー、、、天ちゃんにも会いたいけど、、、」
〇〇「??」
上村「今日は〇〇くんと2人きりがいいな、、、///」
それからまた数年後、、、
〇〇「莉奈、荷物持つよ!」
上村「うん!ありがとう!」
数年前までは"上村さん"だった呼び名もいつしか"莉奈"に。
そんな莉奈の体にも新しい命が宿っている。
今は妊娠が発覚してから7ヶ月ほど、不器用ながらも莉奈を支えられる様に奮闘している日々だ。
上村「早く会いたいなぁ💕」
〇〇「だね!」
大事そうにお腹をさする莉奈を見てると、莉奈と僕の子どもへの愛おしさが溢れてくる。
〇〇「、、、絶対に幸せにするから。」
僕は莉奈の背中に手を回してそう言う。
莉奈も抱きしめ返してまた言う。
上村「、、、愛してる💕」