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あきらめることも大切
「希望を持ち続けろ!」
「あきらめたら終わりだ!」とは言うけれど、
今回はあきらめることだって大切じゃない?という話です。
あきらめない美学
初めは弱かったチームや主人公が、
あきめずに努力して努力して努力して、
ライバルを倒すというのはもっとも好かれるストーリーでしょう。
かくいう私も、
コツコツと取り組んで成長していくという価値観が強く、
この手のストーリーは大好物です。
実際に2015年のラグビー日本代表が南アフリカに勝った試合や、
2023年のWBC(ワールドベースボールクラシック)で、
日本代表が世界一になったシーンで泣きしました。
(´;ω;`)ウッ…
(#最近涙したことは何ですか?)
ただ、
2015年のラグビー日本代表のエディージョーンズ監督は、
世界一のハードな練習を課して強くしたことで有名でしたが、
「ハードワークを求めるけれども、無駄な努力はするな」
とも言っています。
勝ちにつながる努力をするべきだと。
でも、❝失敗の本質(#マジで名著です)❞を読んでいると、
練磨して技術を磨いていくことは日本人のど真ん中の価値観で、
日本人は無駄な努力まで美学として考えがち。
実際に、第2次世界大戦では、
戦い方のルールそのものを変えて戦略的に挑んできたアメリカに対して、
「練磨すれば何とかなる!」という戦術的な価値観に頼って戦ったことが、敗因の大きな要因であることが本にはつづられています。
さらに、❝練磨の意識❞とあわせて、
日本人の強い価値観として挙げられるのが平等意識。
島国で農耕民族の日本において、
ムラ社会が強く形成されることで、
出る杭は打たれやすくなり、
世間体に縛られやすくなります。
したがって、
会議などの場では空気を読んで軋轢を生むことを避ける傾向があり、
たいていは❝大勢の意見❞が正解になります。
組織においても
能力で差をつけたり優劣をつける評価は極力避けられがち。
(#もちろん平等意識があるからこそいい面もたくさんあります!)
今の少子高齢化のこの時代、
できることは限られてくるし、
あきらめなきゃいけないことも出てくるはずですが、
今されている議論や政策は、
練磨や平等意識で何とかしようとしているにすぎないように感じます。
(#出産数を上げる?#地方創成?)
盲導犬の育成
盲導犬の育成についても、
この❝練磨の意識❞や❝平等意識❞に
引っ張られる傾向があるなぁと感じます…。
毎年、盲導犬候補として約50頭委託していきますが、
訓練に入るのはそのうち15頭前後。
7割ほどが訓練をする前に盲導犬としては難しいと判断しています。
1年間育てて下さったパピーウォーカーの皆様からすると、
「まずは訓練してみてから判断してほしい…」
というお声をいただくのは当然として、
組織内部でも(経営としても)、
「訓練をすれば何とかなるんじゃないか(練磨の意識)」
「訓練士の技術を上げれば盲導犬になる数も増えるのではないか(練磨の意識)」
「パピーウォーカーの心情を考えて全頭訓練をするべきでは(平等意識)」という意識に引っ張られます。
しかし、これまで24年にわたって犬をみてきて思いますが、
盲導犬になるかどうかは、
育てる環境や訓練の技術(練磨の意識)ではどうにもならない、
生まれながらにして持っている向き不向きが絶対にあります。
人間も生まれつきの性向はあってその本質はそうそう変えられません。
(#私はバリバリの内向性です)
ましてや、
人間以上に圧倒的なスピードで大人になっていく犬は、
成長過程の学習による影響よりも、
生まれ持った性向が強く影響します。
したがって、
「思考は現実化する」みたいな話が入り込む余地は意外と小さくて、
「努力ではどうにもできない部分はある」ということも
冷静に判断しなければなりません。
バランス感覚をもつ
盲導犬に向いていない子を無理に訓練する方が、
犬にとっても人にとってもお互いにストレスになりますし、
「早くにあきらめて(判断してあげて)、
特徴にあった生活を作ってあげた方が幸せである」
という考え方もあると思うのです。
もちろん、訓練に入る犬が増えるように努力すること、
より質の高い訓練を追及していくことが大切なのは言うまでもありません。(#やっぱり練磨は大事!)
可能性が高い犬に対してしっかりと練磨していくが正解なのですが、
大切なのはそのバランス感覚。
自分がどちらの価値観が強くて引っ張られやすいのか、
または、組織はどちらの価値観に偏っているのかを
常に客観的な視点で見ていく必要があります。
私の尊敬する人の一人が、
先日日米両方の野球殿堂入りを果たしたイチローさん。
つまり、練磨して高みを目指すことが大好きな私ですので、
自分でバランスを保つためにも、
あえて今回は「あきらめるのだって大切」という視点で進めてみました。
最後までお読みいただきありがとうございます。