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宇宙へ 株式投資【三菱重工】028 三菱重工技報より⑨ 基幹ロケットH3の開発状況と今後の展望

 著名投資家であるウォーレンバフェット氏の教え「その会社の社長になりたいと思えるような企業に投資せよ」・・・これに従い私も社長になりたいような会社を探しています。

 私は小学生の頃からの憧れ・・・「宇宙」に関連した日本の株式会社「三菱重工」を会社四季報の中から見つけ出しました。この会社の社長になりたいくらい「三菱重工」という会社が大好きです。
 
 もっと詳しくなりたいので、いろいろと調べ物をすることにしました。 今回のシリーズは次のような資料に基づいて情報収集を行っています。

・会社四季報(東洋経済)   
・公式ホームページ(三菱重工)
・有価証券報告書(三菱重工) 
・中期経営計画書(三菱重工)
・日本経済新聞 

ちなみに猫の写真は内容と無関係です。私が猫好きなので選びました。

 三菱重工の公式HP内に「三菱重工技報」の記載があるのを見つけました。ここには製品・技術に関するレポートがあります。そのうち「航空宇宙特集」というテーマが6件ありましたので、少しづつアップしてみたいと思います。

(028)三菱重工技報より⑨ 基幹ロケットH3の開発状況と今後の展望

Vol. 58 No. 4 (2021)   航空宇宙特集
基幹ロケットH3の開発状況と今後の展望

※ ほぼ原文通りで以下に記載しました。2021年現在の情報です。

はじめに
 H3ロケットはH-IIA/H-IIBに替わる我が国の基幹ロケットとして,2014年に開発が開始された。 三菱重工は,プライムコントラクタとして機体開発を取まとめるとともに,JAXAとともにエンジンシステムの開発を進めている。

 H3 ロケットでは“自律性”と“国際競争力”確保を主要な目的としている。商業衛星を受注するこ とで一定機数の売上げを確保し,産業基盤の維持・強化を図る狙いである。

 このため, H-IIA/H-IIB の強みである“高い信頼性”に加え,顧客からのヒアリング結果も踏まえ,①競争 力のある打上能力と価格,②射場運用性の改善と希望打上時期への対応,③振動の少ない乗り 心地の良い機体,の3点を開発仕様に反映した(1)。 開発は現在,検証試験フェーズの最終段階であり,2021 年度初号機打上を目指し,システム 試験及び LE-9 燃焼試験を進めている。

H3 ロケット概要
(1) 機体システム
 H3ロケットは静止軌道(静止化増速量ΔV=1500m/sec の条件)に対し約 2~7ton の打上能力を有する。幅広い打上能力要求にシームレスに対応す るため,固体ロケットブースタ本数と,1段主エンジンの機数を選択できる仕様とした。

 機体形態 は H3-abc で表し,a:1段主エンジン機数(2/3),b:固体ロケットブースタ本数(0/2/4),c:フェ アリングサイズ(W:Wide/L:Long/S:Short)を示す。WはLと同等の全長約 16.4m で,直径を 5.2m から 5.4m に拡大し,大型ペイロードの搭載性を高めたものである。機体最小形態は H3-30S で,主に官需ミッションに適用,商業ミッションには H3-22L/H3-24L/H3-24W の適用を想定している。

 衛星搭載構造としては,標準的なクランプバンド径(937/1194/1666mm)を有する衛星分離 部を準備する。近年拡大しつつある小型衛星多数基打上にも,専用搭載構造を準備し柔軟に 対応する計画である。

(2) 機体サブシステム
 機体サブシステムでは,H-IIA/H-IIB の技術を踏襲しつつ,競争力のある価格実現のための 変更・新規技術取り込みとのバランスに配慮した。

 システム・サブシステム共通の考え方として, 簡素化・共通化・汎用化を考慮するとともに組立て・加工・点検の自動化を取り入れている。

 主要なサブシステムとして,液体ロケットエンジンには,我が国独自の技術で H-IIA/H-IIB の 2段エンジンで実績のある“エキスパンダーブリード”方式を1段・2段とも採用した。

 本方式はエ ンジン構造がシンプルでかつ低コスト,制御も容易で信頼性も高い。製造に関しては,噴射器 を始め複雑な構成品に3D造形技術を適用し,低コスト化や製造期間の短縮を図っている。

 固体ロケットブースタについては,H-IIA/H-IIB/イプシロンで実績のある技術・仕様を活用 し,信頼性と低コストを両立させた。

 モータケースサイズや材料,ノズル等は実績のある仕様を 踏襲する一方,機能の削減(固定ノズル),結合部構造簡素化等により低コスト化を図った。

 機体の構造系・推進系については,既存仕様をベースにしつつ,形状簡素化,特殊材料削 減,工程自動化等により低コスト化を実現した。

 深絞り一体成型ドームによる推進薬タンクの構 成部品点数削減,主構造体組立てへの自動穴明け・打鋲機適用,アビオ機器への民生部品 最大適用(航空機用・自動車用部品)等がその例である。

H3 開発進捗状況
LE-9 エンジン開発
(1) 開発進捗状況
 H3 開発は現在検証試験フェーズの最終段階で,2021 年 度の初号機(TF1)打上を目指し進めている。

 当初は 2020 年度初号機打上予定であったが, 2020 年5月 LE-9 エンジン認定試験(QT:Qualification Test)で課題が判明し,これに対応する ため打上時期を 2020 年度から 2021 年度に見直している。

 LE-9 エンジンは 2020 年2月より,フライトと同一形態のエンジンで QT 燃焼試験を開始した。

 2020 年5月 26 日に実施した8回目の燃焼試験後の点検で,燃焼室内壁面の開口と,液体水 素ターボポンプ(FTP:Fuel Turbine Pump)動翼のクラックを確認した。

 これらの課題は,いずれ も8回目燃焼試験後に判明した。

(2) 課題と対策~燃焼室開口~
 燃焼室を冷却する液体水素の流路(冷却溝)に沿い最大 幅 0.5mm×長さ 10mm 程度の開口が 14 か所確認された。

 当該試験は,燃焼室への熱負荷が 最も厳しくなる作動条件で実施しており,原因究明の結果,定常時の局所的熱流入により内壁 が高温化・変形し,表層部が溶損・減肉した結果,開口したと評価した。

 対策として,燃焼室内壁面の温度が許容値を超えないよう,エンジンの作動条件を設定する。

 温度許容値を設定するため,内壁面に温度センサを取り付けた燃焼試験を実施し,開口に 繋がる内壁面変形と壁温との相関データを取得するとともに,壁温の解析予測の妥当性を検 証した。

(3) 課題と対策~FTP 動翼クラック~
 2段動翼では 76 枚中2枚に疲労破面を確認し た。

 原因究明として,実体破面の詳細調査,特に破壊起点と振動モード上の高応力部位との 相関,ビーチマークやストライエーションの特徴とQT試験中の負荷履歴との相関を整理し関与した振動モードを特定した。

 当該モードでの発生応力は,詳細解析に加えターボポンプ単体の 翼振動試験により検証した。

 本試験では,ターボポンプ単体を実作動させ,タービン動翼上の 振動応答(歪)を直接計測して評価した。

 これら原因究明の結果,当初有意な影響があると評 価していた固有振動モード以外の共振により,疲労が蓄積・進行したと整理した。

 対策として,全ての固有振動モードをターボポンプ運転領域から除外するよう,タービン翼設 計(翼枚数及び翼形状)を変更した。

 また,今回課題が判明したのは FTP であるが,液体酸素 ターボポンプ(OTP)についても,極力同様の方針とし設計変更した。

システム・サブシステム開発
(1) サブシステム試験
 サブシステム開発は LE-9 認定試験を除きほぼ完了している。

 残る LE-9 については,設計変更・対策を反映したエンジンで,2021 年 10 月以降 QT 燃 焼試験を行う。

 QT 燃焼試験の前半では,FTP/OTP 振動計測用装置を取付け,タービン動翼 上で歪応答を計測し対策の妥当性を検証する計画である。

 構造サ ブシステムは,各構造体の強度剛性試験を完了している。

 ペイロードフェアリングは,強度剛性 試験に加え,地上1G/大気圧環境下での分離試験を行い,分離時挙動が設計意図通りである ことを確認した。

 推進サブシステムは,1段は厚肉タンクステージ燃焼試験,2 段は実機型タンクステージ燃焼試験を実施。

 推進系・エンジンに 構造系・電気系を加えた1段ステージ,2段ステージとしての検証を完了した。

 1段 BFT では,エンジン2基/3基の2形態に対し合計8回/累積約 250 秒の試験を,2段 CFT では実機 形態の2段機体を用いて合計3回/累積約 1500 秒の試験を実施し,エンジン着火・停止特性, 推進薬供給,タンク圧制御,エンジン操舵制御,機体機器振動・熱環境の検証を行った。

 電気サブシステムでは,アビオ機器単体の開発試験に加え,アビオ機器全体をネットワーク で結合した形態で,機体全体の機能性能の検証を行う電気系サブシステム試験を完了してい る。

 尚,一部アビオ機器については,開発後半フェーズに判明した課題を反映し,機器 改修後に追加検証を実施した。(2) システム試験 試験機1号機1段/2段機体は 2021 年1月に当社飛島工場を出 荷,種子島宇宙センターで機体全体を組立て,全機システムとしての試験や地上設備と 組み合わせた検証試験を実施してきた。

 2021 年3月には極低温点検(試験)を実施。本試験では,実際の打上と同様に,機体を組立棟から射座に移動し,推進薬充填,機体各部の機能点検,自動カウントダウンシーケ ンスを経て主エンジン着火信号を出すまでの全ての手順を確認した。 

 事前に計画したデータ 取得は完了し,打上に向けた反映事項を抽出することができた。 極低温点検の後には,システム試験として,全機モーダルサーベイ,姿勢制御系試験, EMC 試験,アンビリカルキャリア離脱試験を実施した。 

 姿勢制御系試験では,機体に振動を与 えエンジン操舵信号出力を計測し,入力から出力までの姿勢制御系全体の特性が設計意 図通りであることを確認した。また,EMC 試験の一環で,270V 実電池を用いて電池起動から1 段エンジン操舵の正常作動を確認した。

 H3 では1段エンジン・アクチュエータを油圧から電動 に変更しており,大電力を用いた制御システムの成立性は重要確認事項の一つであった。

 今後全機システムとしては,LE-9 認定試験の完了後,射点起立状態で1段 CFT 試験を行 う。

 本試験は,1段ステージの検証に留まらず,地上システムを組み合わせた全機システムとし ての,フライト前の最終検証である。

今後の展望
 H3 ロケットは 2022 年度までに試験機2機(TF1,TF2)を打上げ,その後商業市場に参入する 計画である。

顧客からは既に多数の照会を頂いており注目度は高い。一方で商業市場は,H3 ロケット開発当初と比べ,スペースXによる価格破壊が進み競争が激化している。欧州 Ariane Space の Ariane6,米国 Blue Origin の New Glenn や米国 ULA の Vulcan 等,他国新型ロケットも 同時期に市場投入される見込みで,一層の低価格競争が予想される。

 また需要も,コンステレー ションミッション等小型衛星多数機打上や深宇宙ミッション(月・火星)など多様化してきており,打 上価格の更なる低下やロケットの大型化により更に変化していくと予想される。

 これら環境の変化に対応し,国の基幹ロケットとしての基盤を維持するためには,H3ロケットも継続的に進化発展させていく必要がある。

 米国が計画する有人 月面探査計画(アルテミス計画)への国際貢献として,H3 を用いて月周回有人拠点(Gateway)に 物資を輸送することを想定した案である。

 1段機体をクラスタ化することで,大幅な打上能力向上 を図る構想である。

 また,抜本的な打上コスト低減のためには,スペースX社が既に実用化し,各国打上ロケットでも 取り組んでいる機体の“部分的あるいは完全再使用化”が必須と考えられる。

 基幹ロケットの将来構 想や革新的将来輸送システムの実現に向けたロードマップについては,文部科学省宇宙開発利 用部会に設置された小委員会で検討が進められ,2021年6月には中間取りまとめ(3)が報告された。

 その中では最初のステップとして1段機体の再使用を実現すべく,2026 年頃にサブスケール実証 機を,2030 年頃に実運用機を打上げるとしている。

 次のステップとして,2段機体も含めた完全再 使用化を進め,2040 年前半には打上コストを H3 の 1/10 程度とすることを目指すとしている。

 三菱重工としても,H3 の短中期的な継続的改良と並行して,革新的な将来輸送システムを実現す べく,JAXA や関連省庁と連携して技術開発に取り組んでいく。

まとめ
 H3 ロケットは 2014 年4月に概念設計を開始し,現在,試験検証フェーズの最終段階である。
 
 LE-9 エンジン以外のサブシステム開発は完了,試験機1号機も既に種子島宇宙センターに出荷 され,打上に向け準備中である。種子島宇宙センターでは,1号機機体を用いて極低温点検他, システム試験を行い,全機システムや地上設備と組み合わせた検証を進めてきた。

 LE-9 エンジンは QT 燃焼試験で課題が判明したが,設計変更を行い,対策後のエンジンで再 QT 試験の準備を進めている。

 今後,LE-9QT 試験,射場での1段 CFT を完了した後,1号機打 上に臨む計画である。残る開発試験と試験機打上げ(1号機/2号機)を確実に行い,信頼性のあ る機体を完成させ,早期に商業市場に参入できるよう,社内外関係者と協力して進める。

 H3 ロケット開発当初と比べ,商業市場は価格競争激化やミッションの多様化が進み,急激に変 化してきている。

 こうした市場環境の変化に対応するためには,H3 ロケットの継続的な進化・発展 が必須である。特に低コスト化の鍵を握るのは機体の再使用化であり,JAXAや関連省庁と連携し て,実現に向けた技術開発に取り組んでいく。


 H3ロケットには期待できますね。イーロンマスクさん会社(スペースX)に対抗できるものと思われます。

 先日、イプシロンSのエンジン燃焼試験で爆発が発生したという事をニュースで知りました。IHI傘下のIHIエアロスペースという会社が担当しているプロジェクトです。

 IHIは宇宙関連分野での三菱重工のライバル企業として認識しております。株式投資の観点から今後比較検討していく予定があります。

 ロケットが絡むと、爆発等の事故は大規模になりますね。人命が危ぶまれるだけでなく、予算的にも非常にダメージが大きいと思います。

 やはり宇宙関連専業の小さい会社より複合的な業務分野を持つ大企業の方が安全ではないでしょうか。

 ここで小さい会社というのは、ispace Rudge-i QPS研究所 アストロスケールなどのことを想定しています。私は、これらの企業にも大変興味を持っていますので、今後調べてみたいと考えています。

 実験失敗やミッション失敗のリスクを考えながら投資するかどうかの検討をする予定です。

 ロケット部分を担当せず、人工衛星や測定分析に特化していればそれほどのリスクは負わないのかもしれません。


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